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学校で市販問題集を丸ごとコピーすると著作権法上どう扱われるか

栗原潔弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

留学生向け予備校、本を丸ごと複製出版社が損賠請求へ」というニュースがありました。

中国人留学生に大学・大学院入試などの指導をする大手予備校が、95万9千ページに及ぶ複製(被害額は300万円以上と推計)をしていたようです。「講師がメールで依頼すると、事務担当者がハードディスクに保管してある電子データを印刷し生徒に配布」ということなので組織的でかなり悪質と言えましょう。

ところで、上記記事中に以下の記載があります。

著作権法は、学校の授業や私的利用では著作権者に許可なくコピーすることを認めているが、同学園のような営利目的の予備校は「学校」には該当しない。

この記載自体は間違っていないのですが、学校ならば何でも著作権者に許可なくコピーできるのかと誤解する人もでてきそうなので、ここで追加説明しておきます。著作権法上の関連条文は以下です。

第35条第1項 学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く。)において教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業の過程における使用に供することを目的とする場合には、必要と認められる限度において、公表された著作物を複製することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びにその複製の部数及び態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

ここでのポイントは、「必要と認められる限度」でなければならず「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」はコピーできないということです。具体的に何が「不当」なのか法文上は明記されていませんが、日本書籍出版協会がガイドラインを出しています。その中に例として「児童・生徒・学生が授業を受けるに際し、購入または借り受けて利用することを想定しているもの(記録媒体は問わない)を購入等に代えてコピーすること」が著作権者の利益を不当に害するとされており、さらにその具体例として「参考書、問題集、ドリル、ワークブック、資料集、テストペ ーパー、白地図、教材として使われる楽譜」が挙がっています。

本ガイドラインには法的拘束力があるわけではないですが、仮に裁判になれば社会通念としてそれなりに尊重されると思われます。グレーゾーンはありますが、少なくとも問題集丸ごとコピーは、たとえ、学校法人であっても完全ブラック(許諾がなければ著作権侵害)となるでしょう。

なお、これは「複製権」の話であり、「演奏権」が問題になっているJASRAC対音楽教室の話とは直接的には関係ありませんので念のため。

弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

日本IBM ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事 『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 スタートアップ企業や個人発明家の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています お仕事のお問い合わせ・ご依頼は http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から 【お知らせ】YouTube「弁理士栗原潔の知財情報チャンネル」で知財の入門情報発信中です

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