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「お腹いっぱいにさせてあげられなくてごめん…」母乳育児に苦しむ母親たちの現実

ねんねママ(和氣春花)乳幼児育児アドバイザー

産む前は「出なかったらミルクでいけばいい」と気楽に考えていましたが、実際に出が悪くて母乳があげられないとなったら産後のメンタル不調も重なってすごく病んでしまいました…

これは、実際に悩んでいた新米ママの言葉です。

赤ちゃんが産まれたら母乳で育てたい、と妊娠中に思った人の割合は9割を超えることが厚生労働省の調査でわかっています。

妊娠中には「母乳で育てたい」「母乳がでるなら母乳で育てたい」と思っていたとしても、実際には母乳がほとんど出ない人もいます。

母乳育児かミルク育児かは母親にとってはセンシティブな問題。産院でも母乳育児を推奨する指導がされ、母子手帳や粉ミルクの缶にもできるだけ母乳が推奨である旨の記載がされています。

母乳が赤ちゃんのために良いとはわかっているのに、母乳が出ない…そう考えると、産後のホルモンバランスの崩れも相まって「自分はダメな母親だ」と思ってしまう人も少なくありません。

夫や母など周りの人の言葉に傷つくこともあるようで、YouTubeチャンネル『ねんねママのもっとラクする子育て情報局』の母乳とミルクに関するいくつかの動画にはこんなコメントも寄せられました。

・今3ヶ月の子を育てています。母(60代後半)や夫に母乳の方が良い!母乳で育てないと‥!と、母乳母乳言われすぎて若干洗脳されかかってました
・まだ2ヶ月ですが、もう断乳したいの、「あともう少しあげたい!」の間で毎日ゆらいでます.....
・2人目を出産して10日程経ちますが、数日前にミルクを飲ませている様子を見たおじいちゃんに「母乳じゃないんか?出ないんか?」と聞かれて、ブチ切れそうになってました
・産む前は「出なかったらミルクでいけばいい」と気楽に考えていましたが、実際に出が悪くて母乳があげられないとなったら産後のメンタル不調も重なってすごく病んでしまいました…
・断乳の日「お腹いっぱいにさせてあげられなくてごめん」と泣いたのを覚えています。他にも義母に人前での授乳を強要されたり、乳頭保護器を馬鹿にされたりと母乳にいい思い出はありませんでしたが、この動画で救われました。

母乳が最も良いということは誰もが知るところではありますが、一方で母乳が出ない・満足にあげられないということに悩んで追い詰められてしまう母親を産んでしまうのも事実。

『ねんねママのもっとラクする子育て情報局』の動画「【助産師が伝える】母乳を諦めきれない!と悩む方へのメッセージ【混合育児 / 完母】」にて、インスタでも活動する助産師kanaさんからはこう伝えられています。

『一滴でも飲ませれば、それは母乳育児です。たとえ一滴しか飲ませられなかったとしても、一度しか授乳をしなかったとしても、それは母乳をあげたと思って良いです』

母乳ティースプーン1杯には300万個の免疫細胞が含まれているという説もあり、ほんの少しでも母乳をあげたならそれを十分誇って良いのです。

つい「半年くらいは授乳したい」「できれば完全母乳にしたい」と頑張り過ぎてしまいがちですが、分泌が追いつかないことやD-MARという授乳中に不快感が出る現象が起きてしまうこともあります。

赤ちゃんを連れて街を歩いていると「母乳?」と不意に声をかけられることもありますが、それぞれの事情でうまく飲ませられずにミルクを使う事情があることを周囲がもっと理解していきたいところです。

インターネットが普及した現代の子育ては複雑化していて、「こうしなければいけない」「これはダメ」という情報に溢れて母親たちは追い込まれてしまいがちです。

私自身、ねんねママとして赤ちゃんがどうしたらよく眠ってくれるかという情報を専門家として発信していますが、その情報を「ネントレ(ねんねトレーニング)しなくてはいけない」「早くセルフねんねさせなくては」「抱っこや授乳で寝かせては癖がつくからいけない」と受け取られてしまうことも少なくありません。

実際はそんなことはなく、ねんねトレーニングは一つの選択肢。赤ちゃんが泣いて泣いて夜も眠れなくて疲れ切ってしまうなら、泣かせて練習するという選択肢もありますよ、ということなのです(できるだけ泣かせない方法もあります)。

注意して「ねんねトレーニングは必須ではない」「早く始めなければいけないものではない」ということは伝えているようにしているのですが、どうしても情報を受け取って焦ってしまう方も多く、難しいところでもあります。

産後のメンタルは育児のプレッシャーや社会からの隔離、ホルモンバランスの乱れもあって乱高下しがちです。接触した情報を極端に捉えてしまいかねないときに必要な周りのサポートは「こうすると良いらしいよ」ではなく、「そこまでしなくても良いらしい」という声がけかもしれません。

世界一大切な我が子のために…と頑張り過ぎてしまうことで、結果的に母親の笑顔を奪ってしまうなら、それは赤ちゃんにとっても悲しいことですよね。ラクをしてもよい、笑っていられるほど健康ならそれが最高!そんなふうな明るい前向きな認識が広まることを望んでいます。

以下、本文中に紹介した動画以外で、コメントを引用した母乳とミルクに関する動画。

乳幼児育児アドバイザー

乳幼児育児アドバイザー。小児スリープコンサルタント。0-3歳モンテッソーリ教師。株式会社mominess代表。YouTube「ねんねママのもっとラクする子育て情報局」やInstagramなどで乳幼児の育児に関する発信を続け、2024年現在、SNSの総フォロワーは18万人超。運営する「寝かしつけ強化クラス」では月間200問以上の睡眠に関する質問回答を行っている。著書に『すぐ寝る、よく寝る 赤ちゃんの本』『〇✕ですぐわかる!ねんねのお悩み消えちゃう本』がある。

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