ぎりぎりセーフを狙った「鬼滅の刃」便乗グッズ販売で有罪判決
「”悪質、人気に便乗” ”鬼滅”類似グッズ販売会社社長に有罪判決」というニュースがありました。「鬼滅の刃」を連想させるデザインの商品を販売したとして、不正競争防止法違反により、雑貨販売会社社長が有罪判決を受けたという話です。
この事件については、起訴された時に記事を書いています。不正競争防止法と商標法違反の疑いで、社長と店員の計4人が逮捕され、結局、販売会社社長の不正競争防止法の件だけが起訴されていました。
被告人は、「鬼滅の刃」「炭治郎」等々、明らかに商標権侵害となる言葉やマークの使用は避けて、主要キャラクター6人が着ている服の模様をあしらった商品を「鬼退治」等の商標を付けて販売していました。ぎりぎりセーフの線を狙ったのだと思うのですが、結果的にぎりぎりアウトだったということになります。
関連法文は、不正競争防止法2条1項1号です。
模倣品の販売を防止するという目的においては商標法に似ていますが、商標と異なり、登録されている必要はありません。また、保護対象はマークや名称だけでなく、商品の形態等にも及び得ます。その代わりに、重要な要件として、周知であること、および、消費者に混同が生じていることが求められます(商標権侵害の場合はこれらの要件は不要)。加えて、今回は刑事なので「不正の目的をもって」という要件もあります。
裁判所は、以下のように判示したようです。
当然ながら、炭治郎の服のような柄の服を売るだけで犯罪になるわけではありません(実際、普通に売っています)。
しかし、同じアニメで使用されている柄4つの商品をセットで、かつアニメを想起させる言葉と共に販売していれば、全体的に判断して2条1項1号に相当すると判断され得ます(偶然の一致とも昔からある柄に過ぎないとの抗弁も困難ででしょう)。一般に、不正競争防止法は(商標法もそうですが)対象の周知性が高いほど、保護も強まります。「鬼滅の刃」の周知性は相当なものと考えられるので、やや被告人側にとって厳しめのように思える判断が出るのはしかたありません。ただし、被告人は控訴する意思だそうなので最終的にどうなるかはわかりません。
ところで、弁護側は「税関の許可も得て輸入した」と抗弁していたようですが、権利者が税関に申立をしておけば、明らかな権利侵害品は税関で差し押えになる可能性はあるものの、税関で差し押えられなかったからと言って権利を侵害していないということにはなりません(逆は必ずしも真ならずというお話です)。ちょっとよくわからない理屈です。
そのあたりも含めて、是非、判決文を公開していただきたいものですが、地裁判決は必ずしも裁判所サイトで公開されるとは限らない(特に刑事の場合)のが困ったところです。