感染症対策の有識者会議「誤情報の常時監視」を含む行動計画改定案を了承 近く閣議決定へ
コロナ禍の対応を踏まえ、今後の感染症対策に関する政府行動計画改定案を検討していた新型インフルエンザ等対策推進会議が6月17日に開かれ、感染症対策の名のもとに平時から「偽・誤情報」のモニタリング(監視)を行う方針などを盛り込んだ改定案を了承した。岸田内閣は与党との調整を経て、近く閣議決定を行う見通し。
改定案の原案は4月24日公表され、パブリック・コメント(意見募集)では14日間で19万件超の意見が寄せられた。
6月3日の推進会議で委員に配布されていたパブコメの概要資料は非公開となっていたが、きょう48ページの未定稿資料として公表された。
資料によると、偽・誤情報対策について反対または慎重意見が多く寄せられたことを踏まえ、「表現の自由に十分に配慮」という文言が加えられた(改定案39ページ)。ただ、「事実関係として明らかに誤っている情報の拡散により、国民等への影響が大きい状況にないかなど、偽・誤情報を含め幅広く状況を把握する必要があり、モニタリングはその一環として行う」として、平時からの監視を実施する方針は維持した。削除要請を含めて恣意的な運用が懸念されるとの指摘も出ていたが、「SNS等のプラットフォーム事業者が行う取組に対して必要な要請や協力等を行う」という文言はそのまま残された。
パブコメでは、政府の情報発信にも誤情報が含まれていたのではないかという指摘もあった。これに対しては「不確実性をはらむ『作動中の科学』という側面を国民等にお伝えしつつ、その旨十分留意したリスクコミュニケーションに努めることが重要」と述べるにとどまり、政府の情報発信について検証する方策などに言及はなかった。
新型コロナの起源・原因については自然発生説と研究所漏洩説があり、日本政府は今も「調査は終わっていない」との立場だ(内閣感染症危機管理統括庁への取材で確認)。パブコメでは、ウイルス等の機能獲得研究の厳格な管理や把握を求める意見も寄せられていたが、行動計画でとる対策は「原因の如何を問わず」適用されるとの説明にとどまり、漏洩リスクへの対応策について言及はなかった。
他方、行動制限措置等の対策の終了時期について、4月24日公表の原案では「ワクチンの普及等による集団の免疫の向上、病原体の変異及び新型インフルエンザ等への対応力が一定水準を上回ること」としていたが、コロナ禍で「集団免疫が獲得できたのか」という疑問が寄せられていた。最終案では「集団免疫」という表現が削除され、「ワクチン等により免疫の獲得が進むこと、病原体の変異により病原性や感染性等が低下すること及び新型インフルエンザ等への対応力が一定水準を上回ること」という文言に修正された。
そのほかにも、パブコメの意見を踏まえて一部修正されたところが複数あるものの、全体としては、4月24日公表の原案から大きく変更された点はないとみられる(ページ数は223ページから225ページに若干増えた)。
新型インフルエンザ等対策特別措置法は、政府行動計画の策定・変更にあたって推進会議の意見を聴取するものとしているが、法律上の定員35人のうち、15人しか任命されていない(委員名簿)。
6月17日の会合は5人の委員が欠席し、オンライン参加を含め10人が出席した。取材は冒頭のみ許され、担当閣僚の新藤義孝大臣が今日で議論を終了したうえで与党との手続きに入りたい旨を説明。会議は約1時間で終わり、改定案が了承されたことは統括庁への取材で確認した。
(冒頭写真は6月17日午後2時30分ごろ、中央合同庁舎4号館の会議室で筆者撮影。右から順に、藤井健志・内閣感染症危機管理補、五十嵐隆・新型インフルエンザ等対策推進会議議長=国立成育医療研究センター理事長=、新藤義孝・内閣府特命担当大臣、厚生労働省の佐々木昌弘感染症対策部長)
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(追記)政府は、偽・誤情報の常時モニタリングを含む「新型インフルエンザ等対策行動計画」全面改訂版を7月2日に閣議決定した。それに基づくガイドライン改訂版も8月30日に決定した。