Yahoo!ニュース

「当たり前だから見過ごされる」スーパーの値引きシール貼りのコストや環境問題を改善する画期的な救世主

池田恵里フードジャーナリスト
イギリス最大手アルディで採用された「バルク計量システム」(出典:寺岡精工)。

小売りにおけるCO2削減問題への最近の取組み

小売りのCO2削減問題について、顧客にとって、店側にとって、より良い環境、ストレスのない仕組みが構築されてきている。CO2削減問題を解消することは、人手不足、食品ロスにも影響し、小売りにおける様々な問題を解決すべく、今、急速に実店舗で導入されているのだ。

今回は、電子計量器、POSを製造、販売している寺岡精工が手掛ける環境問題のソリューション、普段、当たり前と思っていた現場で起こる課題を拾い出し、従事している人々さえも気づかなかった負担を軽減する試みを紹介したい。一つは、イギリス最大手スーパー・アルディで採用された「量り売り」、そしてもう一つは、スーパーなど多くの現場で日々問題となっている「値引きシール」についての新たなる提案である。

イギリス大手スーパーが導入「バルク計量システム」

使い捨てのプラスチック包装ごみを削減する方法として、量り売りが世界で注目されている。フランスでは、2021年に可決された「気候変動対策・レジリエンス強化法」の中で、2030年までに400平方メートル以上のスーパーでは店舗面積の20%以上で量り売りなど包装のない商品の販売をしなければならないことを義務づけている。

これまで違う価格のものを一緒に一つの容器に入れ、しかも容器のグラム数、つまり風袋(ふうたい)を引いた価格を一枚のラベルに印字できることは難しかった。寺岡精工が、見事にその問題を解決したことは以前、紹介した通りである。

進化する量り売り 価格が違う商品もまとめて会計できる「減算式」とは

さらに寺岡精工は、英リフィル連合が始めた使い捨てプラスチックを使わない食品物流パイロット事業に、革新的なバルク計量システムを提供することで参画している。

使い捨てプラスチックを使わない食品物流パイロット事業
The UK Refill Coalition (英リフィル連合) が英Aldiで開始。
(株)寺岡精工はバルク計量システムで参画 (2023.10.23)。
(出典:寺岡精工 プレスリリース)

英国の大手スーパー・アルディで導入されたバルク計量システムを、実際、デモンストレーションしてもらった。

まず、空容器を秤の上に乗せると、自動的に容器重量が登録された番号シールが印字される(風袋が登録される)。

次に購入したい商品を什器から取るが、この什器にはモーションセンターがついており、什器の蓋や取っ手の動きを感知し、秤側に商品情報を送っている。

商品を入れた容器を秤の上に乗せると、画面には先ほど登録した容器番号が表示されている。その番号を選ぶことで、風袋が自動的に引かれる仕組みだ。

さらにモーションセンサーにより自分が選んだ商品のボタンだけが画面に表示されているので、そのボタンを押せば会計用のバーコードラベルが自動的に印字される。面倒な容器の風袋引きや、購入した商品を秤で選ぶときの間違いもないので買い物はスムーズだ。

機械で容器のグラム数を記録させる(筆者撮影)
機械で容器のグラム数を記録させる(筆者撮影)

このシステムなら、単価の異なった複数の商品をミックスし、持ち帰ることができる。

(筆者動画作成)

店側の従来の手間や、プラスチックごみも排除

従来、量り売りは、店側で補充作業、そして容器の洗浄が必要であったが、商品が充填された容器(Vessel)を入れ替えることで、店舗内の作業はなくなり、その個包装で発生するプラスチックごみも排除し、容器も再利用できるのだ。

英リフィル連合は、「通い容器」として機能する販売什器「Vessel-ベッセル」を開発、商品を充填した状態で生産者から店舗に流通させる仕組みを実現した。専用のディスペンサーも今回、新たに開発し、店舗では商品が充填されたVesselをディスペンサーに装填するだけで即販売が始められるようになった。
空になったVesselはそのまま帰り便で洗浄センターに戻せばよいので、バルク販売によって追加的に掛かる小売側の手間はゼロになる。(上記プレスリリースより)

日本の最新量り売り事例

日本でも、平和堂、京都府の生協が、アルディのシステムとは異なるものの、最新の量り売りシステムを導入している。

平和堂では、滋賀県、京都などの地産地消の玄米を少量から購入できる。売り場を新設し、21アイテムの玄米を量り売りで発売している。什器のハンドルを回すと、欲しい金額、欲しい分量がわかり、その後、商品が容器に投入される。簡易な方法なので、リピート率が高いと言う。

「脱・値引きシール」向けた取り組み

値引きシールの問題については、よくスーパー関係者から「値引きにおける作業が手間」と聞く。確かにスーパーに夕方行くと、パックされた容器に何枚も貼り付けられている値引きシールをよく見かける。

実際、小型店舗のスーパーでシールを貼るだけで一人につき30分から1時間はかかり、大型店舗のスーパーだと売り場が広くなることで商品数が増えるため、作業時間はさらに増える。しかも商品の製造時間からの経過時間によって、2枚、3枚と値引きシールを重ねて貼っていく。

つまりかかる時間は、2倍、3倍と増える。さらにシール代も1枚50銭から80銭ほどかかる。ロスを極力、減らすべく取り組んでいても、むしろある意味、新たなるコストがかかっている。

そこで寺岡精工では、通常、価格などを示す商品ラベルに顧客に一目でわかるようにマークを記載、そのマークがいつから、いくら値引きされるのか、を見える化し、値引きシールを貼らなくても済むようにした。

一例を挙げてみよう。

朝、スーパーに行くと、揚げ物のパックにはニコマークが3つラベルに印字されている。これは開店前に揚げた商品であることを顧客に伝えている。

そして写真でもわかるように、書かれている時間帯に購入された場合、10%、20%、50%と値引きされていく。

そのままレジに持っていくと、値引きする時間と値引き率が連動されているため、シールを貼らなくても正しく値引きされるのだ。

開店前に製造されたものは、ニコマークが3つ貼られている。(筆者撮影)
開店前に製造されたものは、ニコマークが3つ貼られている。(筆者撮影)

開店後に製造された場合、マークが2つのラベルが貼られ、時間帯によって値引きする%が顧客にわかる。そしてラベルによってレジに商品を持っていくと値引きされる。

開店後に製造された商品はニコマークが2つ。ラベルによってレジで値引きされる(筆者撮影)
開店後に製造された商品はニコマークが2つ。ラベルによってレジで値引きされる(筆者撮影)

値引きシールを貼る作業がなくなることで、これまでできなかったサービス、そして売り場やバックルームの清掃などに人員を充てることができるのだ。

地域によって、顧客が来店する時間帯が違うので、それは店側が実情にあわせ値引きする時間、そして%を登録すれば良い。

ごく当たり前と思われていたことを問い直す

改めて、印象に残ったのは、現場の人々、顧客が、不便で面倒な問題があったとしても、それに気づきにくく、当たり前とされてきたという事実だ。実際、テクノロジーによって解消され、具現化したことで、これまでいかに面倒であったかを後で知る。見えない問題点を掬い出すことは、非常に難しい。

寺岡精工の関係者こう話す。「お客様の目的を問い直し、お客様も気づかれていない隠れたニーズを見つけだし、お役立ちすることを心掛けています」。

今、日本が抱えている環境問題や人手不足は、DX化により、急速に解消する方向に向かっていくことを期待するとともに、改めて、問題点を引き出す力がいかに大切かを痛感した。

【この記事は、Yahoo!ニュース エキスパート オーサーが企画・執筆し、編集

部のサポートを受けて公開されたものです。文責はオーサーにあります】

フードジャーナリスト

神戸女学院大学音楽学部ピアノ科卒、同研究科修了。その後、演奏活動,並びに神戸女学院大学講師として10年間指導。料理コンクールに多数、入選・特選し、それを機に31歳の時、社会人1年生として、フリーで料理界に入る。スタート当初は社会経験がなかったこと、素人だったこともあり、なかなか仕事に繋がらなかった。その後、ようやく大手惣菜チェーン、スーパー、ファミリーレストランなどの商品開発を手掛け、現在、食品業界で各社、顧問契約を交わしている。執筆は、中食・外食専門雑誌の連載など多数。業界を超え、あらゆる角度から、足での情報、現場を知ることに心がけている。フードサービス学会、商品開発・管理学会会員

池田恵里の最近の記事