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渋谷・ホームレス女性追悼デモ 「家がない人を路上から排除しても安心安全な社会にはならない」

小川たまかライター
12月6日夜、東京・渋谷で行われたホームレス女性追悼デモ

 渋谷区幡ヶ谷のバス停で夜を過ごしていた60代の女性が殺された事件を受け、12月6日夜、「殺害されたホームレス女性を追悼し、暴力と排除に抗議するデモ」が行われた。参加者約170人(主催者発表)がライトやプラカードを手に、渋谷駅前、宮下公園前などを歩いた。

 デモの開始前、参加者によるスピーチが行われた。以下はスピーチより抜粋。

●野宿生活をしている男性

「僕自身も、この近くの公園で野宿をしています。いろいろと考えることはあるんですけれども、バス停のところで過ごされていたということなぜその場所で過ごすことになったのかを考えると、街の中で泊まる場所、寝る場所が奪われてきていると。特に渋谷においては、そういう場所がなくなってきている。代表的なのは宮下公園であるとか。

バス停という場所は彼女にとってはもちろん一つの家であったと思いますけれど、そういうところにバラバラに追いやられていくことが背景にあるのかなと思います。

もう一つは、100パーセントとは言えませんけれども、彼女はおそらくこの辺でやっている炊き出しには顔を出していなかったのでは。炊き出しには女性が来にくい……、男が多いということだけを理由にすることはできないけれども……。つながることができなかった人が孤立して、僕たちから見たら孤立なんですけれどそして殺された。

行かれるとわかると思うんですけれど彼女のいたバス停は他よりも暗くて、おそらく彼女は選んであのバス停にいた。辿り着いた、自分の束の間の安息の場、そこで無惨にも殺された。彼女にとっては彼女の家で殺されたと僕は感じます。そういう事件だと思っています」

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●支援者の男性

「去年と比べると生活が苦しいという相談が増えて、野宿の人からも野宿じゃない人からも相談を受ける。今年に入ってから野宿の人が襲撃を受ける事件が、わかっているだけでも1月の上野、2月の岐阜、そして11月の彼女。

渋谷近辺ですと、去年から今年にかけて亡くなっている(野宿の)人がすごく多いです。数字が多い、それ自体が気になるところではあるんですけれども、数字じゃなくて、一人ひとりが、いろんな経緯があって野宿になったり、野宿をやめたいと思ったり、野宿のままでいいと思ったり、いろんな感情があることを考えなければいけないと思っています。

彼女がどんな人だったんだろうと思いながらデモに参加しようと思っています」

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●支援者の女性

「いつもまさしくこの場所で炊き出しをしています。この場所で2004年から支援活動をしています。たった一人の方のことすら、私たちはできていないということを、このような事件があるたびに毎回思うんです。

私たちのできることが本当に少なくて、打ちのめされると共に、この人のことを思って何も言葉にすることができない。

この女性のことがあって、多くのメディアの方が関心を向けてくださったことは良いと思うんですけれども、一人もこのような形で命を絶つことがない、そういう社会を作りたいと思ってやっている。

せめてこの冬も、路上で生活するみんながちょっとでも元気になってくれたらいいと思って食事を」

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●野宿生活をしていたことがある女性

「ずっと非正規で日雇いで暮らしてきて、今のコロナで仕事も無くなり暮らしているんですけれど、まったく他人事と思えず、自分にも起こるかもしれない。

私は野宿していたこともあるし、野宿者の支援に携わっていたこともあるんですけれど、やっぱりそういうコミュニティも男性中心なんですよね。その中でも嫌な想いをすることがたくさんあって……。

これから先、誰とつながって、どうやって生きていけばいいのかと思って絶望的な気持ちになって引きこもってしまうこともあるんです。こんなこと二度と起こしてはいけないと思い、この場所へ来ています」

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●呼びかけ文を英語訳した支援者の女性

「捕まった犯人の男の言い分を聞いて、この社会で生きているのは本当に怖いと思いました。

ボランティアでゴミ掃除をしていた男が、ホームレスの女性にどけと行って、言うことを聞かなかったから殺した、こんな大ごとになると思っていなかったと言っていて。道で寝ていたからといって、私たちはゴミになるわけじゃないですよね。ゴミじゃないです。

屋根がないところで寝ているからといってゴミみたいに殺してしまうということが、ボランティアの、ある意味、カギカッコ付きの『善良な』人によって行われることが、本当に恐ろしいと思いました。

安心安全な、快適な社会を作ると言いながら、公園のベンチに仕切りを作って、ホームレス、家がない人を公園とか路上とかからどんどん排除していくことでは、社会は安心にも安全にもなりません」

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●障害者介助の仕事をしている女性

「なんでこんなことが起こったのか。生産性のあるものしか生きていけない社会になってきている。社会の中で排除が行われている。そういう背景があるのではないか」

●同じ障害者支援団体の女性

「やっぱりやまゆり園の事件のことを思い出した。普通のちょっと違うかたちでいる人を、いない方がいい、みたいにやるのは良くない」

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 追悼デモでコロナ禍でもあるため、シュプレヒコールなどを上げない「静かなデモ」とすることが呼びかけられた。参加者らのプラカードには「彼女は私だ」「この街に排除も暴力もいらない」「殺すな」などの文字。渋谷の街のネオンや「TOKYO2020」の旗の中でも目立った。

 渋谷の街の通行人はデモを珍しそうに見る人が多かったが、中には「ああ、あの事件の」とうなずく人もいた。

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 デモの呼びかけ団体は、ノラ、アジア女性資料センター、ねる会議、ふぇみん婦人民生クラブ。ほか、野宿者支援など38団体が賛同した。

(記事内の画像はすべて筆者撮影)

ライター

ライター/主に性暴力の取材・執筆をしているフェミニストです/1980年東京都品川区生まれ/Yahoo!ニュース個人10周年オーサースピリット大賞をいただきました⭐︎ 著書『たまたま生まれてフィメール』(平凡社)、『告発と呼ばれるものの周辺で』(亜紀書房)『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を』(タバブックス)/共著『災害と性暴力』(日本看護協会出版会)『わたしは黙らない 性暴力をなくす30の視点』(合同出版)/2024年5月発売の『エトセトラ VOL.11 特集:ジェンダーと刑法のささやかな七年』(エトセトラブックス)で特集編集を務める

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