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新生「GAG」が噛みしめる今と見据える今後

中西正男芸能記者
「GAG」のSJさん、福井俊太郎さん、安田ファニーさん

 今年3月、メンバーのヒロユキMc-Ⅱさんが脱退したお笑いトリオ「GAG」。6月に新メンバーの安田ファニーさん(40)を迎え、福井俊太郎さん(44)、SJさん(41)とのトリオで再出発しています。2017年から20年まで4年連続で「キングオブコント」決勝に進出するなど抜群の結果を残してきましたが、新体制になっての本格ライブを12月に開催するなど新たな一歩を踏み出しています。大きな転機で感じた芸人の神髄。そして、チャレンジを続ける中で噛みしめた思いとは。

「メジャーリーグからのオファー」

安田:メンバーとして入らせてもらって今で4カ月ほど経ちました。今、痛感しているのは「こんなにもコントって難しいのか」ということです。

コンビ「コマンダンテ」として漫才しかやってこなかったので、知らないことばかりで。「コントって、こんなすごい技術を駆使して皆さんやってらっしゃるんだ…」ということをひしひしと体感しているところです。

あと、純粋に二人から三人になったということでも、いろいろ感じることがあります。例えば、誰かがセリフをしゃべっている時の待ち方とかも目からうろこです。

コンビの時はもちろん二人なので、相手がしゃべっている時には相手の話を聞く。相槌を打つ。常に、そんな役割があるんですけど、三人だと自分以外の二人がやり取りをしていると、自分はそこに直接は関わらない。その時にどう待つのか。その難しさも感じています。

40年生きてきて、恥ずかしながら気が付いてなかったんですけど、僕は何もしていないと体がフラフラ揺れるクセがあるようで(笑)。それが“待ち”の時間に発動していると。そうなると、それが邪魔をしてコントの世界観を崩してしまう。繊細さを痛感しています。

SJ:今の話だと、すごくハイレベルというかプロとしての細かい技術論みたいに思えるかもしれませんけど、そういうレベルのことではなく、誰が見ても本当にグラグラに揺れているので(笑)、シンプルに「そこを直してください」ということだったんです。

福井:野球で言うと、ミリ単位の細かいフォーム修正とかではなく「まずバットを持ってくれ」みたいなところです(笑)。

SJ:ただ、本当のところ、一人抜けて二人体制になってそこに入ってくれた。芸歴で言うと、僕ら(SJ、福井)より2期下なんですけど、トリオとしてやっていきたかったことを助けてくれている。本当の話、そのありがたさがベースとしてあります。

安田:僕としては本当にまさかという感覚でした。コンビを解散して、ピン芸人として何も分からないまま活動しているところに、いきなりお声がけいただいたので。少年野球の子どもがいきなりメジャーリーグからオファーをもらったみたいな(笑)。

「答えは急いで出さなくてもいい。そして、どんな答えでも関係性は変わらない」と言ってもらったんですけど、僕が答えない限りお二人の歩みを止めてしまう。なので、二日間そのことだけを考えて、やらせてもらうという答えを出しました。

本当に面白い方々から誘ってもらって、まずはうれしい。もちろん、それと同時に看板の重みがあるし、責任もある迷いはあったんですけど、飛び込むことにしたんです。

コントで食べていくために

SJ:この半年ほどで二人になり、また三人になりました。その報告をお世話になっている方々にさせてもらうことによって、この世界の芯の部分を確認させてもらった。そんな思いも味わいました。

昔からお世話になっている「とろサーモン」久保田さんとか「かまいたち」濱家さん、「千鳥」大悟さん、そして「FUJIWARA」藤本さんにお伝えしても、皆さん答えは同じでした。「良かったやん。頑張れよ」しかおっしゃらないんです。

反対されることもなければ、何かダメ出しや注意をされることもない。この世界は自分が考えたことを自分がやるだけ。それを再認識したきっかけにもなりました。

福井:二人になった時にはコンビのネタを考えていたんですけど、SJさんから見たら「トリオがやりたい」という思いが僕から漏れ出していたと(笑)。実際、トリオがやりたいと思っていましたしね。ただ、もし誰かを入れるとなると、僕らの色も分かっていて、楽しくできることが必須。そうなったら安田しかいない。そして、来てくれた。本当に感謝ですし、この三人で結果を出す。それをやるだけだと思っています。

基本的に、コントで食べていきたい。コントで面白いと思ってもらいたい。それがベースにあるので、まずは「キングオブコント」優勝。それをある種の“チケット”として、引き続きコントをやっていく。それが今考えている理想の形です。

SJ:ただね、ファニーさん、根っからの“あかんたれ”、意気地なしでもあるんです(笑)。

福井:先日もTBSの大きな番組でコントをすることがあって、安田が最初に「ショートコント」と大きな声を出すところから始まるんです。

さすがにここで言葉を噛むとキツイので「そこだけは嚙まないようにお願い」と頼んだんですけど、慣れないコントだし、生放送だし、大きな番組だし、相当緊張していたみたいで。

本番では「絶対に噛んだらアカン」ということに気をとられすぎたのか、言葉はなん噛まずに言えたんですけど、大きく手を挙げて「ショートコント!」と言わないといけないところ、手が縮こまってしまって、お腹のところまでしか手が挙がってなくて…。学校の廊下で友達がすれ違う時の挨拶くらいしか挙がってなかったです(笑)。

安田:…まさに、今勉強しているところですから(笑)。

福井:もう20年近く芸人をやっているんですけど、まだピチピチのあかんたれですからね。逆に言うと、普通芸人ならすぐになおるところが今もなおらず残っている。それも魅力なのかな。

ま、ただ、40歳の腹は出ているのに手足は細いオッサンのあかんたれですからね。なかなかかわいげを感じてもらうのも難しいかもしれません(笑)。

(撮影・中西正男)

■GAG(じーえーじー)

1980年8月18日生まれで兵庫県出身の福井俊太郎、83年6月7日生まれで広島県出身のSJ(本名・坂本純一)、ヒロユキMc-Ⅱ(ヒロユキマークツー、本名・宮戸洋行)が2006年にトリオ「GAG少年楽団」を結成。3人ともNSC大阪校27期生。15年にABCお笑いグランプリ優勝。17年から20年まで4年連続で「キングオブコント」で決勝に進出する。18年に「GAG」に改名。今年3月でヒロユキMc-Ⅱが脱退。お笑いコンビ「コマンダンテ」として活動しコンビ解散後はピン芸人となった安田ファニー(83年10月25日生まれ、大阪府出身、本名・安田邦祐)が6月から新メンバーとして加入した。吉本興業所属。新体制となって初の本格的なライブ「蕎麦屋のミニ丼を侮るな」を12月28日、29日を東京・ユーロライブで開催する。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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