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ウクライナ軍、小型ドローンでロシア軍が茂みに隠した火薬庫に爆弾投下で大爆発

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。また民生用ドローンも監視・偵察のために両軍によって多く使用されている。

ウクライナ軍ではここ数か月間くらい、小型の民生品ドローンやウクライナ軍が開発した攻撃ドローン「R18」などから爆弾を投下して地上のロシア軍の戦車などを攻撃して破壊している。ドローンで撮影した動画もよく公開している。

2022年12月にウクライナ軍は茂みにロシア軍が隠した火薬庫を検知して、上空から小型民生品ドローンで爆弾を投下して火薬庫が爆発した。その様子の動画を英国メディアのザ・サンが報じていた。ドローンでの映像ではロシア兵は近くにはいなかったようでロシア兵の被害は見られなかった。

ウクライナ軍も国内外のメディアでも火薬庫に爆弾を投下したと伝えている。だが、火薬庫はこのように爆弾を投下されたりミサイルの攻撃を受けると火薬の量によっては大爆発して大惨事になる。そのため、このように標的にされやすいような場所では火薬は保管しないことが多い。ロシア軍が茂みで目立たないから大丈夫と思っていたのか、火薬をしっかりと保管できるような攻撃されにくい目立たない場所が塹壕の中にもうなかったのかどうかは不明。

▼【刺激的な映像のため閲覧注意】

茂みの中にあるロシア軍の火薬庫にウクライナ軍がドローンで爆弾投下(英国メディア、ザ・サン)

ウクライナ紛争ではドローンによる上空からの攻撃をウクライナ軍、ロシア軍ともに頻繁に行っている。そしてドローンの多くは迎撃されて破壊されてしまうか、機能停止させられてしまっている。ドローンが上空を飛んでいたらバリバリと大きな音がしてドローンの存在に気付くのでアンチドローンの迎撃システムがあれば機能を停止させたり、撃墜することもできる。

上空のドローンを迎撃するのは、電波を妨害(ジャミング)してドローンの機能を停止させるいわゆる"ソフトキル(soft kill)"と、対空機関砲のように上空のドローンを爆破させる、いわゆる"ハードキル(hard kill)"がある。それぞれに迎撃システムがある。

今回のドローンによる爆弾投下でロシア兵の被害は報じられていない。動画からもロシア兵は近くにはいなかったようだ。上空のドローンに気がついて既に逃げていたのか、その場にいなかったのかは明らかにされていない。火薬庫の火薬の量がどの程度あったのかは不明だ。だが、小型ドローンでの爆弾だから少量ではあるが、火薬庫に引火したら大爆発する。そのため、爆弾を搭載したドローンの存在に気がついていたら避難していて正解である。

爆弾を搭載した小型ドローンはソフトキルで機能停止させて落下してきたら爆発してしまう恐れがあるので、ハードキルで上空で破壊しておきたいところだ。だがドローンの迎撃に失敗して爆弾を投下されたら、火薬庫が爆発して大惨事に巻き込まれていたかもしれない。

特に小型の民生品ドローンに爆弾を搭載しただけの攻撃ドローンはシンプルな「作り」で、上空で標的を見つけたらすぐに爆弾を投下できる。そのためハードキルで破壊される前に爆弾投下をすることが可能。また、安価な民生品をベースに改造しているだけなので、代替機のドローンがたくさんあるので、何度でもその場所に攻撃にやってくる。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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