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「寂しい」「早く切りたい」“断髪式待ち” 豪栄道、栃煌山、嘉風が語る髷への思い

飯塚さきスポーツライター/相撲ライター
元関脇・嘉風の中村親方(筆者撮影)

新型コロナウイルスの影響により、引退しても断髪式ができない親方が多く、先月引退したばかりの元横綱・白鵬(間垣親方)を含め、現在実に13人もの親方衆が“断髪式待ち”をしている。しかし、昨今状況が好転しつつあることにより、ようやく開催の目途が立ち始めた。

今回は、来年の断髪式開催を控える武隈親方(元大関・豪栄道)、清見潟親方(元関脇・栃煌山)、中村親方(元関脇・嘉風)の3名に、断髪式についてお話を伺った。

「名残惜しくはないが、当日こみ上げてくるかも」~武隈親方~

断髪式の開催順に紹介していこう。まずは、来年1月29日(土)に予定している、元大関・豪栄道の武隈親方。引退後、断髪式は丸1年延期となっていた。

元大関・豪栄道の武隈親方(筆者撮影)
元大関・豪栄道の武隈親方(筆者撮影)

「人と接する機会が極端に減ったので、準備段階でできることも限られていました。ただ、10月の緊急事態宣言解除で多くの方にお会いして回れたので、状況はすごく明るくなってきたなと思います。いろんな方に協力いただいて形になってきているので、周囲に感謝したいです」

髷については「早く切りたい。名残惜しくもない」ときっぱり言い切る武隈親方。なぜか。

「引退したらすぐ、半年から1年未満で断髪式をするのが普通なのに、僕はもう2年。だからもう、早く切りたい気持ちのほうが強いんです」

ただ、いざそのときを迎えたら「もしかしたら当日、いろんな思いがこみ上げて来るかもわからないですね。いまこんなに名残惜しくないって言っているのにね」と笑う。

会場に貼られていた武隈親方断髪式のポスター(筆者撮影)
会場に貼られていた武隈親方断髪式のポスター(筆者撮影)

恒例の質問ではあるが、髷を落としたらどんな髪型にしたいのだろうか。

「短くして、オールバックにするかな」

元大関の最後の晴れ舞台。チケットは12月4日から販売開始する。

「開催できるうれしさと不安と寂しさが混じる」~清見潟親方~

武隈親方の翌日、1月30日(日)に断髪式を行うのは、元関脇・栃煌山の清見潟親方。現役時代から30キロほど痩せたという親方は、「やっとできるなという気持ちと、ちゃんと成功できるかなという不安と、髷への寂しさが入り混じっています」と、率直な心境を語る。

元関脇・栃煌山の清見潟親方(筆者撮影)
元関脇・栃煌山の清見潟親方(筆者撮影)

「師匠をはじめ部屋の方々、後援会の皆さまからアドバイスをいただきながら準備を進めていて、いい勉強をさせていただいています。いままでやったことのなかった事務作業も、徐々にですが慣れてきました。やりがいがあります」

真面目な清見潟親方らしいコメント。どうしても会場に来られないファンの方に対しても、応援してもらっただけで本当にありがたいと、感謝の意をにじませる。

九州場所の会場に自らポスターを貼る清見潟親方(本人提供)
九州場所の会場に自らポスターを貼る清見潟親方(本人提供)

そして、こちらにも恒例の質問を。髪型は決まっていますか。

「いえ、まったく…いままで、大銀杏とちょんまげと坊主とスポーツ刈りしかしたことがないので(笑)。かなりくせ毛なので、それがあまり目立たないような短髪がいいかなと、奥さんと相談しながら決めたいです」

「引退するときが一番つらかった」~中村親方~

お二人のさらに1週間後、2月5日(土)に予定しているのは、最後にご登場いただく元関脇・嘉風の中村親方。こちらは「そもそも相撲を辞めたくなかったので、相撲が取れないのであれば早く髷を切りたいという思いもありますし、寂しい気持ちもあります」と、引退に際する思いを吐露する。引退するときが一番つらかったが、いざ断髪式をするとなると、また寂しさが募るという。突発的なケガによる引退は、何度聞いても胸の痛む話だ。

しかし、いまは前を向いている中村親方。実は、母・兄・弟が全員美容師である。断髪後の髪型に関しては、プロである家族からの助言もあり、かなりこだわりがありそうだ。

「自分は乾燥肌なので、スキンフェードという横を刈り上げた髪型がいいかなと。ストリートファイターⅡに出てくるガイルっていう米軍みたいな感じです。そうするとフケもあまり出ないし、体型的にも似合うんじゃないかって言われました」

整髪後のお披露目も楽しみな断髪式。3名とも、コロナ禍で行う断髪式に向けて、できる限りの準備を尽くしている。

髷を落とした後も、大相撲の発展に尽力していく親方たち。その最後の晴れ姿を見に、ファンの皆さんも国技館に足を運んではいかがだろうか。

各断髪式の開催日時やチケット情報など

豪栄道引退相撲事務局(12月4日チケット販売開始)

栃煌山引退相撲事務局(チケット発売中)

嘉風引退相撲事務局(12月上旬チケット販売開始)

スポーツライター/相撲ライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライター・相撲ライターとして『相撲』(同社)、『Number Web』(文藝春秋)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書に『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』。

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