日本で一番きれいな虫その④=ご近所の宝石虫、アカスジキンカメムシ
カメムシと言えば「悪臭」。ともかく臭いので、嫌われる。しかし、そんな嫌われ者のカメムシの中にも、はっと息をのむ美貌を誇る集団がある。それはキンカメムシの仲間だ。南西諸島まで行けば、南国風のナナホシキンカメムシがいるし、本州でもニシキキンカメムシというすさまじくきれいなカメムシがいる。しかし、ニシキキンカメムシは生息域が極めて限られている珍しい虫なので、都市近郊で簡単に見つけられるというわけにはいかない。
「なーんだ、家の近くの公園にはいないんだ」と諦めるのはまだ早い。実は、都心の公園にも結構多いキンカメムシの仲間がいるのだ。それはアカスジキンカメムシ。
アカスジキンカメムシは、キンカメムシの仲間に共通する輝きに加えて、歌舞伎役者の隈取(くまどり)のような、赤い柄模様を持っている。この模様は、他のキンカメムシには見られない独特のもので、異彩を放っている。
アカスジキンカメムシは、昆虫記者の日常生活圏でも皇居周辺、代々木公園、葛西臨海公園などに多く生息している。家から5分のさして大きくない駅前の公園でもたまに見かけるほどの普通種でありながら、この美しさはすごい。
アカスジキンカメムシは「どの木にもいる」と言いたいほど、さまざまな木にいるが、発見の確率が高いのは、ゴンズイ、シンジュ、キブシ、ミズキ、エノキなどだ。低木が多いゴンズイの赤い果実で食事中のアカスジキンカメムシは、特に見つけやすい。
若齢の幼虫も美しく、冬に集団越冬が見られる終齢幼虫の「大笑いしているような背中の模様」も可愛いので、アカスジキンカメムシはご近所でほぼ1年中楽しめる虫だ。
カメムシの仲間はセミと同じ半翅目なので、成虫の背中を覆う固い甲羅がないのが普通だが、キンカメムシの仲間だけは、固い甲羅に覆われていて、まるで甲虫のように見える。この甲羅は甲虫の場合のような上翅ではなく、意外なある部分が巨大に発達したもの。そんな秘密を調べてみるのも面白い。(写真は特記しない限りすべて筆者撮影)