加計学園問題の原点:安倍首相の3月13日の参院予算委での答弁を分析する
今国会で、加計学園が今治市に獣医学部を新設する件についの最初の質問は3月13日の参院予算委員会での福島みずほ議員のものと思われ、安倍首相が直接答弁に立っていますが、現在まで、議事録が公開されていません。そこで該当部分を文字起こしして、分析しました。以下、パートごとに区切って文字起こしした後、筆者の考えを記します。なお、該当部分は、参議院インターネット中継のホームページの3月13日予算委員会の動画のうち、6:35:24~で確認することができます。文中※印の部分は後でコメントします。
質問1
福島:次にですね、加計学園についてお聞きを致します。えー、加計学園理事長加計孝太郎さんが今治市で岡山理科大学獣医学部を作りたいと思っているのを知っていましたか。
安倍:お答えする前にですね、えー、私や家内(※1)がバックにいれば、役所が何でも言うことを聞くんだったらですね、福島先生ね、長門市とね、私の地元、予算全部通ってますよ。<笑い声あり>誰が考えたってね、私の地元でしょ、そこから要望する予算が全部通ってますか。通ってませんよ。様々な要望をしているけど、全部通ってませんよ。通ってるのもあれば、通ってないのもありますよ。そんな簡単なものではない、そういうのをいわば、い、印象操作というんですよ。そんな、そんなですね、いわば、安倍政権のみならず、政府、あるいは行政の判断を侮辱するような判断は、あ、侮辱するような言辞はですね、止めて頂きたいと思いますよ。(※2)しっかりとですね、皆さん真面目に業務にですね、えーこの、精励している訳でありまして、それがですね、それがあー、まるで私の名前がついていれば全部ですね、物事が進んでいくがごとくのですね、えー、この、えー、誹謗中傷は止めて頂きたい、とこう思う次第でございます。えー、それと、今ですね、加計学園について、えー、その、おー、いわば、えー、私が、この、おー、えー、獣医学部をですね、獣医学部を、おー、えー、最終的に、えー、知っていましたか、というのは、最終的にですね、これは、あー、今治とこれは広島でしたっけ、の、特区がですね、えー、え、決定された中によって、えー、この加計学園が、この、おー、獣医学部をですね、開設をするということが決定したことは、もちろん私は承知しております。政府の決定でございますから。(※3)
質問2
福島:全く答えてないじゃないですか。加計学園の理事長と、理事長が、ここで獣医学部を作りたいと思っているかどうかを、あなたが知っていたかどうか、総理が知っていたかどうかを聞いた訳です。2016年、7回、ゴルフや食事をしています。その前、2014年6月から2016年12月まで2年半の中で13回食事などをしています。永年の友人じゃないですか。極めて永年の友人です。だからお聞きをしてるんです。政策が歪められてるんじゃないかっていう質問です。えー、平成28年、2016年11月9日、獣医学部の新設を国家戦略特区が決めます。そこで、このため、かねてより準備を進め具体的提案を行ってきた自治体を中心に、具体的プロジェクトとして、実際の獣医学部の立ち上げを急ぐ必要があり、そのための規制改革、すなわち関係告示の改正を直ちに行うべきであるという、えー、国家戦略特区の決定です。で、この具体的提案を行ってきた自治体っていうのは今治市ってことでよろしいですか。
安倍:これ、担当大臣を呼んで頂けますか。あの-、山本さんがですね、担当大臣なんですよ。で、山本さんを呼んで頂かなければ、私、それ、お答えのしようがありませんよ。詳しく、私、存じ上げませんから。これ、所管外ですから私、お答えできませんよ。
質問3
福島:はい、でも加計学園の理事長と非常に懇意にしていて、11月9日の日に今治市なんですよ。そしてですね、てか獣医学科を決める、そして構造改革特区に、ずっと、愛媛県と今治市は獣医学部の選定、やってくれってことを言っています。だから2010年、日本の獣医学会は、これに反対の声明を出しています。それはこういう中身です。日本獣医師会。2010年8月5日付け声明。えー、特区提案による大学獣医学部の新設について批判をしています。高度専門職、えー、高度専門職、ぎょ、養成の責を担う獣医学教育課程が、特区に名を借りた地域興しや特定の一法人による大学ビジネス拡大の手段と化すことが無いように、事があってはならない、ていうふうに言ってるんですね。そして、ここの中身は、もう今治市、えー、加計学園、というふうに名前がもうすでに出続けているんですよ。総理、何故急転直下、国家戦略特区によって、獣医学部新設、そして、この大臣告示を規制緩和する、まさにそこで発言をされているからこそ、聞いてるんです。特区の理事長じゃないか・・議長じゃないですか。はい。
安倍:<原稿を答弁席に放り出す>福島さんね・・、特定の人物の名前を出して、あるいは、学校の名前を出している以上ですね、何か、政治によって歪められた確証がなければですね、その人物に対して極めて、私は、失礼ですよ。そしてこの学校でですね、学校で学んでいる子どもたちも傷つけることになるんですよ。まるで私が友人であるからですね、何か、えー、この、特区あるいは様々な手続についてですね、何か政治的な力を加えたかのごとく、の今、質問の仕方ですよね。それあなた責任取れるんですか。これ全く関係なかったら。(※4)まず申し上げましょう。今、恐らく週刊誌を元に言ってるかもしれませんからね、えー、言ってますけれども、例えばですね、これが、今治市が、ただで提供されたていうことについて、これおかしいだろう、という週刊誌でありますが、二十年の間にですね、二五例あるんですよ。二十年の間に二五例あってですね、で、これは、ただでいわば土地が譲渡された例ですね。で、土地がただでですね、いわば、貸与された例、これは以外にもっとあるんですよ。つまり、なかなかですね、遊休地があって、地方自治体が困っているときはですね、一番良いのはですね、学校法人がくることなんですよ。これは若い人たちも来ますし、研究者も来るし、街が形成されるんですよね。でもね、なかなかこれね、そう簡単に来ませんよ。で、ただで提供すると言ったって、中々来ないんですから。今、子どもの数が減ってますから、ただで提供すると言っても中々ずっと・・、学校法人は来ないのは事実であります。で、さらにですね、これ今治市が、今治市がですね、決めたことでしょ。これ、市ですから。国有地ですらない訳でありますから。私が影響、影響のしようがないじゃありませんか。それとですね、いまそこまでですね、あなたがですね、疑惑があるかのごとく、私人に対して、えー、質問をしている訳であります。名前を出してるじゃありませんか。名前を出している。しかも学園の名前も出してますよね。これ、生徒の募集等々にもですね、大きな影響を与えますよ。これ、あなた、責任取れるんですか。・・私はそれを問いたい。もうね、いまNHKで放送されて、ぜ、全国放送で、されてるんですよ、これ私、おどろ、驚くべきこと、であります。<原稿目を落とす>で、申し上げますとですね、今治市はですね、今治市はですね、獣医学部設置のみならず、これ、しまなみ海道のサイクリングブームを後押しする構造改革人材の積極的受入や、活力ある地域作りのための道の駅の民間参入など、大胆な規制緩和を提案し、特区ワーキンググループなどの有識者委員より極めて高い評価を得た訳であります。ま、最終的にはですね、平成27年12月に特区担当大臣から特区諮問会議に諮り、指定を決定した訳でございます。この指定決定する、いわば大臣が、委員会に諮問をした訳でありまして、そこで、しっかりと議論をしてるんですよ。その際、有識者より、しまなみ海道で、え、繋がる広島と連携して指定することにより、一層の効果が期待できるとの意見があり、これを踏まえて、広島県と今治市を一体の特区としました。具体的には、国際的なサイクリング大会が開催されるなど、外国人観光客の多いしまなみ海道における観光サービスの担い手として、外国人の受入を促進するための、特例措置の活用などが共同で、え、計画されている訳であります。で、そして、それに合わして、えー、獣医学部新設の、えー、措置でありますが、獣医学部の新設については、獣医師養成学部各科の定員の制限、えー、文部科学省の告示があり、今治市は平成19年以降、15回にわたりですね、15回にわたり愛媛県と共同で、構造改革特区を活用した、え、獣医学部設置を提案きたが、実現には至らなかった訳であります。<原稿から目を上げる>もちろんそれはあなたが今紹介されたような様々な反対があるからであります。であるからこそ、業界団体の反対があるからこそ、だから特区でやるんですよ。だいたい、特区はそういう事になってるんですから。<原稿に目を落とす>そこで、安倍政権の下では、鳥インフルエンザ、エボラ出血熱など、動物由来の感染症の国際的拡大に対する危機意識が高まったことから、日本再興戦略改定2015においてですね、獣医学部設置を検討することとなった訳でありまして、その中で、えー、昨年11月の特区諮問会議において、鳥インフルエンザなどの人獣共通感染症が家畜等を通じて国際的に拡大していく中で、地域での水際対策の強化や、新薬の開発などの、先端ライフサイエンスの研究など、獣医師が新たに取り組むべき分野・・の具体的需要が高まっていることから、これに対応する特例措置として、獣医学部の設置を、国家戦略特区のメニューとして、追加することとした訳であります。ちなみに、四国には獣医学部がない訳でありまして、四国全体からのニーズがあったのも事実であります。その際、全体の獣医師の需要も踏まえ、また、永年実現できなかった岩盤規制の改革に対して、慎重な議論もあったことからですね、平成27年に新設が認められた医学部と同様、一校に限る。これは、あー、成田で新設された医学部でありますが、これも一校に限るということになっている訳でありまして、一校に限る制度改正となった訳でございまして、<原稿から顔を上げる>これ、今申し上げたことは、一々、週刊誌の指摘に反論している訳でありますが、恐らく、そ、それを元に、元に、元に、質問をされてるんだろうと思いますよ。(※5)<原稿に顔を落とす>ただし、国家戦略特区はですね、規制改革の突破口であり、今後、特段の問題が生じなければ、更なる規制改革として、2校目、3校目を認めていくこともですね、え、検討に値すると考えている訳でございます。
質問4
福島:政府の政策が合理的になされているかどうかを正すのが国会です。政府の審査をするのが国会議員の仕事で、野党じゃないですか。その質問に対して、何で総理はそう恫喝するんですか。総理は、総理はですね、10月2日と、12月24日、まさにその2017年、あ、2016年その11月9日に国家戦略特区で一つだけ獣医学科を規制する、規制緩和する、まさにここで、ということを、総理自身が議長で決めたときの前後にですね、10月2日、12月24日、え、この方と食事をしています。え、こういう話を、えーしたんですか。
安倍:これね、私、そもそもね、そもそもですよ。何かですね、これ、不正があったんですか。だから私が言ったんですよ。何か確証を掴んでるんですか、ということですよ。週刊誌の記事以外に。何か確証もつかずにですね、この国会の場において、何か問題があったかのごとく、私と彼が会食、彼は私の友人ですよ。ですから会食もします。ゴルフもします。でも、彼から私、頼まれたことはありませんよ。この問題について。ですから働きかけてはいません。これははっきりと申し上げておきます。働きかけていると言うんであれば、何か、確証を示してくださいよ。で、私はね、私はもし、働きかけて決めてるんであれば、これは私責任取りますよ。当たり前じゃないですか。(※6)で、国家戦略特区の諮問委員会はですね、そんな、すいません森さん、五月蠅すぎますよ後ろで。これ、委員でもないんですから・・、委員でもないんですから、い、い、傍聴、<委員長に>ちょっと、あの、注意してください。<委員長:あの、静粛に願います。総理、ご答弁続けてください。静粛に願います。>はい。で、そこでですね、そこで、いわば、そこでですね、それを出すってんであればですね、これ、大きな被害が被るんですから、マスコミが殺到して、で、学生たちにもマスコミ殺到しますよ。こういう事をするというんであれば、よっぽどの確信がない限り、ただ、安倍政権のイメージを落とそう、安倍晋三を貶めようということで、答弁するのは止めた方がいいですよ。実名を挙げて答弁するのは。(※7)
質問5
福島:これが余りに急スピードで展開しているので、そのことについて、思っているのです。2016年の11月9日に、国家戦略特区でこれを決めます。そして、そして1月4日に告示があります。ここで文科省、文科省の大臣告示を変えて、えー、獣医科を今まで作らなないとしていたのを、規制緩和をするわけです。そして1月、1月4日から11日、わずか一週間の間、公募をやります。ここに手を挙げるのは、そこの加計学園以外にはありません。もの凄く速いじゃないですか。1月、なんと11月に国家戦略特区で規制緩和を決めて、告示を変えるのが1月4日ですよ。で、告示を変えた直後、1月4日から11日の間、わずか一週間の間しか、この今治の獣医学部をやる人がいますか、という公募はここでやるですよ。そんなの手を挙げられる所って、もう本当に、元々準備をしている所以外にないじゃないですか。そして、2017年1月20日、国家戦略特区諮問会議で、総理はこう仰っています。「1年前に国家戦略特区に規定した今治市で画期的な事業が実現します。獣医学部が来年にも52年ぶりに新設され、医師を育成します。」。もの凄く速いですよね。そもそも、決めて、告示をやって、それから、わずか同じ日ですよ、1月4日、まだお正月のときですね。それから一週間、11日までしか公募しないんですよ。だとしたら、手を挙げられるところは、もともと予測できるじゃないですか。何故この質問をしているか、国家戦略特区の議長がえ-、総理であり、11月9日、そして1月20日、その間、もの凄く急スピードなんですよ。これはやはり、この今治市で獣医学部をやって、この学園ってことを、総理がやっぱり、予測してたんじゃないですか。
安倍:もうね、えー・・この質問自体ですね、先ほど申し上げましたように、固有名詞出したんですから、そうした人たちを傷つけるってことを考えて質問されなければダメですよ。まず、十五年間ですね、特区は申請され続けてきたんですよ。その間、そうであればですね、他の大学だって、じゃあ取り組もうと思えば、取り組めたわけですよ。しかし、諦め続けずにやってきたところがあったのは事実。それ、加計学園であったわけでありますが、そこでですね、<原稿に目を落とす>民間、民間事業者の選定はですね、国家戦略特区法の、これ国家戦略特区法の原則に従いですね、公募手続が取られ、学校法人加計学園より応募があったわけであります。で、公募期間は8日間としたが、この期間は、<原稿から顔を上げる>他の事業と同程度であります。これだけ速かったわけではないんですよ。だいたいですね、まず、特区ってのは、そんな長い、この戦略特区でありますから、その前にこれは、だいたいやるということはだいたい決まっていて、多くの人たちが知っているんですよ。関係者はみんな知っているんです。知ってる中においてですね、もうこれは、そういう方向で進んでいるということは、多くの人たちが知って、知っているんです。その中で8日間、で、ほかと比べてですね、特別短ければ別ですよ。これだいたい他と同じですから。<原稿に目を落とす>で、その後ですね、え、6日間の追加申し出の手続を行いましたが、他の事業者から応募はなかった訳でありまして、応募の内容については分科会や、区域会議、諮問会議において、新設に必要な要件を十分に満たしていることを適切に確認をしております。なお、獣医学部の新設に関心を持つ事業者や自治体に対しては、特区で取り上げられるに至る前段階から、内閣府が随時、提案や相談を受け付ける体制を整えています。<原稿から目を上げる>急に8日間でやったんではない。もうちょっと勉強してから質問してくださいよ。(※8)しかしながらですね、しかしながらこの数年間で、しかしながらですね、しかしながら、や、これはあなたがですね、こういう問題で、疑惑があるかのごとくですね、疑惑のあるかのごとく、固有名詞や学園の名前を出せば、これは多くの人たちが傷つく訳であります。最初に申し上げましたように、これ、学校や何かにね、また、生徒や親の所にマスコミが殺到したらどうするんですか。責任とるんですかそれは。(※9)<原稿に目を落とす>で、しかしながらですね、この数年間、熟度の高い具体的提案は、平成19年から出されているこの今治市の事業のみだったと、こう承知をしているわけでございます。
結語部分
福島:この、獣医学部に関して、もう需要がきっちりあってですね、新たに獣医学部を作る必要は無いというのが、文科省、農水省、そして獣医学会が、あ、獣医師会が言っていたことなんですよ。それを今治市で、え、そしてまた新たに獣医学部を作ると。で、これはやはり何故質問しているかと言えば、国家戦略特区の議長が総理であり、そしてその決定をしているからです。私は逆にですね、友達やいろんな近しい人が関与している可能性があるんだったら、むしろそれは、ま、注意深くやる。慎重にやる、あるいはやらない、そういう配慮も実は必要だと思いますよ。だって正に、正に、永年の友人。だって、総理が国家戦略特区で規制緩和をしたことで、総理の永年の友人はこれで利益を受けるわけじゃないですか。利益をこれで受けるんですよ。だから、そのことが大きいというふうに思います。えー、森友学園のことについても、今後も追及をします。
安倍:<委員長:総理、短くお願いいたします。短くお願いいたします。>あのね、今、疑惑を掛けたまま終えられますから、ひと言付け加えたいと思いますけどもね、一校、そりゃ反対しますよ。医学部だって、成田の医学部だって、反対しましたよ。医師会は。当然なんですよ、それはね。それ、それを同じ理由であの、それを同じ理由で反対しましたからね、で、そこで、一校のみということを、が、で、一校のみというのが決まったのが成田における医科医大学でありましたね、医大でありますよ。で、同じ事がこっちでも起こっているわけで、そこで私が知っているんであればね、それを止めるべきだ、<指を指しながら>そこで私は、裁量、裁量行使していいんですか。裁量行使して良い訳ないじゃないですか。ということをはっきり申し上げて、えー、答弁を終えさせて頂きたいと思います。
筆者の講評
質問1について
福島議員の質問の趣旨は「加計学園理事長の加計孝太郎氏が今治市に岡山理科大学獣医学部を作りたいと思っているのを知っていましたか。」ですが、安倍首相は、聞かれていないことを散々言い散らした上、「最終的には」知っていたと述べるだけで、いつ知ったのか、あるいは最初から知っていたのではないか、という疑惑に何も答えてません。
(※1)安倍首相は、国会で答弁する際、昭恵氏のことを「妻」と呼びますが、焦っているように見えるときは「家内」という傾向があるように思います。これは普段どう呼んでいるかの問題で、安倍首相は普段、周囲には「家内」と言っているところ、国会では、政治的な適正さを意識して「妻」と言い換えている可能性があります。
(※2)福島議員は安倍首相が知っていたか否かの事実を聞いているだけなのに、印象操作、政府の判断を侮辱など、全く関係ないことを答えています。
(※3)自分が最終的に知っていた、という単純な事実を認めるのに、えー、おー、この、そのなどかなり言い淀んでいます。その事実を認めるのがそんなにまずいことなのでしょうか。
質問2について
安倍首相は国家戦略特区諮問会議の議長で、今治市における獣医学部設置に関する規制緩和の議論に関与してきた立場です。獣医学部の規制緩和について具体的提案を行ってきた自治体を確認されただけで、それを「所管外」と逃げて答えないのは、誠実な国会答弁ではないと思われます。なお、その後、安倍首相は今治市について何度も言及しており、山本規制改革大臣の名前を出して逃げるのは、この点からも、ためにする言辞と思われます。
質問3について
福島議員の質問の趣旨は、獣医師会が反対する中で、国家戦略特区諮問会議の議長である安倍首相がそこで発言をしているのに、答弁を回避するのはおかしい、というものだと思われます。これに対して、安倍首相は全く答えていません。「確証」がなければ国会で質問知るのが失礼だ、というような、議員の質問権を否定するような答弁に終始しています。福島議員が一切言及していない週刊誌報道について、聞かれてもいないのに一々反論するのも、国会答弁の範疇を逸脱していると思われます。後半は、官僚が用意した原稿を読み上げて答弁していますが、しまなみ海道の観光振興と鳥インフルエンザ・ライフサイエンス研究は直接関係ないはずで、まさに官僚答弁と言えるでしょう。
(※4)「確証」がないのに野党が国会で質問をすれば加計学園に失礼で、学生を傷つけるので、責任取れるのか、という趣旨のようですが、質問に対する答えになっていません。
(※5)福島議員は週刊誌のことを何も言っていないのに、※4の部分以降、安倍首相が長々と原稿を読み上げて週刊誌報道に対する反論をするのは国会の審議時間の浪費でしょう。
質問4について
福島議員の質問の趣旨は、2016年11月9日に国家戦略特区諮問会議(安倍晋三議長)で、今治市での獣医学部設置に関する規制緩和が決定された前後の10月2日、12月24日に安倍首相が加計孝太郎氏と会食しているなかで、獣医学部設置に関する会話をしたのではないか、ということですが、安倍首相は質問に直接答えず、「この問題について頼まれていない」と限定して答弁しています。これは、会食の時に獣医学部設置計画の話自体はあったと認めているのでしょうか・・・。
(※6)福島議員が、安倍首相に責任があるとも何とも言わず、事実を確認しようとしているのに、それには答えず、自分が働きかけて決めているのであれば責任を取る、と勝手に前のめりな発言をしています。これによって、今日に至るまで、あるはずの関与を認められず、国会が振り回されています。
(※7)安倍首相は、※4に続き、再度、加計学園や学生にマスコミが殺到して大きな被害を受ける、などと言いますが、大問題になっている今日に至るまで、少なくとも学生や父母に取材が殺到した例は無いように思われ、加計孝太郎氏が公式に何かを述べたことも無いように思われます。なお、安倍首相は「答弁」と「質問」を取り違えており、焦っているのでしょうか。
質問5について
福島議員は2016年11月9日に国家戦略特区諮問会議(安倍晋三議長)で、今治市での獣医学部の規制緩和が決まった後、2017年(今年)の1月20日の同会議で加計学園が事業者となる獣医学部設置が決定されるまでが急スピードであることから、安倍首相は、加計学園が事業者となる獣医学部の新設を事前に知っていたのではないか、と改めて質問していますが、安倍首相は、官僚が作った原稿に目を落として、国家戦略特区法における手続の進捗状況を述べるだけで、自身が事前に知っていたか否か、という肝心の質問に答えてません。
(※8)質問者の質問に答えてないのに、質問者に対して「もうちょっと勉強してから質問してくださいよ。」は、それこそ、質問者に対する侮辱と思われます。
(※9)これも※4、※7と同様のことを繰り返しています。
結語部分
国会質問では、質問した側が最後に自らのまとめをして質問時間を締めくくることはよくあるのですが、安倍首相は答弁を求められていないのに、これに答弁に立っています。聞かれたことに答えないのに、言いたいことは言うのも、やはり、行政府の長として、非常に行儀が悪いと考えます。
今日から見た意義
まずは、国会審議から2ヶ月半も経つのに、議事録がホームページに掲載されていないこと自体、非常に不当でしょう。安倍政権がこの国会質問について、何かを隠したがっていると疑念を持たれても仕方ないのではないでしょうか。
そして、3月13日の段階では、安倍首相は、確証もなしに国会質問をすべきでない、などと述べていました。しかし、その後、この件について「総理のご意向」「官邸の最高レベルが言っている」等と書かれた文部科学省の内部文書が流出しました。それが本物であり、また、2016年9月から11月にかけてその旨の報告があったことや、安倍政権の首相補佐官の和泉洋人氏や、内閣官房参で、同時に加計学園理事でもあった与木曽功氏から繰り返し働きかけがあった旨、前川喜平・前文部科学次官(1月18日に天下り問題で引責辞任)が何度も証言しています。前川氏は和泉氏が「総理は自分の口からは言えないから私が代わりに言う」と言ったとまで証言しています。自民党の元国会議員である佐藤静雄氏はツイッターで「前川前次官は私が党の文教部会長をやっていた時に多少の付き合いがあった方だが正直で真面目な人だ。出所の分からないペーパーをでっち上げるような人ではない。」と発言しました(5月29日)。自民党の元国会議員である北村直人氏も文科省の内部文書について「ほぼ正確なものだ」と証言しています(5月25日 FNN「北村氏「首相の意向」内容認める」)そして、先週末には文科省のパソコンにも文書が保管されている事実が判明しました。
ところが、これだけ証拠が揃った今日、松野文部科学大臣は、今度は「入手経路が明らかにされておらず、改めて調査を行うことは考えていない」と答弁したようです。具体的な証拠があるのに、入手経路を明らかでなければ答えない、というのは、違法・不当な業務執行を内部者が曝露する、公益通報や、ジャーナリズムを全否定するものであり、また、国民の疑問に対して全く答えになっていないでしょう。安倍首相が「確証」に基づいて追及しろ、と散々言ったところ、これだけの証拠が出てきた以上、事態の核心を知る和泉洋人首相補佐官、木曽功内閣官房参与(加計学園理事)、前川喜平前文科事務次官、加計孝太郎(加計学園理事長)の証人喚問が必要な段階に至っていると思われます。
そして、安倍首相自身、自ら「腹心の友」と呼ぶ友人が代表者を務める学校法人、すなわち利害関係者に対して利益誘導する政治を自らの名で行っており、最低でも深刻な利益相反を引き起こしているはずです。利益相反は、実際に不正が行われたか否かとは関係がありません。「李下に冠を正さず」の言葉の通り、客観的に政治家が利害関係者の利益になる政治を行うこと自体が大きな問題なのです。本来、安倍首相も、国会での証人喚問を免れない立場と思われます。
行政は、国民に対して、適法・適正な業務執行をしている旨説明する責任がどこまでもあります。行政府の長である安倍首相以下、質問に答えず、言いたいことだけ言い続けるモラルハザードの状態を、もういい加減、止めて頂きたいと思います。