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拉致問題はなぜ動かない!対話も圧力も中途半端な日本政府の対応

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
ASEAN地域フォーラムで記者会見する李容浩外相

拉致問題が全く動かない。拉致被害者家族の方々の落胆と苛立ちは半端ではない。高齢で病弱の方々も多いだけに心中を察するに余りある。それでも、被害者家族の多くは「安倍内閣の下で拉致問題を必ず解決する」との安倍晋三総理の言葉を信じ、忍耐強く待ち続けている。

先週の19日、某BS番組に出演した際に司会者から拉致問題について聞かれたので「ラオスの首都ビエンチャンで26日に開かれるASEAN地域フォーラム(ARF)に北朝鮮の外相が出席するので日朝外相会談が行われるかに注目したい」と述べたが、どうやら不発に終わったようだ。

日本側に最初からその意思がなかったのか、あるいは働きかけたのに、断られたのか、定かではないが、岸田外相と李容浩外相との会談があったとの話は伝わってない。非公式の接触や事務方レベルの接触があったなら、期待も持てるのだが、どうやらそれもなかったようだ。

拉致問題解決の手法は一貫して対話と圧力だ。時には圧力と対話の比重が変わることがあっても、この対応は、自民党から民主党、そして自民党政権と政権が代わっても一貫した日本の原則である。

北朝鮮が1月6日に核実験を、そして2月7日に衛星と称して「テポドン」を発射しても、日本政府は制裁を掛けながらも、対話の扉は閉ざさない、2014年に交わした「ストックホルム合意」に基づき安否の再調査を求めていくと繰り返して説明している。ならば、北朝鮮の外相が出席するこの場は好機のはずだ。その絶好の機会を逃すとは何とも解せない。

北朝鮮の一連のミサイル発射に対して日本政府はその都度、北京ルートで北朝鮮側に抗議しているようだが、北朝鮮の大使館に電話で抗議するより、岸田外相が直に北朝鮮の外交トップに会って、抗議した方が遥かに効果的でインパクトがある。それですらやらないということはよほどの事情があるのだろう。

北朝鮮と対話をしないことを決めた米国や韓国を気遣い、歩調を合わせているなら、致し方ない。しかし、日本人拉致問題は米韓が日本に代わって解決してくれる問題ではない。日本外交の最大課題でもあり、国民の最大の関心事の一つである拉致問題解決のためには日本は米韓に追随するのではなく、独自の行動を取ってしかるべきだ。

振り返れば、ARFでは毎年、岸田外相は北朝鮮の外相と会談を行ってきた。昨年はマレーシアで、一昨年はミャンマーで、さらに3年前もブルネイで相手こそ違ってもまた、短時間ながらも会談を行ってきた。

昨年は、この5月の党大会で労働党の外交トップとなった李洙ヨン外相(当時)との間で30分も行っていた。ARFでの日朝外相会談はまさに恒例となっている。

「やっとつかんだ糸口を放してはならない」(安倍首相)ならば、こういう場を生かして、北朝鮮にきちっと、毅然とものを言うのが筋ではないだろうか。対話、交渉をせずに拉致問題の解決があり得ないことは他の誰よりも安倍政権が承知のはずである。

仮に、対話よりも、当面は圧力を掛けることが先決と考えているならば、それも一理で、ならばもっと圧力を掛けてしかるべきである。しかし、現実には圧力を加重しているとはとても言い難い。

日本は北朝鮮の核実験とテポドン発射に抗議して2月10日にストックホルム合意で緩和した制裁(往来や送金の規制)を元に戻すなど独自制裁を発動し、さらに3月14日に朝鮮総連の再入国規制対象者の拡大などの措置を取っただけである。

それ以降、北朝鮮は3月には「スカッド」2発と「ノドン」2発、4月には「ムスダン」3発と発射潜水艦弾道ミサイル(SLBM)1発、5月には「ムスダン」1発、そして先月(6月)には「ムスダン」2発を連射している。いずれも、日本海に向け発射されている。

日本列島から遥か遠い南方のフィリピン方向に向け発射された「テポドン」に制裁を掛けて、日本列島に向かってくるかもしれない、あるいは朝鮮半島有事の際には確実に日本攻撃用として使われる「ノドン」が発射されているにもかかわらず追加の制裁措置を取らないというのも不思議な話だ。

百歩譲って、日本海の公海上に落下し、日本の領土、領空を侵犯してないことや「日本の安全を脅かすものではない」(菅官房長官)ことが理由だとしても、北朝鮮のミサイルが直接的な脅威となってないEUですらこの期間、北朝鮮高官らの入国禁止や金融制裁など追加の措置を取り続けているだけに日本の対応はどう考えても腑に落ちない。

そもそもやる意思がないのか、やりたくてもやれないのか、やっても意味がないのか、このまま対話も圧力もやらないとなると、残念だが、拉致問題は今年も何の進展も見ないままに終わってしまうだろう。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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