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日本上陸一ヶ月経過した「ながらポケモンGO」の弊害

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
ハンドルを握る人のポケモンGoは危険!(写真:ロイター/アフロ)

KNNポール神田です!

ポケモンGOが、日本でダウンロード解禁になったのが2016年7月22日金曜日、そして国内初の死者がでたのが一ヶ月後の2016年8月23日土曜日だった。

徳島東署によると、(2016年08月)23日午後7時35分ごろ、徳島市方上町弁財天の県道で発生。五王容疑者の車が歩行者の女性2人をはね、うち1人が死亡、もう1人は重傷を負った。

容疑者は事故当初、同署に「スマホの時計を見ていた」と話していたが、24日に「ポケモンGOをしていて前を見ていなかった」と供述を変えた。

出典:ポケモンGOで日本配信1カ月で初の死者 徳島でゲームしながら車運転、39歳男を逮捕

これは「ポケモンGO」による死亡と書かれているが、スマートフォンが関連する自動車事故と言い換えるべきだろう。

ポケモンGOをしていて起きた交通事故は、警察庁のまとめによると、7月22日から1カ月間に29都道府県で79件。大半は脇見運転で、摘発は全都道府県で1140件に上っている。

事故の内訳は、人身事故が22件で、うち自転車側がゲームをしていたのが4件。物損事故は57件で、うち自転車側がゲーム中だったのは25件だった。

出典:ポケモンGOで日本配信1カ月で初の死者 徳島でゲームしながら車運転、39歳男を逮捕

また、ポケモンGOの事故の特徴としては、「歩きスマホ」が原因ではなく「自転車ポケモンGO」が多いことがわかる。

また、昨日(2016年8月25日木曜日)には国内で2人目の死者が発生。

愛知県春日井市で11日夜、スマートフォン向け人気ゲーム「ポケモンGO(ゴー)」をしながら運転していた岐阜県土岐市の20代の男性会社員の軽乗用車が、20代女性をひく事故があり、25日に女性が死亡していた。春日井署によると、会社員は「ゲームで電池が少なくなり、充電しようとしてよそ見をした」と説明しているという。

出典:ポケモンGO事故で死者 全国で2例目、愛知

こちらも「ポケモンGO」というよりも、運転中によるスマホの不注意によるわき見運転だ。しかし、結果として、ブームとなった「ポケモンGO」関連による事故死として報道されることとなる。

ポケモンGOで法律が変わる可能性は?

現在、携帯電話使用等(交通の危険)違反は、3ヶ月以下の懲役又は5万円以下の罰金。一方、酒気帯び(0.25mg以下)でも最低、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金、酒酔い運転となると、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金だ。このまま、ポケモンGOによるスマートフォンでの事故が増えれば、ハンドルを握る人が、容易にゲームに興ずるのは飲酒運転と同等の行為という世論が喚起され、酒気帯び同等の法律が制定される日は近ずくことだろう。現在、自転車に乗ってのスマ−トフォン操作も、安全運転義務違反として「3ヵ月以下の懲役または5万円以下の罰金」があるけれども現状は注意喚起が主だが、実際に摘発されるケースが出てくるだろう。

通常の日本においてのマナー観で考えても、クルマの運転中や自転車の運転中における「ながらポケモンGO」は、ありえないと考えるのが普通だ。また、ポケモンGOの「トレーナー」としては、効率よくポケストップを巡回するためには徒歩よりも乗り物を使ったほうが効果的と考えたのだろう…しかし、それで死亡事故を起してしまい、法律が厳重化されてしまったら、自分だけでなく社会的にも損失だろう。自動車の運転中のスマートフォン操作が厳罰化されたり、道交法上では運用上「2秒以上見続けること」を「注視」とされるので、クルマでの操作は、siriやらok Google以外の音声利用以外、認めらないなんてことにもなりかねない。まずは、「ながらポケモンGO」にならないよう、ユーザー同士のマナー喚起が重要だと思う。

ポケモンGOが社会に受け入れられるためには

ゆりかもめでお台場に向かおうとすると、自動運転カーのゆりかもめに揺られながら、大のオトナが「ポケモンGO」に興じている。その多くの姿を眺めると、SFの古典、ジョージ・オーウェルの「1984」の世界さながらのディストピア観を感じざるを得ない。かつて通勤電車では、日経新聞を縦4つ折りで読む人が多かったが、21世紀にはそんな昭和の風物詩を見かけることがなくなった。印刷物の漫画を読んでいる人も見かけない。2001年にiPodが登場し、2007年(日本では2008年)にiPhoneが登場した頃から、白いイヤフォンをした人が激増しはじめた。すでに通勤電車の中で「白イヤフォン族」はメジャーとなった。そして、2012年の「パズドラ」の登場あたりから、せわしく指先を動かし続け、まばたきもしない「スマホに奴隷化された人」を見かけるようになった。

そして2016年、ポケモンGOの日本上陸から、あの画面で、せわしくボールをぶつけ、ポケストップをクルクル回すことに夢中になっているオトナを見かけることが多くなった。ポケモンに真剣に興じているオトナを見れば見るほど、スマホに支配されて心をなくしている人にしか見えないのだ。

本当にナイアンテック社が描いている未来は、この景色にあったのだろうか?リアルとARが一致した世界ではあるが、人々の心のレイヤーには「リアル部分が希薄化」しているようにしか見えない。復興支援で、ポケモンのレアキャラが登場したり、観光地がポケストップになったりして、人を動かす誘致には短期的にメリットがあるかもしれないが、社会マナーが希薄化し、リアル部分が希薄化した人たちがいくら集っても、地域振興になるとは考えにくい…。その地域に本当に興味を持っていただく必要があるからだ。そのためには何らかのリアルな接点が必要だ。

むしろ、ポケモンGOでスマホの加速度センサーで、タバコのポイ捨てされている場所をポケストップ化し、そこでゴミを拾う行為をセンサーが感知して、ポイントやレベルアップに役立つとか…。ポケモンGOをする人が社会に貢献している「善行」があればバッシングされにくいのだ。ポケモンGOをする人は電車の座席を譲ってみるのも良いだろう…。ポケモンGOのジムで対戦する為には、スマホを持っているひとに「おはようございます!」とか「こんにちは!」と挨拶をしないと対戦ができないモードが登場するとか…マクドナルドでも「対戦ありがとうございます!」と言うと勝率があがる…などのリアル社会とのインタフェース部分のゲーム設計も必要なフェーズに入っているような気さえする。逆に見知らぬ人に声をかけられるという経験で、良い経験をしたことがない時代だからこそ、見知らぬ人に親切にする経験をして、損をしない社会でなければならないと思う。

ポケモンGOで、誰か後ろから、見知らぬ人がきたら、ドアをあけたままで、「どうぞ!」というとか…。日本人は、些細な善行が何もできなくなってしまっている。欧米では自分のドアの後ろに人がいないか確認してからドアを閉める。昭和の自動改札のなかった頃は、毎朝、駅の「きっぷ切り」の駅員さんに挨拶をしていた。考えてみれば、朝の挨拶する機会も激減していたのだ。駅前の商店街もコンビニとなり、顔見知りになるのは困難だ。日本語さえおぼつかない店員さんばかりだ。

ITの進化とともに、人と人の接点は希薄化していこうといている。ポケモンGOの設計思想に、リアル社会との接点をふやすべきだと思う。それこそが本当のARゲームの未来のビジネスがみえてくると感じている。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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