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井上尚弥の「2025年の闘い」はこうなる!米国、サウジアラビア─。注目の中谷潤人戦は再来年実現へ

近藤隆夫スポーツジャーナリスト
2025年は海外での試合が続く可能性が高い井上尚弥(写真:藤村ノゾミ)

試合延期の知らせを聞いた井上は… 

「井上尚弥最強劇場・クリスマスイヴ決戦」は、対戦相手サム・グッドマン(オーストラリア)の負傷により消滅。4団体(WBA、WBC、IBF、WBO)統一世界スーパーバンタム級タイトルマッチ、井上尚弥(王者/大橋)vs.グッドマンをメインに据えるイベントは1月24日(東京・有明アリーナ)に延期になった。

 まさかの事態にも王者は泰然と構えた。延期の知らせを聞いた時、こう言ったそうだ。

「そうですか。(代役が誰でも)全然、大丈夫です。1カ月後ですか、ちょうどいい練習期間になります」

 選手は、いざリングに上がれば闘うのみ。減量、準備期間のトレーニングに辛さを味わう。ここまで節制を重ねてきたのだから予定通りに試合をしたい。ショックは大きかったはずで普通なら「え~っ!」となる。

 そこを「これも含めてプロボクシング」と動じない辺りは、さすが百戦錬磨の王者だ。

 グッドマンはIBF&WBOのトップランカーで18戦無敗の戦績を誇る強豪だが、大方の予想は「井上、圧倒的優位」。さらにこのたびの挑戦者の負傷で、その度合いはさらに高まった。私も王者・井上が6ラウンドまでに倒し切ると見ている。アップセットが生じるとは思えない。

アフマダリエフとピカソ

 そうなると気になるのは井上の「2025年の闘い」。

 どうやら来年、井上が日本のリングに上がるのは1月のグッドマン戦のみになりそうだ。予定されているのは3試合で、2試合は海外でおこなわれることになる。

 4月か5月に米国(ラスベガスが有力)。秋にサウジアラビア。

 これが既定路線だ。

 対戦相手は、二人に絞られよう。

 まずはムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)。

 12月14日(現地時間)、モナコ・モンテカルロでアフマダリエフはリカルド・エスピノサ(メキシコ)を3ラウンドTKOで下し、WBA世界スーパーバンタム級暫定王者に就いた。

 WBA正規王者である井上が定期的に防衛戦を行っているのに暫定王者決定戦が行われるのもおかしな話だが、アフマダリエフに挑戦機会が巡って来ないことで取られた措置だろう。

「イノウエは自分を恐れて闘うのを避けている。武士道を尊重し侍の心を持つなら彼は切腹すべきだ」

 アフマダリエフは激しい言葉で井上を挑発。WBAも早期の「井上vs.アフマダリエフ」実現を求めている。

戦績13勝(10KO)1敗、WBA世界スーパーバンタム級暫定王者のムロジョン・アフマダリエフ(写真:AP/アフロ)
戦績13勝(10KO)1敗、WBA世界スーパーバンタム級暫定王者のムロジョン・アフマダリエフ(写真:AP/アフロ)

 

 もう一人は、WBCのトップランカーであるアラン・ピカソ(メキシコ)。

 12月15日(現地時間)、メキシコ・ティファナのリングに上がったピカソはジェイソン・クエニョ(メキシコ)から3ラウンドTKO勝ちを収めている。これでピカソの戦績は31勝(17KO)1分け。気鋭の24歳は無敗を保っている。

 もちろんグッドマンの挑戦を退けることが条件だが、井上が春に米国でピカソ、秋にサウジアラビアでアフマダリエフの挑戦を受ける可能性が高い。

メキシコの新鋭、アラン・ピカソ(右)。戦績31勝(17KO)1分けを誇るWBC世界スーパーバンタム級トップランカーだ(写真:AFP/アフロ)
メキシコの新鋭、アラン・ピカソ(右)。戦績31勝(17KO)1分けを誇るWBC世界スーパーバンタム級トップランカーだ(写真:AFP/アフロ)

「井上尚弥vs.中谷潤人」実現は必至

 では、ファン待望のドリームファイトはどうなるのか?

 すでに3階級を制覇、現WBC世界バンタム級王者・中谷潤人(T.M)との対峙である。

どうやら来年中の実現はなさそう。大橋ジムの大橋秀行が、そう明言している。

 井上の対戦スケジュールはすでに埋まっているし、中谷にも階級を上げるには準備期間も必要。ならば実現は2026年前半、舞台は東京ドームか。

「(井上戦は)意識していますが、まだ先のこと。そこに至るためにも決まった試合をしっかりと勝っていきたい」

 中谷は相手を派手に挑発し、そこで注目を集めようとはしない。リング上での闘いで魅せるタイプ、ここは井上と同じだ。

 近年、煽り合うことで試合を盛り上げようとする風潮があるが、一流同士の闘いにそれは不要。「珠玉の闘い」とは、そういうものだろう。

 現時点では実力で井上が上位だが、試合が再来年に設定されるならどうなるか分からない。パウンド・フォー・パウンド世界トップ10に名を連ねる中谷の成長は著しく、それは今後さらに見込めるからだ。

 中谷の次戦は今週中に発表される。そこで魅せる闘いで勝利すれば、さらに井上戦に近づく。ドリームファイトは是非、観たい。待ち遠しい。

スポーツジャーナリスト

1967年1月26日生まれ、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から『週刊ゴング』誌の記者となり、その後『ゴング格闘技』編集長を務める。タイ、インドなどアジア諸国を放浪、米国生活を経てスポーツジャーナリストに。プロスポーツから学校体育の現場まで幅広く取材・執筆活動を展開、テレビ、ラジオのコメンテーターも務める。『グレイシー一族の真実』(文藝春秋)、『プロレスが死んだ日。』(集英社インターナショナル)、『情熱のサイドスロー~小林繁物語~』(竹書房)、『柔道の父、体育の父  嘉納治五郎』(ともに汐文社)ほか著書多数。仕事のご依頼、お問い合わせは、takao2869@gmail.comまで。

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