ドラ1候補の小園、達、森木、相次いで消える! 甲子園への道険し
地方大会も最終盤。連日、多くの高校が甲子園出場を決める一方、甲子園で見たい選手も相次いで涙をのんでいる。野球はチームスポーツであるから、そうした好投手、強打者を、チームとして倒すところにこそ醍醐味があるというものだ。それでも「甲子園で投げさせたい」と誰もが思うような投手が、一度も甲子園の土を踏むことなく高校生活を終えるのは、残念としか言いようがない。
市和歌山・小園はライバルに屈する
27日には、近畿で注目投手が敗れ去った。市和歌山の最速152キロ右腕・小園健太(3年=タイトル写真)は、ライバル・智弁和歌山に1-4で屈し、春夏連続の甲子園出場を逃した。智弁和歌山の攻守にわたるスキのなさはさすがで、小園の奪三振0は、いかに研究し尽くしたかということを物語る。ちなみに智弁和歌山は失策も0で、鮮やかな継投も含め、完璧な試合をした。試合後に、小園はプロ志望を表明したようで、センバツでのパフォーマンスから、1位指名の可能性も十分にある。
天理・達は逆転サヨナラ負け
同じ日、奈良大会では天理が高田商に逆転サヨナラ負けを喫し、193センチの大型右腕・達孝太(3年)は、ライバル・智弁学園との対戦を前に姿を消した。
この日は救援待機だったが、先発投手が崩れて5回からの登板。大会を通して調子に波があったようで、立ち上がりから高田商打線に痛打された。センバツで自己最速を大幅に更新する148キロをマークし、最も評価の上がった投手で、ポテンシャルの高さも無限大。「将来はメジャーリーガー」と1年時から公言する大器は、試合後、「まずはプロ」とNPBからの飛躍を誓った。これほどまでの逸材を、プロが放っておくはずがない。
全国トップ級の森木も涙
小園と達は甲子園で投げて勝利も経験しているが、この二人を凌ぐ逸材と言われるのが高知の最速154キロ右腕・森木大智(3年)だ。中学時代に軟式球で150キロを出し、周囲を仰天させたが、高知進学後、ここまで1度も甲子園で投げていない。全国トップ級の剛腕に、「最後の夏こそ」の期待が高まったが、28日の明徳義塾との決勝で敗れ、ついにベールを脱ぐことなく、高校生活を終えることになった。「バーチャル高校野球」で見ていたが、悔しさがこみあげてきたのだろう。敗戦後はベンチでずっと泣き崩れていた。
9回に力尽きた森木
試合は2点を追う8回、高知の代打策が成功して連続適時打で追いつく。直後を森木が抑えれば、サヨナラ勝ちもある展開だった。しかし9回表、明徳の先頭打者、1番の米崎薫暉(3年=主将)への初球は完全な抜け球で、背中に死球。直後に連続暴投し3塁まで進まれたところで、無念の降板となった。120球を超えて、全く制球できず、かなりへばっていた印象がある。このあと救援投手が打たれ3点を失った高知は、必死の反撃を試みるも1点を返すのが精一杯。終盤の攻防を制した明徳が5-3で勝った。森木が失った最初の2点はいずれも失策が絡んでいて、市和歌山と似ているが、相手のスキのなさが上回ったということに尽きる。
1位競合もあるか
初めてじっくりと森木の投球を見たが、184センチの恵まれた体から、バランスのいいフォームで、角度のある球を投げる。変化球も一級品で、大きく逸れるボール球にも明徳の各打者が空振り(10奪三振)していたので、相当、キレがいいのだろう。今すぐにでもプロで投げられそうな完成度の高さは、一昨年の奥川恭伸(石川・星稜~ヤクルト)とダブる。直球の平均速度は奥川よりやや落ちるが、投法にもボールにも力感があるので、育ててみたい球団はかなり多いはずだ。1位競合もあるとみた。
逸材たちの甲子園への道険し
こうした逸材たちの敗退を目の当たりにするにつけ、甲子園への道が、いかに険しいかということを実感する。高知決勝の試合終了の挨拶のとき、明徳の中堅手がつかみ取ったウイニングボールを、球審が森木に手渡した。珍しい光景だったが、高知県の高校野球関係者が、いかに森木をリスペクトしていたかの表れだろう。熱戦の後、爽やかな気分になった。