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スムージーって満足感とスムーズに飲め、朝食の野菜摂取で今またブーム。

池田恵里フードジャーナリスト
ほうれん草をベースにしたこれがコンビニ定番(写真:アフロ)

朝食にスムージーが今、より簡易に

「毎日、スムージーを飲みなさい、マシンは○○がいいよ」とマシンの写真を友人が送ってくれた。調べてみると、ちょっとかわいくないお値段のスムージーマシンであった。しかし勢いあまって購入してしまい「にんじん、リンゴ、小松菜」をほぼ毎日、スムージーとして飲んでいる。開発の仕事はややもすると食生活が乱れがちになる。スムージーを飲むことで、ちょっと健康的な気分になり、なんといっても美味しい。機械のお掃除が面倒ではあるが・・・・。

スムージーは、随分以前から駅ナカ、デパートで販売され、中には、1店舗一日90万という驚異の売り上げをはじき出す専門店舗もあり脚光を浴び、スムージーの上にふりかけのサプリメント粉末をかけて提供してくれるお店もあった。

そしてこのところのヒットは、スムージーがコンビニの冷蔵ケースにPB商品として並んだことにある。これにより手軽に飲めるようになりヒットした。日経トレンデイ「ヒット商品ベスト30 2016年」では10位にランクインしている。

他の野菜・果汁飲料は多くの場合、低迷気味

スムージーをお話しするその前に、最近の野菜ジュース、果汁ジュースの伸長率を見てみる。単一食材に特化したもの、キャッチフレーズが分かりやすいもの以外は低迷気味。ちなみに富士経済での野菜入混合果汁飲料の伸長率を取り上げてみると、2008年より減少し続け、いまでは2006年から見ると、30%減と低迷している。

富士経済2015年 食品マーケテイング便覧NO4
富士経済2015年 食品マーケテイング便覧NO4

富士経済の野菜入混合果汁飲料カテゴリー分けは

・野菜汁と果汁を原料とする飲料を対象とし、その合計が100%でないと対象外となる。

・ただし野菜入混合果汁のブランド(「野菜生活100」「充実野菜」など)の一つとして発売された、大豆と野菜汁、そして果汁をあわせて100%になる商品、もしくは発酵乳と野菜汁、そして果汁が100%を含むものをカテゴリーとされている。

「野菜入混合果汁飲料」の低迷原因として富士経済では

・2008年に起きた中国製の冷凍餃子の中毒事件で原料への不安感が高まったこと

・コンビニのコーヒーの投入により、需要が奪われたこと

これらの要因が大きいとのこと。

他のカテゴリーでも、富士経済によるとピューレ含有率20%以上60%未満の果肉飲料では約20%減、果汁含有率10%以上30%未満で5%以上30%以下の果粒を加えた果粒含有果実飲料はいずれも芳しくないとされていた。唯一「一日野菜を謳った野菜飲料」そして「トマト飲料」は良好であった。

トマト飲料は、最近、そのリコピンの効能から2013年は前年度より驚異の60%増となっており、2014年以降は20%増で落ち着いているもののやはり人気がある。そしてこの人気を維持すべく、最近では「減塩」という付加価値をつけ販売。この他に野菜ジュースをてこ入れをしたことにより、野菜ジュース市場の全体の売り上げ額は前年比よりアップし持ち直しつつあるとされる。

とはいえ売り場をみると、今回、紹介するPB商品のスムージーが多く占められるようになり品揃えの変化が起こっているのが現状である。

朝食に的を絞り、コンビニ販売

今回、コンビニで発売されているスムージーは、2015年5月にローソンが「グリーンスムージー」を発売した商品は累計6300万本(日経トレンディ参照)売り上げ、女性がターゲットとのこと。各社も追従する形でスムージーを販売。いずれも試飲したが、本来の味を再現し、極力、フレーバーが少なく飲みやすい。それもあってかコンビニのスムージー市場は、年間約200億円にも及んでいるとのこと。これまでドリンクにフレーバーを添加することで本来の味に近づけるメーカーの技術力は高い。しかし顧客リピートを考えると、フレーバーを添加することがむしろ飽きられやすくなり、本来の味には敵わない。そのためこれらの裏面記載を見ると極力、減らしている努力の跡が伺える。

コンビニスムージーの価格、そして他のカテゴリー並びにスーパーのスムージーを比較すると

次に価格をみると、コンビニスムージーの価格設定は、190mlか220mlのタイプだと153円から178円。コンビニのコーヒーを投入したことで外食から朝食需要は取り込んだ。しかしコーヒーは年齢が行くにつれ離れる商品とも言われる。そこで「健康」「朝食」とこともふまえ、スムージーを投入したのであろう。

価格設定も店舗内での競合も避けている、問題は・・・

店舗内の価格を見ると、野菜を摂ると言った意味では簡易なPBインスタントスープなどはかぶる。その価格は93円から138円(税抜き)と多少、高めに設定。そして冷蔵の冷たいスープは夏場は置かれていないところも多々あり、9月下旬以降のレンジアップスープは300円から350円前後。これらスープの大きな違いは時間帯が夕食であり、朝食のスムージーとは競合しない。ということで、コンビニ店舗内を見ると、よくよく考え抜かれた価格、売り場となっている。

血糖値をおさえる、食物繊維がポイント

最後に効用は、一般に朝食前にスムージーを飲むことで、血糖値を上がるのを抑えることが出来るとされる。食事の10分前、よければ20分前に飲むと明らかに抑えられるのである。血糖値を抑えるためには、糖分は勿論のこと、食物繊維が要となり、それがスムージーにどれだけ含まれているのかによって、断然違ってくる。コンビニのスムージーの裏面記載を見ると、食物繊維が明記されているのはセブンーイレブンのみだった。スーパーではジュースバーを今のところようやく設置した状態であり、繊維がどれぐらいといったことまで謳っているところはほとんどないと思う。

日本人の食事摂取基準(2010年版)では、食物繊維の目標量は、18歳以上では1日あたり男性19g以上、女性17g以上とされています。

出典:大塚製薬

スムージーを定着させるためにも、繊維がどれくらい入っているのか、糖分がどれくらいになるのか、消費者が数字ではっきりわかる健康訴求の提案が求められていくと思う。

フードジャーナリスト

神戸女学院大学音楽学部ピアノ科卒、同研究科修了。その後、演奏活動,並びに神戸女学院大学講師として10年間指導。料理コンクールに多数、入選・特選し、それを機に31歳の時、社会人1年生として、フリーで料理界に入る。スタート当初は社会経験がなかったこと、素人だったこともあり、なかなか仕事に繋がらなかった。その後、ようやく大手惣菜チェーン、スーパー、ファミリーレストランなどの商品開発を手掛け、現在、食品業界で各社、顧問契約を交わしている。執筆は、中食・外食専門雑誌の連載など多数。業界を超え、あらゆる角度から、足での情報、現場を知ることに心がけている。フードサービス学会、商品開発・管理学会会員

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