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皇室の方々がSNSで発信する時代は来るのか 宮内庁広報室の対応どうなる

つげのり子放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)
天皇皇后両陛下はじめ皇室の方々(写真:ロイター/アフロ)

令和5年が動き出した。新型コロナ対策を行いながら、今年は天皇皇后両陛下はじめ皇室の方々が国民の前にお出ましになる機会が増えると見られている。

そうなれば、地方訪問の折に人びとと触れ合われることも可能になる。駅前で車への乗り降りの時や施設へのご訪問の際に歓迎の声をかければ、両陛下はきっと気さくに応じてくださるだろう。それは短い一瞬の出来事かもしれないが、両陛下のお人柄に触れることで、皇室への理解と親しみが大きくなるのは言うまでもない。

実際にお会いした人びとだけでなく、その感激をもっと多くの国民と共有できないものなのだろうか?

そんな要望に応えるかのように、宮内庁は4月から新たに「広報室」を設けて正しい情報を発信していくという。その目玉として検討されているのが、SNSの活用だ。

◆皇室のSNS 、その中身とは?

イギリスやスペイン、オランダ、デンマークなどヨーロッパの王室では、早くからSNSに取り組んでおり、世界的にみれば決して珍しいものではない。

昨年亡くなったエリザベス女王は、92歳の時に英王室公式アカウントにコメントを寄せ、インスタデビューを果たしている。

庶民とは別格の地位にある一国の女王が、博物館で観た科学者の古い手紙について、SNSを通じて、ごく個人的な心の機微を発信していたのだが、これが英国民に絶賛された。

いよいよ日本にも皇室の方々がSNSで発信する時代がやってくると期待は高まるが、「広報室」の詳細はまだ発表されてはいない。これからSNSはどのような流れで進んでいくのだろうか?

宮内庁に20年以上勤務し、報道室でマスコミ対応を行っていた、皇室解説者の山下晋司氏に聞いた。

「時代の趨勢から宮内庁もSNSはやらざるを得ないでしょう。中身については、まずは宮内庁ホームページへの誘導から始めるのではないかと思われます」

SNSを通じて公式の情報が発信されれば、もっと多くの人たちが皇室に親しみを感じることができるに違いない。

また、皇室の方々が地方公務に赴かれる際、宮内庁は独自の映像を撮影するため、カメラマンを同行することがあるが、その際にオフショットも撮影してSNSで配信してはどうだろうか。

皇室の方が召し上がった食事や、訪れた施設でリラックスされた瞬間などを捉えた、メディアで公開していない映像をふんだんに用いて公開すれば、これまで見たことのない素顔に触れることができ、国民の関心を集めるはずだ。百聞は一見に如かずである。

◆誹謗中傷、バッシング記事への対応は?

しかし、デメリットもある。SNSで発信した内容について、不特定多数の人が意見を書き込み、その中には批判的な、いわゆる誹謗中傷も想定されることだ。

英王室のチャールズ国王がまだ皇太子だった時、カミラ夫人と共同のSNSアカウントを持ち、公の動きに関してわりと頻繁に情報発信を行っていた。しかし、故ダイアナ妃を熱狂的に支持する人びとを中心に、アンチ・コメントが殺到し炎上する事態を招いた。

そのためコメントを制限せざるを得ず、夫妻にフォローされていないアカウントからは感想や意見などを投稿できないようになったが、それでも批判的な意見の根絶には至っていない。

現在、英王室の公式インスタグラムのフォロワーは1300万人を越えている。フォロワー数の多さは、英王室という権威への評価ともとらえられるが、一方で炎上の危機をいつでも孕んでいる状態とも言えるのだ。

それでもSNSを続けるのは、批判があったとしても、それもひとつの意見であり、そのことに怯えるよりも、堂々と王室の今を英国民と世界に伝えようとする気概の表れなのだろう。

チャールズ国王とカミラ王妃(写真:代表撮影ロイター/アフロ)
チャールズ国王とカミラ王妃(写真:代表撮影ロイター/アフロ)

宮内庁に新設する「広報室」では、皇室に対するバッシング記事などにも対応していくと見られているが、どのようにして行っていくのだろうか?

山下氏は——

「広報ということであれば、出てきたものに対応するという、いわばモグラ叩きのような姿勢から脱却すべきです。普段から出せる情報を地道に出し続けていくことが重要ではないでしょうか。何をやっても批判する人は必ずいます。しかし、週刊誌情報ではなく、正確な情報を知りたいという人も大勢いるはずです。話題になるかならないかは関係なく、出せる情報はすべて出していくというくらいの姿勢が宮内庁には必要だと思っています」

とするならば、広報室で記者としての役割を担う職員を育成して、皇室の方々に公務や宮中行事などの際に直接インタビューし、(取捨選択はあるだろうが)それを宮内庁発の記事として公開しても良いかもしれない。

SNSを通して、ニュースなどでは分からない、皇室の方々のお人柄に触れることができる情報が発信されてほしいと願うのは、筆者ばかりではないだろう。

放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)

2001年の愛子内親王ご誕生以来、皇室番組に携わり、テレビ東京・BSテレ東で放送中の「皇室の窓」で構成を担当。皇室研究をライフワークとしている。西武文理大学非常勤講師。日本放送作家協会、日本脚本家連盟、日本メディア学会会員。著書に『天皇家250年の血脈』(KADOKAWA)、『素顔の美智子さま』『素顔の雅子さま』『佳子さまの素顔』(河出書房新社)、『女帝のいた時代』(自由国民社)、構成に『天皇陛下のプロポーズ』(小学館、著者・織田和雄)などがある。

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