Yahoo!ニュース

【南海トラフ】「巨大地震注意」は終了へ…1週間という期間に科学的根拠はない?今後どうする?防災士解説

植松愛実気象予報士・防災士・野菜ソムリエ
世界の地震分布(気象庁HPを元に作成)。

(※台風に関する情報は、一つ前の記事を見てください。)

日向灘を震源とする地震をきっかけに8日に発表された南海トラフ地震臨時情報の呼びかけ「巨大地震注意」は、15日17時をもって終了する予定です。

ただ、呼びかけが終了しても地震の発生する確率が急に下がるわけではなく、そもそも「1週間」という呼びかけ期間にも科学的根拠はありません。

臨時情報が出たときにもどうすればいいか迷った人が多かったと思いますが、終了をもって今後どうすべきか、そして再び臨時情報が出たときにはどうする…?防災士が解説します。

「1週間」という期間に科学的根拠はない

南海トラフ地震の想定震源域(気象庁HPを元に作成)。
南海トラフ地震の想定震源域(気象庁HPを元に作成)。

これは臨時情報が出た際にも気象庁から繰り返し説明があったことですが、「巨大地震注意」の呼びかけを1週間行うのは、地震が起きやすい期間が約1週間だから…ではありません。

今回のように、たとえ南海トラフ地震の想定震源域の一部(今回は日向灘)で地震が発生したとしても、それに誘発された次の地震が発生しやすくなる期間がどのくらいなのか、正確にはわからないのです。
実際、過去の例を見ると、翌々日に次の地震が起きたときもあれば、2年後だったケースもあります。

そこで政府は、2019年にこの臨時情報の制度をつくるにあたり、事前にアンケートを行って、「人々がどのくらいの期間、我慢できるか(地震にちゃんと注意しながら生活できるか)」を調査しました。
その結果、だいたい1週間くらいが限界だということがわかったので、臨時情報の呼びかけ期間を1週間にしたのです。

今度どのくらいの確率で南海トラフ巨大地震が起きる?

南海トラフ巨大地震はもともと、30年以内に70~80%の確率で起きると考えられています。

8日に日向灘で地震が起きたことで、その確率は数倍上がったと考えられるのですが、今後はこの「数倍上がった」状態から、もともとの「30年以内に70~80%」の状態へと徐々に戻っていく見通しです。
「徐々に」というのがどのくらいのスピードなのかは、現代の科学ではわかりません。

結局、今後どうすべき?

再確認すべき備え(気象庁HPを元に作成)。
再確認すべき備え(気象庁HPを元に作成)。

今回の臨時情報はもともと、「日頃の備えを再確認して」という呼びかけでした。
「"再"確認」ですから、要するに「日頃から確認している」ことが前提なのです。

前述のように、地震の確率が急に下がることはありませんし、最大限下がっても「30年以内に70~80%」より下がることはありません。

さらには、そもそも南海トラフと関係ない地震も、いつどこで起きるかわかりません。

今回、避難経路や備蓄品を「再確認」した人も、「再確認」した内容が古くなってしまうこと(地域の避難所が変更されたり、家族構成が変わったり、非常食の消費期限が切れたり)がありますので、今後も定期的に確認しましょう。

ちなみに…「臨時情報」は南海トラフ以外にもある!!

今回、南海トラフ地震臨時情報が初めて出されたことによって、この情報の知名度はかなり上がったと思います。
しかし、実は「臨時情報」というのは南海トラフ以外にも存在するのです。

北海道・三陸沖後発地震注意情報の概要(気象庁HPを元に作成)。
北海道・三陸沖後発地震注意情報の概要(気象庁HPを元に作成)。

北海道~関東にかけての巨大地震に注意・警戒を呼びかけるための情報「北海道・三陸沖後発地震注意情報」が、2022年から運用されています。

これは北海道沖の「千島海溝」と三陸沖の「日本海溝」で繰り返し起きる巨大地震について、想定される震源域やその周辺でマグニチュード7クラスの地震が発生した場合に、その後の巨大地震が起きる可能性が普段よりも相対的に高まっていると注意を呼びかけるもの。

内容としては、今回の南海トラフ地震「巨大地震注意」と同じように、1週間程度は、備えを再確認しつつすぐに避難できるようしながら通常の生活をすることを呼びかけます。対象は、北海道~千葉県の太平洋側を中心とした自治体です。

今回、南海トラフ地震の臨時情報の対象自治体ではなかった地域の人も、いま一度情報の意味を確認して、次に情報が出たときに慌てなくていいようにしておきましょう。

※筆者のプロフィールからフォロー(リンク先の「+」のボタン)していただくと、地震や台風の防災情報や日々の天気、またテレビではなかなか話せない気象予報の裏側を書いた記事を逃さず読むことができます。

気象予報士・防災士・野菜ソムリエ

気象予報士・防災士として講演・執筆を行う傍ら、野菜ソムリエ・食育インストラクター・薬膳マイスターとして出張料理人(一般家庭での作り置き代行)としても活動。NHK・民放各局で気象キャスターを歴任し、報道の現場や防災、気候変動・地球温暖化に関する最新情報にも詳しい。著書に『天気予報活用ハンドブック~四季から読み解く気象災害』(竹下愛実名義・共著)がある。

植松愛実の最近の記事