前田健さん訃報に、この記事だけでAEDの使い方を学び大切な人を守ろう
はじめに
松浦亜弥さんのモノマネで知られ、4月26日に急死したタレントの前田健さん。報道では飲食店を出た路上で突然倒れたそうです。通りがかりの医学生に心臓マッサージやAED装着をされ病院に搬送、一時は心臓が再度動いたのですがその後亡くなられました。亡くなられたのに、「どうしていれば助かった」や「何をしていなかったから間に合わなかった」という議論は、ご本人に失礼かもしれませんし、ご遺族や彼のことを大切に思うすべての人をより痛めつけるかもしれません。その懸念はありますが、しかし前田健さんの死を無駄にしないために、筆者はAEDの普及を強く願います。
誰でも使える、誰にでも使って欲しいAEDの使い方をまとめました。
今これをお読みの方へ。必ず人生に一度は会うのです、AEDを使わねばならない機会が。
目の前で人が倒れたらどうする?
あなたの目の前で知らない人がぶったおれたら・・・想像もしたくないですが、そんなシーンに出くわしたことはありませんか?筆者は医者になって10年ですが、この10年の間に4回遭遇したことがあります。2回は国際線の飛行機の中でした。それほど頻度は少なくありません。
では、目の前で人がぶったおれたら、AEDの前にまずこれです。運転免許を取った人はその時に一度やっているはずです。
です。順に簡単に説明します。
1、まず周囲の安全を確認する。
例えば道路の横断歩道の真ん中や電車のプラットホームの端っこなどで人が倒れたら、担いでも引きずっても安全な歩道などに連れて行きます。「安易に動かすな」という人もいますが、動かした方が安全です。動かしたせいで何かが起きるとしても、トラックに轢かれたらアウトだからです。
2、次に、肩を軽くたたきながら大声で呼びかける。何らかの応答や仕草がなければ「反応なし」とみなす。
「大丈夫ですか!」と大声で聞いてください。肩もバンバン叩いてください。
3、反応がないか、よくわからなければ、その場で「誰か来てください、人が倒れています」と大声で叫ぶ。
一人ではなにもできません。家でその人と二人ならすぐに119番を自分でしてください。
4、来てくれた人に「119 番通報をお願いします」と他の人に 「AEDを探して持ってきてください」と言う。
人に頼むのが原則ですが、人がいなかったらAEDを取りに走ってください。普段から駅、デパートなどで「AED」の文字を見ていたら必ず場所を覚えていてください。迷わず出して持って行ってください、間違えて怒られることはありません。
(本来ならここでAEDや救急車を待っている間、心臓マッサージを行いますがこれは訓練を受けていないと難しいかもしれません。この日本ACLS協会のページからご近所のエリアのコースを探してを受講するか、「BLS 市民向け」で検索してみてください。一般の方は「BLSヘルスケアプロバイダコース」です。費用は18,000円くらいで、丸1日で終わります。「大丈夫ですか!」と声をかけるところから心臓マッサージ、AEDの使い方まで実習として学びます。)
そしてAEDが届いたら?
そして、AEDが届いたらどうするか。救急車はまだ来ませんし、医者や看護師さんも居合わせません。119番からその現場に救急車が到着するまでに平均8.5分(平成26年度全国平均、総務省HPより)かかります。道が混んでいたらもっとかかります。
ですから自分でAEDを扱う必要があります。AEDにはいくつか種類がありますが、概ね同じ操作で使えます。
1、電源on
まずカバンをあけて中の機械を取り出します。
そしてふたを開けると自動で電源が入るものが多いです。ふたが無いものは電源ボタンを押してください。
すると、音声でのガイドが始まります。基本的には全てこの音声に従って操作します。
2、倒れた人の上半身を裸にし、パッドを胸に貼る
必ず上半身を裸にします。服は破いても構いません、きちんと脱がさなくても良いので胸の前をはだけさせてください。病院の救急外来では大きなハサミでじょきじょきと切っています。「裸を見られるじゃないか」と思われるかもしれませんが、死ぬよりマシです。
そして肌に「パッド」というシールを絵のように貼ります。貼る部分はAEDの機械にも書いてありますので、絵の通りに貼ります。それほど厳密でなくても有効です。心臓を胸の右上と左下で挟むような感じです。
3、倒れた人から全員離れる
「体にさわらないでください。心電図を調べています。という音声ガイドが流れます。
「倒れた人から全員離れて下さい。」と大声で言って、離れてもらってください。離れるといっても遠くに行く必要はなく、体のどこかに触ったり手を置いたりしていなければOKです。離れる理由は、AEDという機械が自動的に倒れた人の心電図を計測しさらに治療が必要かどうか解析しているからです。心電図とは文字通り心臓から発せられる電気の信号を拾っている図。人が触ると微弱に電流が流れますから、正確に心電図が測定できないのです。
4、音声が「電気ショックが必要です。 充電しています。」と言ったら
待ちます。
5、音声が「体から離れてください。点滅ボタンをしっかりと押してください。」と言ったら
全員が倒れている人から離れていることを確認し、点滅ボタンをしっかり押します。これが電気ショックです。倒れた人の体が少し跳ねることがあります。もし誰かが触っていると、感電する恐れがありますのでお気をつけて。
ここまで出来れば十分だと思います。基本的には電源をつけ、パッドを貼り、音声でボタンを押せと言われたら押す、という流れです。これが心臓の動きを再開させる極めて重要な治療になります。
さらに詳しく使い方を学びたい方は、一度講習を受けることをお勧めします。一度受ければ一生使えると思います。
AEDメーカーの日本光電や、その他都道府県の消防などでもAED講習会を行っていますのでそちらもご参考にしてください。
※それでもAEDの使い方を学ぶ必要性がピンとこない方へ、こちらの日本心臓財団の動画を御覧ください。
(謝辞)
記事中のイラストは日本心臓財団さまのご厚意により、AED普及の記事であることをご理解いただき使用の許可をいただいています。ありがとうございます。
(参考)