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金メダル獲得に向けて進んでいた世代交代

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
金メダルを獲得したアメリカ女子チーム(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

 1996年のアトランタ、2004年のアテネ、2008年北京、2012年のロンドン、そしてパリと、5度の五輪優勝を誇るアメリカ女子サッカー代表チーム。

写真:森田直樹/アフロスポーツ

 今大会直前、最大のスターだった、アレックス・モーガンがメンバーから漏れた。モーガンは、最盛期にスポンサーとの契約料と合わせて年間300万ドルもの高収入を得ており、長く女子サッカー界の象徴だった。

アレックス・モーガン
アレックス・モーガン写真:ロイター/アフロ

 今年5月、ロンドン大会以来の金を目指すアメリカ女子代表は、チェルシーで辣腕を振るっていたロンドン生まれの47歳、エマ・ヘイズを監督に抜擢した。ヘイズはパリに挑む18名を発表した際、こうコメントした。

 「17日間で多くの試合をこなすには、適応できるメンバーが必要です。複数のポジションをこなせる選手がメンバーにいることで、チームに厚みが出ます。FWの選手たちは良いパフォーマンスをしています。熟考した結果、彼女たちを選びました」

エマ・ヘイズ
エマ・ヘイズ写真:森田直樹/アフロスポーツ

 ヘイズは、モーガンを外すという決断を下した。とはいえ、モーガンを慮ることも忘れていなかった。

 「まず、アレックス・モーガンがいかに素晴らしい選手、そして人間であったかについてお話ししたいと思います」と、選手リスト発表後の記者会見で述べた。

 「私はモーガンと仕事をする機会が、前回のキャンプ一度しかありませんでしたが、彼女の人としての資質だけでなく、プロ意識も尊敬します。モーガンの記録がすべてを物語っていますよね。

 決断するのは簡単ではありませんでした。18人の選手のうち、フィールドプレーヤーは16人、ゴールキーパーは2人です。彼女の記録とチームでの経歴を考えると、特に難しい決断でした。ただ、私は別の方向に進みたいと思い、他の選手を選びました」

(写真:ロイター/アフロ)
(写真:ロイター/アフロ)

 モーガンは2011年のワールドカップ以来、すべての主要大会で米国女子代表チームのメンバーに名を連ねていた。しかし、35歳になったモーガンもこのところ故障が多く、足首のケガでNWSLシーズンのスタートから1か月間欠場。星条旗を背負って出場した2月23日のアルゼンチン戦でゴールしたものの、米国女子代表チームでのゴールは1年ぶりだった。

写真:ロイター/アフロ

 パリで金メダルを獲得した米国女子チームの平均年齢は26.8歳。2008年にVを成し遂げたチーム以来、最も若いオリンピックメンバーだった。

 「若い選手たちに、経験を積ませるという育成が不足している。トップレベルとその他の選手の間には大きな差がある。そのギャップを埋める必要がある。次のステップに進むために、舵を切らねばならない」とヘイズは語った。

新たなエースとして期待されるトリニティ・ロドマン
新たなエースとして期待されるトリニティ・ロドマン写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 アメリカ女子代表の金メダルは、世代交代が上手く運んだ証でもあったのだ。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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