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「異例のヒット」 LE SSERAFIM ”イブ、プシケ、そして青髭の妻” 韓国での反応は?

「イブ、プシケ、そして青髭の妻」公式MVより

「ダンスに驚いて、メンバーの表情に驚いて、コンビネーションに驚いた」

5月26日に韓国公営放送KBSの公式アカウントで公開された音楽番組出演時の動画に、韓国語でこんなコメントが寄せられている。その再生回数は330万回だ。

5月23日にMVが公開されたLE SSERAFIMの「イブ、プシケ、そして青髭の妻」。

【全文】LE SSERAFIM「イブ、プシケ、青髭の妻」 異例のヒットで要注目!「アルバム全体で伝えたかったこと」

これが韓国で異例の反響を呼んでいる。6月9日には韓国最大の音源ダウンロードサイト「メロン」で6位となった。国内最大の経済紙「毎日経済」系の「STAR NEWS」はこう報じている。

「LE SSERAFIM、後続曲もブレイク…MV1000万ビュー突破」

「後続曲」(韓国語で「フソッコク」)とは、アルバムのプロモーション活動の最終段階で利用され「アルバムの中からもう一曲、聴いてほしい曲がある」というメッセージをファンに伝えるためのもの。アルバム全体の認知度を高める効果が狙いだ。MVの有無は場合による。一般的には短い期間だけ音楽番組で公開される。

日本でも「カッコよすぎ」「こっちがタイトル曲でもよかったんじゃ?」といった反応が聞かれる。韓国ではいったいどう見られているのか。

何を歌ってるの?

一風変わった曲名「イヴ、プシケ、そして青い髭の妻」はそれぞれ、聖書、ギリシャ神話、フランスのおとぎ話に出てくる「タブーを破った存在」だ。名詞を並列したものが楽曲名になっている。

事務所側の公式説明はこう綴っている。

”私は願っている。禁じられていることこそを”(I wish for what is forbidden to me)というテーマを持つトラック。ジャージー・クラブ(Jersey Club)スタイルのリズムを使って、”禁忌”というやや重いテーマを魅力的に表現した。LE SSERAFIMは禁忌を破り、新しい世界に進むことに成長の意味を与えた。前作『ANTIFRAGILE』のプロモーション映像に挿入された楽曲”I’m a mess”をの一部を巧みに配置して、馴染みがありつつ、新鮮な感覚を表現している。

この曲が収録されているアルバム「UNFORGIVEN」の全体コンセプトは「他人の評価に関係なく、LE SSERAFIM独自の道を切り拓く」。その中で「時に禁じられてることを破ってこそ先に進める」という内容で、そのメッセージ性をより深めるものになっている。

サビのパート「Boom, Boom, Boom ネ シムジャンイ ティネ」は「ズンズンと心臓が脈打つね」という意味。この後「I wish for what is forbidden to me(私は願っている。禁じられていることこそを)」と続くから、「何かを突破する時にはドキドキするものよね」といったニュアンスか。

何がスゴイの?

アルバムのタイトル曲でも先行公開曲でもないのに韓国有力音源サイトでベスト10入り(6位)。それもアルバム公開直後は121位を最高位にランキングが下がったが、短期間で再浮上した。3度ほどのテレビ出演などでこれを成し遂げたのだ。

近年、韓国でのチャート再浮上といえば2021年のブレイブガールズ「Rollin'」が有名だが、これは通常数年前の曲の魅力が再発見されるもの。だがこの「イブ、プシケ、そして青髭の妻」は違った。

HYBEの公式音楽トレンドメディア「Weverse Magazine」はこう伝えている。

アルバムの発表当時、ミュージックビデオがなく、先行公開曲のようにアルバム発表前に公開されて注目を集める効果も期待できない収録曲は、注目されるのは容易ではありませんでした。この曲がデイリーチャートのトップ100に入ったのは、ミュージックビデオが公開された5月23日のセールスが反映される5月24日から。その後、3回のテレビ音楽番組出演と2つのダンス映像が公開された1週間で急上昇し、34位まで上昇しました。一度注目を集めると、活動終了後でも順位が継続的に上昇しました。

結果、6月9日の6位というランクにまで登りつめた。この前後にはBLACKPINKジスの「Flower」、(G)I-DLEの「Queencard」、New Jeansの「Hype Boy」、IVEの「I AM」など錚々たるラインナップが名を連ねるなか、堂々と「後続曲」が食い込んだのだ。

「Weverse Magazine」はその価値を「後続曲の可能性拡大」にあると伝えている。

多くのガールズグループの音源は昨年から今年にかけて、音楽番組活動後に徐々に上昇しています。「イブ、プシケ、そして青髭の妻」は、ガールズグループ音源市場の変化を示す最新バージョンです。現在の人気ガールズグループは、タイトル曲だけでなく、先行公開曲もMelonの主要チャートのトップ10にランクインさせることが可能です。そして、LE SSERAFIMは後続曲をヒットさせることで、ガールズグループの選択肢がさらに増えたことを示しています。一方で、ガールズグループの曲を望む多くの人々にできるだけアプローチできるプロモーションの役割もより重要になりました。

ちなみに近年、後続曲として大ブレイクしたの別の事例としてKARAの「ミスター」がある。これはアルバムRevolutionのタイトル曲「WANNA」が”ちょっと暗い”として反応が芳しくなかったため、事務所側が早めに「ミスター」に切り替えた結果だ。韓国でも大ヒット曲であることは間違いないが、後続曲だったために韓国語版ミュージックビデオが撮影されていない。同曲のミュージックビデオは日本語版のみだ。

韓国での反応

日本でもこの動画のインパクトが強いのではないか。冒頭のKBS公式YouTubeチャンネルで公開された音楽番組出演時のものだ。韓国語でこういったコメントが寄せられている。コメント欄でリアクションの多いものを紹介しよう。

「ガールズグループのパフォーマンスではLE SSERAFIMが最高! 休みのないダンスの構成なんだけどスキがなくて没入感があっていいな」

「他のアイドルにはない緻密なパフォーマンスと激しいダンスがあるLE SSERAFIMが大好き」

「応援がすごいね、パワフル!」

「実力、美貌、魅力溢れるホ・ユンジン」

「現場にいたんですが、最後の撮影時にクラ(宮脇咲良)が大きな応援を求めたので、本当に大きな声で応援しました!! 喉が少し枯れたけど、LE SSERAFIMのパフォーマンスを見てエネルギーをもらったぶん、メンバーたちも私たちの応援を力にしてくれたことを願います。そして、メンバーがモニタリングを丁寧に行い、細かいディテールまで修正していく姿が本当に素敵でした。目に見えない場所でどれだけ努力していたのか... すごいLE SSERAFIM、いつも素晴らしいパフォーマンスありがとう」

「みんなすごいけど、ユンジンは特に…LE SSERAFIMでデビューしてくれて本当にありがとう」

「サクラとユンジンは、ステージ上で表情が溢れるというよりは、自分たちのキャラクターとコンセプトに忠実に没頭しているようでとても興味深い。本当に演技力がすごい」

(了)

参考記事:【全文】LE SSERAFIM「イブ、プシケ、青髭の妻」 異例のヒットで要注目!「アルバム全体で伝えたかったこと」

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吉崎エイジーニョ ニュースコラム&ノンフィクション。専門は「朝鮮半島地域研究」。よって時事問題からK-POP、スポーツまで幅広く書きます。大阪外大(現阪大外国語学部)地域文化学科朝鮮語専攻卒。20代より日韓両国の媒体で「日韓サッカーニュースコラム」を執筆。「どのジャンルよりも正面衝突する日韓関係」を見てきました。サッカー専門のつもりが人生ままならず。ペンネームはそのままでやっています。本名英治。「Yahoo! 個人」月間MVAを2度受賞。北九州市小倉北区出身。仕事ご依頼はXのDMまでお願いいたします。

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