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日韓の「歩み寄り」は期待できるか? 韓国の「輸入禁止」と日本の「輸出規制」の同時解除の可能性は!?

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
菅義偉総理と文在寅大統領(筆者キャプチャー)

 日韓の間には様々な対立、確執、懸案が横たわっているが、貿易面では韓国は日本の輸出規制を、日本は逆に韓国の輸入規制に反発し、互いにその解除を強く求めている

(参考資料:「2020年 日韓10大ニュース」今年も「最悪の関係」に変化なし!)

 韓国政府は2019年7月に日本政府が発動したフッ化水素など半導体原材料の輸出規制(厳格化措置)の解除を執拗に求めているが、日本もまた、東京五輪を誘致した年の2013年9月から韓国政府が福島原発汚染水流出を理由に福島を含む周辺の県に対して取っている農水産物の輸入禁止解除を再三求めている。

 韓国が日本から水揚げ、加工された水産物の輸入を禁じたのは福島と隣接している茨城・群馬・宮城・岩手・栃木・千葉・青森の8県。この中には海に面してもいない、当然漁港もない、これまで韓国に一度たりとも水産物を輸出したこともなかった内陸の群馬や栃木まで輸入禁止リストに載せていた。群馬に至っては韓国とはほとんど無縁で、その証拠に韓国と姉妹都市を結んでいる市は一つもなかった

(参考資料:韓国に水産物を輸出したことのない県までも「輸入禁止指定」とは!)

 韓国の輸入禁止発表が2020年夏季五輪開催地決定2日前だったことから日本国内では「こんな時に決定を公表しなくても良いではないか」とか「東京五輪潰しではないか」との反発の声も上がったが、韓国政府は放射能汚染水流出に関する迅速な情報提供を再三求めたにもかかわらず、日本政府がそれを無視してきたための止むを得ぬ措置であったと説明していた。

 その後、日本は日本と海が面している韓国の輸入禁止措置を撤回させることができれば、ドミノ的に他の国々の輸入禁止、規制の壁を崩すことができると判断し、2015年に韓国だけをWTO(世界貿易機構)に提訴し、その結果、2018年2月の1審(紛争解決機構パネル)で訴えが認められた。しかし、2019年4月の2審(WTO上訴委員会)で逆転敗訴となり、8県は依然として韓国への水産物の輸出が許可されていない。

 一方、韓国も3品目の半導体素材の韓国向け輸出管理厳格化措置が解除されないことに苛立ち、昨年6月にWTOに提訴し、その結果、韓国が要請した紛争処理小委員会(パネル)の設置は確定されたもののコロナ禍にあってまだまともな審議ができず、進捗していない。WTOに委ねてもいつまでも埒が明かない状態は日本と同様である

(参考資料:「輸出規制を解除するのか」 韓国が日本に迫った回答期限は明日!)

 福島第1原発事故直後には54カ国・地域が日本の被災地で生産された食品の輸入を禁じていたが、2019年の時点で23か国まで減少し、今なお規制を維持しているのは韓国を含め香港、中国、台湾など15カ国だけとなっている。

 日本政府は4日に在韓日本大使館を通じて韓国メディアを対象に日本産食品の安全性などを伝えるオンライン説明会を開催していた。

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興を担う平沢勝栄復興相はリモートで出席し「今でも福島県を含む一部地域の農水産物の輸入停止、制限措置を取っている国があるのは遺憾である」と述べ、「韓国の輸出規制は偏見に起因している」として輸入禁止措置解除を要請していた。

 平沢復興相は偏見の具体例として宮城県の養殖ホヤを上げ、過去10年間、基準値以上の放射性物質が検出されてないのに生産量の70~80%に当たる韓国への輸出は現在ゼロであるとして「科学的根拠のない差別と偏見は互いに避けるべきである」と述べ、輸入再開を求めていた。

 韓国の世論が原発処理水の海への放流に反発していることや最近、福島県沖でクロソイから基準超の放射性物質が検出されたことから韓国の輸入禁止解除は容易ではない。また韓国が依然として元徴用工問題で日本が納得するような解決策を示していないため日本の対抗措置としての輸出厳格化の解除も簡単ではない。

 日韓双方とも「解禁」は簡単ではないが、日韓共に日米韓3か国協力関係を重視しているバイデン政権から関係修復を強く迫られていることを考えると、関係修復への一歩として、また元慰安婦や元徴用工問題など「過去」絡みの問題を解決する上で共に歓迎できる貿易問題での歩み寄りがその環境整備になると政府が受け止めていれば、政治決断による「解禁」も決して不可能ではない。

 昨年11月には韓国も日本と共に「地域的な包括的経済連携(RCEP)」に署名している。RCEPは人口規模、貿易規模、名目国内総生産でも全世界の3分の1を占める世界最大のFTA(自由貿易協定)である。日韓共にRCEPに加わったことで事実上、日韓の間にも間接的ながらFTAが結ばれたことになる。

 「政治決断」で日本の対韓輸出厳格化措置と韓国の水産物輸入禁止措置を同時解除となれば、東京五輪開催決定の年に掛けられた韓国の輸入禁止措置が東京五輪開催の年に解除されることになる

(参考資料:未解決の「日韓紛争」ランキング「ワースト10」)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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