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BTS(防弾少年団)の「Mステ」出演中止を韓国はどう見ているのか

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
今やグローバルな人気を誇るBTS(写真:Shutterstock/アフロ)

韓国はもちろん、日本やアメリカなど世界中で人気を集めるK-POPボーイズグループBTS(防弾少年団)。

11月9日の20時からテレビ朝日系で放送される『ミュージックステーション』への出演を予定していたが、放送前日の昨日8日に出演が急きょ中止となり、関心を集めている。

BTSは、以前にメンバーのJIMIN(ジミン)が着用していた原爆投下の写真がプリントされたTシャツのデザインがネット上で物議を醸していた。

『ミュージックステーション』公式ホームページは、「番組としてその着用の意図をお尋ねするなど、所属レコード会社と協議を進めてまいりましたが、当社として総合的に判断した結果」と、出演を見送った経緯を説明しているが、突然の出演キャンセルはBTSの母国である韓国でも波紋を広げている。

「BTS、日本の音楽番組の出演取り消し…嫌韓の標的?」(通信社『NEWSIS』)

「BTS、日本の“Mステ”出演突然取り消し」(経済紙『毎日経済』)

「韓日関係が悪化するなか…BTS、日本の音楽番組の出演が突然取り消し」(一般紙『韓国日報』)

など、韓国メディアで数多く取り上げられている。

BTSは、さまざまなスキャンダルやサクセスストーリーと関連付けられてきた韓国歌謡界の“曲名運命論”も適用されるなど、母国でも絶大な人気を集めるグループ。それだけに、今回の騒動にはファンもメディアも驚きを隠せない様子だ。

過去にもあったK-POPアイドルの政治的騒動

特にJIMINが着用したTシャツに言及するメディアが多い。

「JIMINのTシャツに非難→日本の番組“BTS出演キャンセル”」(『ソウル新聞』)

「BTS、日本の“Mステ”出演突然のキャンセル…JIMINのTシャツを問題視して」(『ヘラルドPOP』)

「“日本の番組出演見送り通報”BTS、JIMINのTシャツがどうした」(『TVリポート』)などで、韓国では「何が問題なのだ」と伝えるメディアが多い印象だ。

「光復節Tシャツを着たら反日?…BTSの日本の番組出演が突然キャンセルされ騒動に」と題したテレビ局SBS系列のケーブルテレビ局『SBS fun E』発のニュース記事は、「問題となっているTシャツは、光復節を記念したTシャツだ」と報じていた。

“光復節”とは、日本の終戦記念日にあたる1945年8月15日を指す言葉。韓国では日本の植民地支配からの解放を記念する祝日にもなっており、韓国の人々の愛国心が最高潮に高まる記念日でもある。

それだけに反動も大きく、過去にはガールズグループ少女時代メンバーのティファニーが、光復節当日に自身のスナップチャットに旭日旗模様のスタンプ入りの写真を投稿して大炎上したこともあったほどだ。

(参考記事:人気ガールズグループにも親日派のレッテルが… 実は旭日旗にオープンすぎる韓国アイドルたち

JIMINが今回着用したTシャツは、そんな光復節を記念したものだそうで、Tシャツには愛国心(PATRIOTISM)、我々の歴史(OURHISTORY)、 解放(LIBERATION)、韓国(KOREA)などの言葉がプリントされていた。

そのため、『mydaily』によれば「ネット上には“韓国人が韓国の光復節Tシャツを着て何が悪い”“BTSが誇らしい”など応援する声が大多数」を占めているという。

ただ、一部にはTシャツ着用は軽率だったという声もあった。気になって知人の韓国記者に意見を尋ねてみると、「前日に中止するテレビ朝日の判断もオーバー気味だが、BTSももう少し慎重になるべきだったかも」と前置きしたあとで、こんなことを言っていた。

「今はネットを介して瞬く間にその動向が配信される時代。ましてBTSは世界中にファンを持つ。国が違えば価値観も歴史観も異なる。韓国では良いメッセージであっても、他国では刺激的だったり受け入れられないこともあるだろう。そういったことに配慮することも必要だったのではないか」

これまでも多くのK-POPアイドルたちが何気なく歌った歌が反日的だと指摘されたり、逆に親日だとされて波紋を呼んできたが、そこに政治的な意図や思惑がなくとも、受け止める側にも気を配るべきだということだ。

(参考記事:韓国アイドルが替え歌で「反日」行為!? K-POP界の政治意識のレベルとは)

コラボ中止の秋元康氏は韓国で“右翼判定”…

いずれにしても、今回の騒動は韓国でも大きく取り上げられている。

「(『ミュージックステーション』の)出演が見送られたことで、韓国では、BTSを反日グループのように扱う日本の極右団体を非難する声や、BTSが嫌韓の標的にならないかと心配する声が上がっている」(『SBS fun E』)という。

それだけに気になるのは、BTSの今後の日本活動への影響だろう。

BTSは、今月13日からワールドツアーの一環として日本での4大ドーム公演がスタート。年末の紅白歌合戦への出場の可能性も囁かれていた。

まさに人気絶頂を迎えているわけだが、そんななかで今回の出演キャンセルが波紋を広げ、日本でのイメージダウンにつながらないか懸念される。

最近は、BTSとのコラボが中止となった秋元康氏が韓国のネット上で“右翼判定”されバッシングを浴びたこともあったが、今回の騒動も余波が続かないか心配だ。

(参考記事:BTSと秋元康コラボ中止騒動に違和感。韓国で“右翼判定”されてしまう日本の芸能人たち

韓国メディアは、「BTSは11月7日に日本で発売した9枚目のシングル『FAKE LOVE/Airplane pt.2』がオリコンデイリーシングルランキング1位はもちろん、自己最高となるオリコンポイントも獲得した。日本で牽制を受けても、BTSの人気には問題がない」(『スポーツソウル』)と予想しているが、はたして……。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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