【京都市上京区】大釜に溢れる大根 悪魔の誘惑に負けちゃだめよ! 京の古刹であったか大根炊きの授与
京都市上京区にある古刹、大報恩寺(千本釈迦堂)の第三世慈禅上人(じぜんしょうにん)によって創められた「成道会」は、お釈迦さまの「さとりの日」を慶讃して毎年12月7日と8日に盛大、かつ荘厳に行われていました。
「成道会」は、お釈迦様が修行中に悪魔の誘惑に負けず、12月8 日の夜明け前に明星出現と同時に「さとり」を開かれた事にあやかって、それから後、法要の度に、4本の大根を縦半分に切って8本とし、切り口に釈迦の種子(梵字)を書いて供え、参詣者への「悪魔除け」とされました。
その後「悪魔除けの大根」は、他の大根と一緒に炊き上げて、参詣者に振る舞われたのが「大根炊き」のはじめと言われています。(以上、同寺ホームページより)2022年12月7日にも恒例の「大根炊き供養」が同寺境内で行われ、味付けして煮込んだ大根が授与されていました。8日にも行われます。
大報恩寺は、鎌倉時代の承久3年(1221)に義空が開いた真言宗智山派の仏教寺院で、千本釈迦堂とも称される長い歴史を持つ由緒あるお寺です。京洛の寺院は応仁の乱や蛤御門の変など、数多の戦乱によってそのほとんどが焼き尽くされました。安貞元年(1227)に建立された本堂は、戦火を免れ、800年近く経った今も当時のまま残る京都市内最古の木造建造物として国宝に指定されています。
この本堂には有名なもう一つの伝承があります。境内の「おかめ塚」にお参りすると、縁結び、夫婦円満、子授けにご利益があると言われています。「おかめ」は本堂建築で棟梁を務めた大工「長井飛騨守高次」の妻。ところが高次が重要な柱の寸法を間違えて短く切り過ぎたため、枡組で補えば良いと助言してことなきを得ます。しかしおかめは、「専門家でもない女性の知恵で棟梁が大仕事を成し遂げたと言われては夫の恥」と上棟式を迎える前に自害してしまったというのです。
人権意識の成熟していない時代を背景とした、今では考えられない昔の逸話です。ただ、今日でも和風建築の上棟式などにはお多福の面を着けた御幣が屋根裏に飾られるのはその名残です。また宮崎駿さんのアニメ「となりのトトロ」でも、屋根裏に「おかめ」のお面が出てくるシーンがあるのだそうですよ。
本堂には、鎌倉時代を代表する有名な仏師たちの仏像が勢ぞろい。行快作「本尊釈迦如来像(秘仏)」や、快慶作「十大弟子像(十躯)」、定慶作「六観音菩薩像(六躯)」など、重要文化財の仏像彫刻が多数あります。境内にある、「おかめ」像のふくよかな笑顔は今でも見る人の心を癒してくれています。
大報恩寺(千本釈迦堂)(外部リンク)京都市上京区七本松通今出川上ル 075-461-5973