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新入社員へのマタハラ事例、若くて弱い立場なため中絶強要も

小酒部さやか株式会社 natural rights 代表取締役
(写真:アフロ)

4月に入社した新入社員も1ヶ月を迎え、そろそろ職場にも慣れて来る頃だろう。

先日、入社1ヶ月での妊娠が物議を醸した。

参考記事:自民党議員のマタハラ疑惑、雇用側に同情の声が多数。どこからがマタハラか、ボーダーを議論していこう

上述は中途社員の妊娠ケースだが、新入社員が妊娠するという可能性も勿論ある。仕事も覚えないうちから休業に入られるということで、会社からの理解は得られづらく、マタハラされる可能性も高い

以下に新卒社員が受けたマタハラ事例をご紹介する。

新卒で入った会社で、早々に妊娠しました。

自分の中では妊娠イコール出産で、堕ろすなんて選択肢は一切ありませんでした。

「一年も働いていないので申し訳ない」と思いながら、上司に産休の相談に行きました。

女性上司2人に打ち明けた所、

「入社早々、何を言っているんだ!」と注意され、

「会社説明会やら入社試験で多方面から人選してベストと思ってあなたを入れたのに。来年からは試験に貞操観念の項目も加えなきゃならないわ」と嫌味を言われました。

ほかにも、

「新入社員募集の広告に1000万円払って、結果コレか!!」

「堕ろさないなら退職してもらう」と言われ、

女性課長からは

「私も中絶した経験があるが、10数えている間に麻酔効いて終わってるから!」とも言われました。

毎日、産む堕ろす、産む堕ろすと悩み続け、そのうち悪阻が始まり嘔吐を繰り返しました。

「2週間で結論出せ」と女性上司言われ、

毎日悩みましたが、

「新入社員募集の広告に1000万円」というのが重くのしかかり、悩み抜いた末に、堕ろすことにしました。

堕ろす当日まで、

「まだ間に合う」「今なら間に合う」と、もう一人の自分が叫んでいましたが、会社の重圧には勝てませんでした。

自分も若気の至りで、予期せず妊娠してしまったという負い目があったので、会社にはただただ謝罪するしかありませんでした。

中絶手術は興奮し過ぎて麻酔が全く効かず、看護師3人に取り押さえられた状態で行われました。

意識があったので、手術の様子を見ることになり、取り出された胎児の塊(かたまり)も見ることになり、自分で手術台を降りることになりました。

手術台を降りた後、あまりの痛さに四つん這いでのたうち回り、床に嘔吐してしまいました。

未だにこの時の恐怖がトラウマで、力が抜けません。

そして、未だに中絶したことを後悔しています。

この事例は「昔のことですが…」と教えてもらった内容だ。その後、この会社は倒産している。

ご本人は、自分にも非があったので、相手をマタハラだと責め切れないとおっしゃっていた。

けれど、20代前半の新入社員に、中絶か退職かを迫るのは、あまりに酷いと思ってしまう。

入社してすぐの妊娠に対する会社の対応は難しいが、このような悲しい事例をきっかけに考えてもらえたらと思う。

株式会社 natural rights 代表取締役

2014年7月自身の経験から被害者支援団体であるNPO法人マタハラNetを設立し、マタハラ防止の義務化を牽引。2015年3月女性の地位向上への貢献をたたえるアメリカ国務省「国際勇気ある女性賞」を日本人で初受賞。2015年6月「ACCJウィメン・イン・ビジネス・サミット」にて安倍首相・ケネディ大使とともに登壇。2016年1月筑摩書房より「マタハラ問題」、11月花伝社より「ずっと働ける会社~マタハラなんて起きない先進企業はここがちがう!~」を出版。現在、株式会社natural rights代表取締役。仕事と生活の両立がnatural rightsとなるよう講演や企業研修、執筆など活動を行っている。

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