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月内の合意は不可能?!自力交渉を諦めたMLBが米国連邦調停局に仲裁申請へ

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
米国連邦調停局に仲裁申請を行ったロブ・マンフレッド・コミッショナー(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【MLBが米国連邦調停局に仲裁申請】

 MLBと選手会の労使交渉が、遂に立ちゆかなくなってしまったようだ。

 米メディアが現地時間の2月3日に報じたところでは、MLBは前回の労使交渉終了後、選手会に対しこれ以上の対案を提示しないことを通達するとともに、米国連邦調停局に仲裁申請を行ったという。

 ただ交渉に調停者が加わるためには選手会が承認しなければならないが、今回のMLBの措置に不満を示していると報じられている。今後は選手会の対応にかかっているが、すでに両者だけで問題解決するのは難しい状況になってしまった。

【最後まで両者の隔たりを埋めることができず】

 すでに本欄を始め様々なメディアが報じているように、MLBと選手会は先週から複数回にわたり交渉のテーブルに着いた。議題は今回の労使交渉の核心部分とされる選手待遇に関するものだった。

 年俸調停権取得前選手の待遇改善やチームによるMLB在籍日数の意図的操作等について、両者は会談の度に対案を交換しながら協議を続けていたが、両者の意見に隔たりが大きく、その溝が埋まることはなかった。

 そこでMLBは、このまま交渉を続けても合意する見込みがないと判断したのだろう。米国連邦調停局に救いの手を求めるという、最後の手段に打ってでたのだ。

【1995年のストライキでも調停者が仲裁に】

 仮に選手会が承認し、労使交渉に調停者が参加するようになったからといって楽観視はできない。両者が合意するまで、もうしばらく時間がかかる可能性が高い。

 端的な例が、米プロスポーツ史上最長の活動停止に追い込まれた1994年から1995年まで続いた選手会のストライキだ。当時も最終的に米国連邦調停局に仲裁申請を行っているのだが、調停者が交渉に加わってからストライキ終結まで結局1ヶ月を要しているのだ。

 つまり米国連邦調停局が介入することになれば、むしろ労使交渉は短期間で解決する見込みがなくなるため、スプリングトレーニングのみならずシーズン開幕も遅延する可能性も出てきたようだ。

【仲裁者介入はMLBにとって諸刃の剣】

 また米国連邦調停局の仲裁は、両者の主張を聞いた上であくまで仲裁だけを目指しているので、MLBが有利に労使交渉を進められるわけでもない。

 1995年に仲裁に入った際も、最終的に米国連邦調停局は選手会の立場を支持したため、それに満足した選手会がストライキを終結させる決断を下したのだ。今回もシーズン開幕が遅れた上、米国連邦調停局が選手会の主張を全面的に受け入れるという、MLBにとって最悪のシナリオも想定されるわけだ。

 いずれにせよ、労使交渉が完全に手詰まり状態になってしまったことは確かだ。たとえ米国連邦調停局が仲裁に入ったとしても、2月中の合意はほぼ不可能になってきた。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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