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「シャープのマスクに当選しました」 便乗詐欺のメールに要注意、見分け方は?

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 話題のシャープ製マスク。抽選販売に470万人がエントリーし、117倍の倍率だという。アクセス殺到で申し込めなかったとか、応募が完了しているのか分からないという人も多いだろう。懸念されるのは便乗詐欺だ。

詐欺師にとっては好機

 この種の詐欺の手口としてよくあるパターンは、「シャープのマスクに当選しました」などといったタイトルを付け、あたかもシャープが送信した当選メールであるかのように装うフィッシング詐欺だ。

 「マスク販売の敗者復活抽選について」などといったタイトルにより、抽選の結果、残念ながら落選したものの、特別に先着1000名の優先エントリーを受け付けるといった手口もあり得る。

 新型コロナ騒動の影響で需給バランスが崩れ、マスクが手に入りにくい状況にあることから、普段は慎重な人でも、安易にだまされやすいという素地がある。

 エントリーできた人だけでも470万人。受付日の4月27日に何度となくアクセスしたもののサイトに入れなかったとか、運良く受付ページまでいけたものの申込みがエラーで跳ね返された人をも加えると、潜在的な購入希望者はもっと多かったはずだ。

 シャープによる抽選販売は、第2回、第3回と続くとみられる。

 フィッシング詐欺師の集団が無差別にシャープになりすました当選メールや敗者復活メールを送りつけると、「心当たりあり」という人にヒットし、思わず開いてしまい、記載されているリンクをクリックしてしまう可能性が高いというわけだ。

 中には、エントリーした覚えがないのに、安易にメールを開くという人もいるだろう。

当選メールなどはすぐに開かない

 その先にあるのは、シャープのサイトを巧妙に真似たニセのサイトであり、クレジットカード番号や氏名、メールアドレス、電話番号などの入力を求められる。

 個人情報を吸い取られて悪用されたら手遅れなので、シャープを名乗る当選メールなどが来ても、本当にシャープからのものなのか、よく確認すべきだ。

 こうした点に関し、シャープの広報からも、次のような注意喚起が行われている。

(1) 当選者だけにしかメールを送らないから、落選メールは存在しない。

(2) 当選メールは4月29日までに当選者に送る。29日までに連絡がなければ落選。

(3) 発信元はシャープで、メールアドレスは次のもの。

  cocorostore-info@sharp.co.jp

(4) 当選メールは、まず氏名や電話番号など応募時の入力内容を照合する本人確認ページを案内するものであり、いきなり販売ページに飛ぶことはない。

(5) 当選者は期間中にいつでも購入でき、売り切れもない。

(6) 第1回抽選販売への応募者は自動的に第2回以降の抽選販売の対象になるので、改めて応募する必要はない。

(7) 販売を再開する場合には改めて公式サイトで案内する。

 念には念を入れて、IPアドレスやドメイン名の登録者情報などを検索できる「WHOIS検索」を利用し、送られてきたメールのアドレスなどをチェックし、本当にシャープのものか確認したうえで開くといった予防策も必要だろう。

 また、当選者も、たとえ本物の当選メールが来たとしても、そのスクリーンショットをSNSなどにアップして拡散すべきでない。詐欺師にとって、本物らしさを装ったニセの当選メールを送りつける際の参考になるからだ。

 政府による10万円の給付制度については、すでに市役所などを語って個人情報を引き出そうとする便乗詐欺のメールや電話が横行しているところだ。

 シャープ製に限らず、マスクについても、「ご注文いただいたマスクの発送について」「自治体が無料配布するマスクの件について」などといったパターンのフィッシングメール詐欺が予想される。

 絶対に引っかからないように、家族とも情報を共有し、よく注意喚起しておくべきだろう。(了)

元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

元特捜部主任検事の被疑者ノート

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

15年間の現職中、特捜部に所属すること9年。重要供述を引き出す「割り屋」として数々の著名事件で関係者の取調べを担当し、捜査を取りまとめる主任検事を務めた。のみならず、逆に自ら取調べを受け、訴追され、服役し、証人として証言するといった特異な経験もした。証拠改ざん事件による電撃逮捕から5年。当時連日記載していた日誌に基づき、捜査や刑事裁判、拘置所や刑務所の裏の裏を独自の視点でリアルに示す。

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