「この50年で最大級」炭素質コンドライト隕石をコスタリカで発見
2019年4月、コスタリカの上空で火球が目撃され、隕石となって落下した。調査した米アリゾナ州立大学の研究者は、隕石が稀な種類の「炭素質コンドライト」であることを確認。水や有機物を含み、小惑星リュウグウやベンヌと同様の物質でできた貴重な炭素質コンドライト隕石は、同大学に寄贈された。
火球が目撃されたのは2019年4月23日の午後9時ごろ。コスタリカの町アグアス・サルカスでのことだった。隕石の元の大きさは洗濯機ほどだったとみられ、大気圏でバラバラになって落下しいくつかは民家を直撃した。中には、900グラムほどの隕石がダイニングルームで見つかったものもあるという。そのうちの一つは奇しくも「Rocky(ロッキー)」と名付けられた犬の小屋に穴を開けた。
隕石収集家のマイケル・ファーマー氏はコスタリカに赴き、アグアス・サルカスで隕石の調査にあたった。雨に濡れると割れてしまうおそれがあるため、収集が急がれたという。幸い、現地では5日間ほど雨がふらず、25キログラム近い隕石が収集された。
隕石の一部はアリゾナ州立大学に寄贈され、同大学で隕石を研究するローレンス・ガーヴィー教授が初期分析を行った。ガーヴィー教授は「80~90パーセントが粘土でできた炭素質コンドライト隕石である」と結論づけた。炭素質コンドライト隕石は、日本の小惑星探査機はやぶさ2が探査中の小惑星リュウグウ、アリゾナ州立大学の探査機オサイリス・レックスのターゲットである小惑星ベンヌなどと同じ水や有機物を含む物質でできている。地球で発見される隕石の約4パーセントと少なく、地球などの惑星が水を持つ起源を解明する手がかりとなる貴重なサンプルだ。
現在、サンプルは窒素を封入した容器で保管され、今後は国際隕石学会の承認を経て分類される予定だ。
これまで炭素質コンドライトの研究で重要なサンプルとなってきたのが、1969年にオーストラリアのマーチソンで発見された約100キログラムの「マーチソン隕石」だ。マーチソン隕石は、炭素質コンドライトの研究で脅威となる地球上の有機物による汚染がほぼない状態で適切に保管されている。今回アグアス・サルカスで発見された隕石は、マーチソン隕石に続く「この50年間で最大級」の発見だという。
発見からすぐに隕石を保護したアリゾナ州立大学は、日本の小惑星探査機はやぶさが持ち帰った小惑星イトカワのサンプルから水の痕跡を発見するなど、小天体の研究では名高い研究機関だ。まさに現在、小惑星からのサンプルリターンを実施するASUの研究者にとって、今回の隕石は4月のクリスマスプレゼントのようなもので、研究の進展が期待される。