火星から来た隕石「故郷」のクレーターを発見
2022年7月12日、オーストラリアのカーティン大学の研究チームは、2011年に発見された火星由来の隕石の「故郷」にあたる火星のクレーターを突き止めたと発表した。論文は7月12日に科学雑誌『ネイチャー・コミュニケーションズ』誌のオンライン版に掲載された。
'Early crustal processes revealed by the ejection site of the oldest martian meteorite'
2011年に北アフリカのモロッコで発見された約320グラムの「ブラックビューティ隕石(NWA 7034)」は、火山の噴火によって異なる組成を持つ玄武岩が組み合わさった角礫岩と呼ばれる隕石だ。「SNC隕石」という他の火星由来の隕石とは異なり、水を豊富に含んでいることなどから、発見後にブラックビューティ隕石が代表となった新たなグループに分類された。
ブラックビューティ隕石は火星の地殻を反映した物質だと考えられている。含まれている岩石の中には、44.8億年前とこれまで見つかった中で最も古い火星の物質が含まれており、火星の最初期の環境を明らかにすると期待されていた。
カーティン大学のチームは、これまで火星探査機が観測した高解像度の表面画像を分析し、地質学的な特徴が一致するクレーターは火星の南半球に位置する直径10キロメートルの「Karratha(カラサ)」クレーターだと突き止めた。2021年12月に命名されたカラサの名は、地球最古の化石が発見されたオーストラリア北西部のピルバラ市の地名に由来する。カラサクレーターはより大きな「ダンピア」クレーターの内側にあり、近くにはNASAのバイキング探査機が撮影した「バートン」クレーターがある。
惑星の表面の特徴と隕石とを一致させることに成功したことで、火星だけでなく月や水星の研究にも応用できる可能性があるといい、隕石による惑星の歴史の解明に貢献すると期待される。