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大山康晴50回、羽生善治23回、藤井聡太13回(確定19回)継続中 将棋タイトル戦の連続登場記録

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 2024年4月現在、藤井聡太八冠(21歳)は将棋界のタイトルをすべて独占しています。

 藤井八冠は最近、間をはさむことなく、ずっとタイトル戦に出ずっぱりです。そこで本稿では、藤井八冠のタイトル戦の「連続登場記録」についてたどってみたいと思います。(並行して、関連する様々な記録もご紹介したいところですが、ややこしくなるので、ここでは割愛します)

 2020年、当時17歳だった藤井七段は史上最年少で初タイトルの棋聖位を獲得しています。また間をおくことなく、続く王位戦では王位を奪取。すぐに二冠となりました。

 藤井二冠はこの年度、タイトル戦8つのうち、この2つに続けて登場。「連続登場」という点では、早くもこの段階で2回を記録しています。

 翌2021年度には棋聖、王位を防衛し、叡王、竜王、王将を獲得して、一気に五冠となりました。

 2022年の王座戦五番勝負は永瀬拓矢王座に豊島将之九段が挑戦し、永瀬王座が3勝1敗で防衛を果たしました。

 その次の竜王戦七番勝負から藤井五冠はタイトルに出続けます。棋王を取って六冠。名人を取って七冠。そして最後の王座も取って八冠を達成。以後も藤井現八冠が登場しなかったタイトル戦はありません。

 現在おこなわれている叡王戦五番勝負、名人戦七番勝負まで数えて、藤井八冠は13回連続でタイトル戦に登場中です。

 今年度はこのあともずっと防衛戦が続き、棋王戦五番勝負まで出場は決まっています。気が早いですが、そこまでカウントすると、藤井八冠は19回連続でタイトル戦出場が確定しています。これは歴代3位の記録です。

 2位は羽生善治現九段が1994年度から1997年度まで、全七冠達成前後に記録した23回連続です。

 当時にあっては「空前にして、おそらく絶後」と思われた七冠制覇。その過程で達成された連続登場は、いまなお燦然と輝く大記録といえるでしょう。

 もし藤井八冠が今後、4回連続で防衛を続ければ、その羽生現九段の記録に並ぶことが確定します。

 タイトル戦連続登場記録の1位は、大山康晴15世名人の50回です。

 将棋界のあらゆる主要な記録を更新しつつある藤井八冠であっても、さすがにこれは難しいのではないかという大記録はいくつか残されています。大山15世名人の50回連続タイトル戦登場も、その一つでしょう。

 同時代の競争者たちが弱かったわけではありません。さすがの大山15世名人も途中、タイトルを奪われたことはありました。しかし翌期にはすぐに挑戦権争いを勝ち抜いてリターンマッチに挑み続けたところが、またおそろしいところです。

 さすがの藤井八冠も、50回連続は・・・。

 そう言ってるうちに、もしかしたらこの大山15世名人の記録もまた、いずれ観戦者には、強く意識される日が来るのかもしれません。

 ただし、もしまたそのときが来ても、藤井八冠はいまと変わらず、記録は意識していないという旨を述べていることでしょう。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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