【千駄木】屋根裏部屋でのんびり寛ぐ「パリにある和カフェ」がコンセプトの古民家喫茶
カフェライターなかくき くみこが実際に足を運んだ1,500軒以上のカフェのなかから、大人の皆さんが心から満足できるような素敵なカフェを紹介する連載「大人のための東京カフェ案内」。第6回目は、雨の日にこそ訪れたいビンテージモダンな古民家カフェを紹介します。
パリの街角に佇む和カフェをイメージした、シックで落ち着く空間
千駄木駅から徒歩4分、細い路地に佇む古民家カフェ「雨音茶寮」。10代を海外で過ごした店主が、築70年以上の長屋をリノベーションした一軒家カフェです。
「パリにある和カフェ」をコンセプトにしており、店内は和と洋、古さと新しさが融合したビンテージモダンな趣。
一階奥にある細い階段を上ると、二階はまるで屋根裏部屋のような造りに。天井がやや低めで、心落ち着く空間です。
テーブルはすべて角のない形のものをオーダーで製作。そこには「丸い気持ちで寛いでほしい」という、店主 那須野さんの思いが込められています。
店名「雨音茶寮」の由来は、那須野さんが幼い頃、夜に布団の中で聞く雨の音が好きだったことから。
残念ながら新しい建物ではほとんど雨の音を聞くことはできませんが、「雨音茶寮」では今も雨の日は「ポツポツポツ……」という音が楽しめるのだそうです。
全国から取り寄せる季節の和菓子と、水見色の日本茶
ここを訪れたらぜひ楽しみたいのは、日替わりの和菓子とお茶うけがセットになった「本日の和菓子」(500〜900円)。
静岡で和菓子店を営む家庭で育った那須野さんは、幼い頃から和菓子や日本茶に深く親しんでいました。そういった家庭環境の影響もあり、那須野さんは今も大の和菓子好きで、気になる和菓子を見つけると日本各地から取り寄せているのだそうです。
「雨音茶寮」では、そんな那須野さん一押しの和菓子を、常時2〜3種類用意しています。この日提供されていた「きなこのおはぎ」は、舌触りのよいこしあんが包まれた上品な味わい。
日本茶は、静岡県水見色(みずみいろ)地域で栽培される本山茶(ほんやまちゃ)を使用。本山茶は静岡茶の始まりのお茶といわれており、徳川家康公も愛飲していたのだとか。水見色に広がる美しい里山の風景は、那須野さん自身のお気に入りでもあります。
同店では、「やぶきた」や「つゆひかり」「大井早生」「深蒸し」(すべて700円)の4種類を用意。もし迷ったら「つゆひかり」を選んでみて。急須からふわ〜っと立ち上るふくよかな香りや、しっかりとした旨味と甘みが、心の中まで染みていくようです。
玄米あられと差し湯が添えられているので、2煎めは差し湯だけを、3煎めは玄米あられを加えてから差し湯をどうぞ。玄米あられを入れると、それまで飲み口とはガラリと違った風味や香りが楽しめます。
同店では、様々なおかずが一度に楽しめる「雨音ごはん」(1,500円、ドリンクセットは+350円)も人気。お肉を使ったメインのおかずに、旬の野菜をたっぷり使用した小鉢が4つと、出汁茶漬けがセットになっています。
この日のメインである「きのこと豚肉の当座煮」は、柔らかく煮込まれた豚肉の味つけがいい塩梅。肉厚に切られた「なすの南蛮漬け」は酢と生姜が効いており、食欲が減退しがちな夏にピッタリ。野菜たっぷりでヘルシーなのに、栄養満点の和定食です。
空間を思い通りにプロデュース、カフェ開業で叶えた夢
幼少期を静岡で過ごした那須野さんですが、中学・高校はイギリスの伝統ある寄宿制の学校で過ごしました。広大な敷地の中には築200年を超えるお城のような建物もあり、それはまるでハリーポッターの世界のようだったそう。
イギリスで古いものを大切にしながらもモダンなものを上手に取り入れる文化に触れたことで、年代を感じる建物やアンティーク、デザイン性の高いものに興味を持つように。休日は友達と古いコテージが立ち並ぶ田舎町を巡ったりしていたそうです。
大学進学のタイミングで日本に帰国した那須野さんですが、受験時はイギリスに残りアート系の大学に進学するか迷ったそう。結果的に好きだった語学が学べる日本の大学に進みましたが、建築やインテリア、アートへの興味が消えることはありませんでした。
社会に出てからは持ち前の対人折衝力や語学力を活かし、ホテル業界や映画関連の会社などでキャリアを積みます。14年間身をおいたホテル業界では、大手ホテルのコンシェルジュやエグゼクティブフロアの責任者を任せられるなど充実した日々を送りましたが、その一方でやりたいことを全部やりきってしまったという感覚も……。
そこで5年前、まったく未経験だったカフェオーナーに転身。その時の心情について、「何か新しいことを始めるとしたら、体力的にもラストチャンスだと思いました。若い時は挑戦できませんでしたが、最終的に自分の一番やりたいことに戻った感覚です」と教えてくれました。
那須野さんがお店を経営していて一番うれしいのは、お客さんから「この空間に癒されました」「居心地がよかった」「ここに住みたい」などの声を聞く時なのだそうです。
感性を磨くために長年大切にしてきたこと
2018年に開いた「雨音茶寮」のほか、同じ谷根千エリアに日用雑貨のセレクトショップ「糸雨雑貨店」、昨年8月には神奈川県平塚市にカフェ&ギャラリー「茶室雨ト音」をオープンした那須野さん。イギリス生活をきっかけに古い建物やアンティークに興味を持った那須野さんですが、センスを磨くために意識してきたこととはなんでしょうか。
「美意識を刺激するような、いいものに数多く触れることじゃないでしょうか」。普段から雑貨やビンテージ家具など良さそうなものを見つけると実際に作品に触れるため足を運んだり、大好きな映画をたくさん観たりしているそうですが、国内外のデザインホテルを訪れることも好きで、年に数回は様々な国や地域を旅しているのだとか。
今後も自分の心が惹かれる魅力的な物件があれば、色々とチャレンジしていきたいと語る那須野さん。年代ものの建物を自分の思うようにスタイリングしたホテルを創るのも、夢の一つだそうです。
一年のうち梅雨の時期により一層魅力を増すカフェ、「雨音茶寮」。おいしい和菓子や日本茶をお供に、ほっと癒される時間を過ごしてみませんか。
【店舗情報】
店名/雨音茶寮
住所/東京都文京区千駄木2-44-19
電話/03-6876-8402
公式サイト/https://www.amanesaryo.com(外部リンク)
アクセス/東京メトロ千代田線 千駄木駅より徒歩4分
定休日/火、水曜
営業時間/11時〜19時(L.O.18時)
※新型コロナウイルス感染症対策により店舗の休業や営業時間の変更など、掲載内容と異なる場合があります。訪問される前に最新情報をご確認されることをおすすめします。
本連載では、今後も大人の皆さんにおすすめの魅力的なカフェを紹介していきます。ご興味のある方はぜひプロフィールからフォローをして頂けるとうれしいです。日々のカフェ巡りはインスタグラム(外部リンク)やツイッター(外部リンク)に投稿しています。
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