「切迫早産」ってどんな病気?いま知っておくべき知識とケア
20代になると、周りに妊娠した人がいて
たびたび「切迫早産」というワードを
よく聞きますが、実際どんな状態か分かりますか?
この記事では、「切迫早産」の原因、
予防できるのか、
そして治療と妊婦のケアについて
最新の周産期医療専門誌の最新文献をもとに
お話していきます。
①早産ってそもそもなに?
早産とは…
正期産(妊娠37週0日~妊娠41週6日)までの
出産のことです。
一言でいうと、
予定より赤ちゃんが早く生まれてきてしまうこと
を指します。
もう少し詳しくいうと
22週0日~36週6日までの出産を「早産」
22週未満の出産を「流産」といいます。
早く生まれた赤ちゃんほど生存率は低くなり、
生まれたあとにも
重篤な障害が出現が高くなります。
早産は全妊娠の5~6%といわれ、
妊娠し、安全に元気な子供を生むことが
当たり前ではないことが統計的にも分かります。
早産の原因は
感染や体質によるものが多く、
生活習慣に関わるものも上げられますが、
原因が分からないことも多いのが実際です。
②切迫早産ってなに?
切迫早産とは、
「早産になる危険性が高い」状態のこと
「生まれていい週数ではないのに
赤ちゃんが出てきちゃいそう」
という、早産の一歩手前の状態をいいます。
症状としては
子宮収縮が規則的かつ頻回に起きたり、
子宮の出口が開く、
出血や破水などが起こります。
③切迫早産になる原因は?
切迫早産の原因は
感染症によるものが多いと言われていますが、
これは妊娠により抵抗力が下がることも
関係しており、また
個人の切迫早産が起こる仕組みはまだ不明なことも多く、
予防できない場合も多くあります。
④切迫早産の治療法は?
「産婦人科診療ガイドライン」には
⑴子宮収縮抑制薬の投与などを開始する(推奨レベルB)
⑵必要に応じて高次医療施設への母体搬送(推奨レベルB)
⑶胎児の脳保護を目的とし硫酸マグネシウムの投与
(推奨レベルC)
という内容が書かれていると同時に、
子宮収縮抑制薬を投与する場合には
副作用などに注意し症状が軽快したら
減量・中止を検討する(推奨レベルC)と
記載されています。
しかし、ここで正確に理解しなければいけないことは
「推奨レベルが最高の
A(強く勧められる)である項目がない」
ということ。つまり、
明確な母子の管理法は確立されておらず
切迫早産の治療は現代において非常に難しく、
専門家や医師でも、
予後を予想できない状態なんです。
⑤切迫早産でつらいのはどんなこと?
切迫早産の程度が軽い場合は
外来通院で経過を見ることも
ありますが、重度の場合は妊娠し
長期間の子宮収縮薬の投与と
絶対安静を指示されます。
「ただ寝てればいいから楽」と
捉える方もいますが、
入院患者様を担当する私かれすれば
とんでもない誤解です。
まず、治療法が確立されていない以上、
明日どうなるか分からない不安な状態が
何日も何日もつづきます。
また、薬物投与には必ず副作用が伴い、
合併症にも注意が必要です。
安静により深部静脈血栓症のリスクが高まり、
同時に筋力低下やうつ症状の
発症リスクも高まります。
状態によっては
トイレも行かせてもらえず、おむつで
排泄することになります。
仕事も家事もできず、
長い24時間をベッド上で過ごし
背中や肩も痛くなり、筋力が衰え疲れやすくなります。
「赤ちゃんは無事なのか」
「なんでこんなことになったのか」
「私のせいなのか」
そんな想いを抱え、気力も日に日に
衰えていきます。
今はまだコロナの影響でで面会制限もあり
余計に人との関わりが減り妊婦さんは
孤独になりやすい状態です。
⑥周囲はなにができる?
まずは、
妊婦さんが置かれている状況を理解すること。
そして
「ご飯は食べられているか」
「痛いところはないか」
「夜眠れているか」
「どんなことが今つらいか」と
会話の中で「いつもと違う・なにかおかしい」に
周囲が気づいてあげることが大切です。
病院で関わるスタッフは
何人もの患者様を対応し
一人に長い時間関わることができません。
そのため、「いつも」を知っている周囲の人が
異変に気付き医療者に相談することが
有害事象を早期に発見するきっかけになります。
そして、可能であれば本人の許可を得て
手でも背中でも良いので
触ってさすってあげてください。
入院というイレギュラーな状態で身体は
常に緊張状態にあります。人の体温や感触は
筋肉の緊張を和らげる効果があります。
お話を聞きながら、触れてリラックスできる
時間をつくれたらいいのではないかと思います。
また、近年では長期入院中の妊婦に対して、
可能な範囲でリハビリテーション介入を
積極的に実施する医療施設が
増えています。私自身も、
医師・助産師・理学療法士が
密に連携をとることで、
妊婦の安全を守りながら
深部静脈血栓症の発生や筋力・体力低下を予防する
仕組みをつくることは可能だと考えています。
ただ、
入院中にリハビリテーション介入が
実施されているのは
統計上0.25%とまだまだ認知度は低い状態です。
今後少しずつでも、それが可能な施設が増えて
いくことができたらいいなと思います。
今回の記事は、切迫早産について説明しました。
周りにつらそうな人が居るとき、ただ寄り添って
あげることがなにより大切ですが、
つらさを理解したいと、知識をつけて
そばに居てくれること、その姿勢が
とても強い心の支えになることがあります。
思いやりの言葉につもりが、
無知ゆえに下手に傷つけてしまった
ということにならないように
今日の記事が皆様にとって
誰かを支えるためのあたたかい手の
一助になれば幸いです。
理学療法士 ケイシー