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【FIBAバスケットWC】ドイツがラトビアに競り勝ち、今大会唯一の無敗国として準決勝進出

青木崇Basketball Writer
2002年以来となる準決勝進出を果たしたドイツ (C)FIBA

 アンゴラを率いたジョセップ・クラロス・カナルスコーチの“この数年で最も成長した国の一つ”という言葉が事実だったことは、1次ラウンドでフランス、2次ラウンドでスペインに競り勝ったことでも明らか。大会前にNBA選手で大黒柱になるはずだったクリスタプス・ポルジンギス、キャプテンのダイリス・ベルタンシュを故障で欠きながらも、弟のダイビス、ロランズ・シュミッツら代表経験の長い選手たちがチームを牽引。ダイビスは準々決勝のドイツ戦でも6本決めるなど、NBAでも恐れられている3Pの決定力を発揮していた。

 しかし、今大会唯一の無敗チームで、スロベニアとの2次ラウンド戦を29点差をつけて大勝しているドイツは、ラトビアが1Qで13対3と飛び出したとしても、決して焦ることがなかった。その要因の一つが、日本との初戦で足首を捻挫して以降欠場していたフランツ・バグナーの戦列復帰。兄のモーリッツとともにベンチから出てくると、持ち味であるオールラウンドなプレーを発揮してチーム最多となる16点を記録する。

日本戦で捻挫した足首のケガから復帰したF.バグナーは、チーム最多の16点で勝利に貢献 (C)FIBA
日本戦で捻挫した足首のケガから復帰したF.バグナーは、チーム最多の16点で勝利に貢献 (C)FIBA

 ドイツのゴードン・ハーバートコーチが「4試合連続でベンチ陣が本当に素晴らしかった」と振り返ったように、モーリッツがスティールから豪快なダンクを叩き込むなど12点、ヨハネス・シーマンも4本のFGと2本のフリースローをすべて成功させて10点とステップアップ。得点源であり、司令塔でもあるデニス・シュルーダーは、26本中4本のFG成功と酷いシーティングスランプの日になっていたが、それをカバーするに十分な活躍だった。

 2Q序盤で同点に追いついたドイツは、土壇場まで一進一退の攻防となった一戦を81対79でモノにし、ダーク・ノビツキーがチームを牽引して3位となった2002年以来の準決勝進出。「ワールドカップの準決勝に進出したことは、ドイツのバスケットボール界にとって大きな意味がある。(今のチームは)昨年はユーロバスケット、今年はワールドカップでいい結果を残すことができている」とシーマンは語ったが、準決勝の相手はアメリカ。8月にアラブ首長国連邦のアブダビで対戦した時、ドイツは3Q途中で16点のリードを奪いながらも、4Qで逆転されて敗れている。

 しかし、今のドイツはシュルーダーの不調をカバーできるだけのチーム力がある。「間違いなく這い上がってくる」と話したように、ハーバートコーチはシュルーダーがアメリカ戦で本来の力を発揮すると信じて疑わない。フランツ・バグナーの復帰が大きなプラス材料となって打倒アメリカを実現した場合、ドイツは2002年の3位を上回るワールドカップ史上最高成績が確定する。

カナダが退場者2人と大荒れの1戦を制して準決勝進出

アグレッシブなドライブでスロベニアにダメージを与えたギルジャス・アレクサンダー (C)FIBA
アグレッシブなドライブでスロベニアにダメージを与えたギルジャス・アレクサンダー (C)FIBA

 カナダ対スロベニア戦の前半は、50対50とお互いの持ち味を発揮する好ゲームだった。しかし、レフェリーのコールに対してスロベニアがフラストレーションを溜め始め、3Qだけで10本のフリースローを与えてしまう。と同時に、オフェンスもリズムを失い、カナダに19−3のランを許したところで69対55までリードを広げられた。

 スロベニアはルカ・ドンチッチを起点になんとか追撃を図ろうとしたが、4Q6分37秒に2つ目のテクニカルファウルをコールされて退場。マッチアップしていたカナダのディロン・ブルックスも1Qでのアンスポーツマンライクファウルに続き、ドンチッチが2つ目を取られる少し前にテクニカルファウルを取られて退場となるなど、レフェリーが試合をコントロールするのに苦労していた。

 フラストレーションを感じながらも、カナダのほうが冷静さを保てたのは事実。アグレッシブにゴールにアタックし続けたシェイ・ギルジャス=アレクサンダーは、16本中14本のフリースローを決めるなど31点、10リバウンドとチームを牽引。R.J.バレットも24点を記録し、チームの勝利に大きく貢献した。ドンチッチの4本を筆頭に15本の3Pショットをスロベニアに決められながらも、カナダは100対89のスコアで準決勝進出を果たした。

★試合後のコメント

「まずはカナダの勝利を祝福したい。素晴らしいプレーをしていたし、フィジカルだった。彼らには世界最高レベルの選手(ギルジャス・アレクサンダー)がいて、ディフェンスするのが非常に難しかった。みんなが100%出し切ったから、チームの頑張りを誇りに思う。自分のフラストレーションに関してはみんなわかっているはずだ。代表でプレーすることはすごく感情が高ぶるし、(レフェリーの笛がもらえないことに対するフラストレーションで)自分をコントロールできない時間も多くなってしまった」(ルカ・ドンチッチ)

「気分はいい。チームが一体となってプレーして得た結果だと思う。今夜は勝利の喜びを味わうけど、明日になれば映像を見て、次の試合に勝つための準備として練習するということだ」(R.J.バレット)

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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