鉄道の近未来はどう変わる? 新車・ホームドア・立体交差 設備投資計画が出始める 熱心な東武
毎年、この時期になると鉄道各社が設備投資計画を発表する。すでに一部のJRや私鉄で発表が行われており、その内容でこの先どんなことが鉄道で起こるのかが見えてくる。
正直、要約すると「新車」「ホームドア」「立体交差」である。近年の鉄道の設備投資はこのあたりに集中しており、ことしもこの傾向に変わりはない。
では、項目別にどんなものがあるかを見てみたい。
新車はどこまで期待できるのか?
JR東日本には、期待の新車2種類が登場する。まずは長年、多くの中央線ユーザーが待望している中央快速線などへのグリーン車導入に向け、車両の新造を進める。中央快速線のグリーン車は、半導体不足などの影響で導入がのびのびになっており、ようやく1編成にグリーン車を連結して試運転をしている状態である。いつになったら全編成にグリーン車が連結されるかわからないが、少しずつ進めている状態である。
続いて新幹線の新車だ。山形新幹線に新車・E8系を2024年春(2023年度の3月)に導入するのに向けて、車両を増備していく。この車両は営業最高速度300km/hとし、320km/hの「はやぶさ」「こまち」に影響しないようにする。
JR北海道では737系電車を投入し、またH100形電気式気動車も追加、ローカル輸送の改善に力を入れる。
東武鉄道では7月に新型特急「スペーシアX」2編成の運行を開始し、2024年度の導入に向けて、新たに2編成の車両製作を進める。日光・鬼怒川エリアの観光輸送に力を入れる予定だ。
相模鉄道では、21000系を2編成追加投入、目黒線直通列車に使用する。
名古屋鉄道では、通勤型車両9500系・9100系を18両新造する。
新車ではないが、小田急電鉄では3000形6両・3編成をリニューアルする。各車両に車いす・ベビーカースペースを設ける、制御装置の省エネルギー化やオイルフリーコンプレッサーへの更新で、環境にさらに配慮する。
安全対策として重視されるホームドア
近年では、安全対策としてのホームドアに各事業者は力を入れている。
JR東日本では、京浜東北線大宮駅、中央総武緩行線東中野駅、南武線登戸駅、横浜線八王子駅などに整備する。
東京メトロでは、日比谷線、東西線および半蔵門線への設置工事を推進する。
相模鉄道では、2022年度までに18駅にホームドアの設置が完了している。2023年度は、いずみ中央、ゆめが丘、星川、天王町、西横浜、平沼橋、上星川、和田町の8駅への設置を予定し、海老名駅を除く全駅での設置が完了する。これで、相模鉄道は「選ばれる沿線」として設備の向上を果たすことが可能になる。
ホームドアに力を入れているのは小田急だ。2032年度までに新宿~本厚木間全駅、中央林間、大和、藤沢にホームドアの設置を予定している(すでに設置駅もあり)小田急電鉄では、2023年度に町田駅の全ホームと本厚木駅3・4番ホームにホームドアを設置する。特急車両に対応した大開口のホームドアだ。
東武鉄道では東武アーバンパークラインの新柏、鎌ケ谷、馬込沢で固定式ホーム柵を設置、東武スカイツリーラインの五反野、谷塚、草加(3・4番線)、新田で可動式ホーム柵を設置する。
立体交差での踏切解消は重要な安全対策
踏切をなくそう、というのは鉄道業界では長年取り組んでいる。ここに力を入れているのは東武鉄道だ。とうきょうスカイツリー駅付近では下り線高架橋工事を推進して1か所踏切が廃止(事業完了後)、春日部駅付近では上り仮線工事を推進し10か所の踏切が廃止(事業完了後)となる。竹ノ塚駅付近の高架化は事業完了をめざして引き上げ線の高架橋工事などを行う。東武東上線の大山駅付近は工事着手に向けた準備を進める。これらは長期的な計画の中で取り組まれていることであり、東武鉄道の設備投資計画に記載されている事項である。
相模鉄道では、鶴ヶ峰駅付近での連続立体交差事業に前年度に引き続き取り組む。
名古屋鉄道でも、4か所での高架化工事を推進している。
興味深い設備投資は?
それぞれの会社独自の取り組みもある。
JR東日本では「センターサーバー方式」を採用した新しいSuicaシステムを導入する。
ワンマン運転は東京メトロが拡大を検討、東武大師線では添乗員つき自動運転に向けた前方障害物検知システム・地上センサの検証を行うとともに車両の設計業務を実施する。
このあたりの設備投資で、鉄道の近未来が見えると考えてもいいだろう。