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井上尚弥が圧倒的優位!それでもドヘニーが番狂わせを起こすなら、これしかない─。『9・3有明アリーナ』

近藤隆夫スポーツジャーナリスト
決戦13日前に練習をメディアに公開した井上尚弥(写真:日刊スポーツ/アフロ)

賭けが成立しない状況に

「周囲の(井上圧倒的優位との)雰囲気はよくわかっている。判定決着は許されない。流れをしっかりと掴み(KOで)仕留めるのがベスト。油断はない」

8月21日に所属ジムで公開練習を行った井上尚弥(大橋)は、集まった多くの報道陣の前で、そう話した。

9月3日、東京・有明アリーナでの4団体(WBA、WBC、IBF、WBO)世界スーパーバンタム級タイトルマッチ、王者・井上尚弥vs.挑戦者トレンス・ジョン・ドヘニー(アイルランド)が目前に迫っている。

この試合の大方の予想は「井上尚弥、圧倒的優位」。

米国のスポーツブックのオッズは「15-1」「20-1」であり、賭けが成立していない状況にある。

仕方ないだろう。この試合で「ドヘニーが勝つ」と予想するボクシング関係者は皆無に等しい。ここまで27戦全勝(24KO)の戦績を誇り、すでに4階級を制覇、うち2階級で4団体世界王座統一、PFP(パウンド・フォー・パウンド)の上位に名を連ねるモンスターは特別な存在なのだ。

ドヘニーが弱いわけではない。相手がIBF、WBOのトップランカーであるサム・グッドマン(オーストラリア)、元WBA&IBF世界スーパーバンタム級王者のムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)であったとしてもスポーツブックのオッズは大して変わらなかったであろう。

開始直後の3分間を見逃すな

井上優位の予想は、私も同じだ。おそらくは前半ラウンドでのKO勝利だろう。総合的に見て両者の実力には大きな開きがある。

だが、ドヘニーが勝つ可能性もゼロではない。僅かだが勝機はある。

これはドヘニーに限ったことではなく、井上よりも実力で劣る挑戦者に共通して言えることだが、番狂わせを起こすためのやり方は一つ。王者がリズムを刻む前、つまりは自らのパンチを見切られる前に、一撃を見舞うしかないのだ。

8月23日に来日し翌24日に大橋ジムで公開練習を行ったドヘニー。その様子を凝視する井上真吾トレーナー(右)と大橋秀行会長。「絶好調だ!」と37歳の挑戦者は口にしていた(写真:日刊スポーツ/アフロ)
8月23日に来日し翌24日に大橋ジムで公開練習を行ったドヘニー。その様子を凝視する井上真吾トレーナー(右)と大橋秀行会長。「絶好調だ!」と37歳の挑戦者は口にしていた(写真:日刊スポーツ/アフロ)

そのことはドヘニーもわかっている。

だから8月24日に公開練習を行った際に、こう言った。

「今回の闘いは早い段階での決着になる」

王者にリズムを刻まれた後には勝機がない。12ラウンドを闘うスタミナなど度外視して、開始早々にイチかバチかの勝負をかけるつもりでいる。変則モーションで井上に近づきドンピシャの距離感で独自の角度から一撃を打ち込もうとする。

見所は第1ラウンド。

そこでドヘニーが一撃を見舞えるか否かが、この試合のすべてである。

1ラウンド終了のゴングが打ち鳴らされたなら、そこでジ・エンド。立ち上がりにミスを犯さず2ラウンドに突入したなら、以降にモンスターに隙が生じるとは思えない。

勝負は何が起こっても不思議ではない。開始ゴングが打ち鳴らされてからの3分間を見逃すな!

スポーツジャーナリスト

1967年1月26日生まれ、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から『週刊ゴング』誌の記者となり、その後『ゴング格闘技』編集長を務める。タイ、インドなどアジア諸国を放浪、米国生活を経てスポーツジャーナリストに。プロスポーツから学校体育の現場まで幅広く取材・執筆活動を展開、テレビ、ラジオのコメンテーターも務める。『グレイシー一族の真実』(文藝春秋)、『プロレスが死んだ日。』(集英社インターナショナル)、『情熱のサイドスロー~小林繁物語~』(竹書房)、『柔道の父、体育の父  嘉納治五郎』(ともに汐文社)ほか著書多数。仕事のご依頼、お問い合わせは、takao2869@gmail.comまで。

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