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逆境の中でも安倍総理が憲法改正を実現できる秘策がある

鈴木崇弘政策研究アーティスト、PHP総研特任フェロー
(写真:長田洋平/アフロ)

  安倍総理は、最近の内閣支持率の急激な低下に対して、政権浮揚に向けて、今月3日内閣改造を行い、第3次安倍・第3時改造内閣を発足させた。

 今回の内閣改造は、国民に向けた対応(「外なる守勢」)、党内対応(対内対応であり、「内なる攻勢」)、お友達内閣の問題への対応(見栄えの対応)の3点から行われたもので(注1)、それなりに考えられた人事だと思う。だが、現政権への内閣支持率の低下の最大の要因は安倍総理自身であり、またその要因は不信感という感情に根差したものだ。その意味では、今回の内閣改造はそれなりの考察から生まれたものであるといえるが、国民・有権者から内閣への支持が急激に高まることはあり得ない。しかしながら、今回の内閣改造では、重要かつあるいは注目の高い閣僚ポストには、それなりの人材が当てられているので、国会の審議が始まれば、内閣支持率はやや向上するかもしれないし、少なくとも当座はまた低下することはないのではないだろうか。

 毎日新聞が、今月3、4日、内閣改造および自民党の役員人事を受けて、世論調査を実施した。これによれば、安部政権の支持率は前回7月の調査から9%増の35%、不支持率は9%減の47%だった(注2)。

 これをどう解釈するかだが、内閣改造へのご祝儀相場も考慮すれば、やはり予想どおり、内閣支持率は高まらなかったとはいえるのではないだろうか。あまりの低い数字に、安倍総理はかなり低姿勢に動いているが、一度失った信頼や生まれた不信感はそう簡単に動かない。まして君子が豹変しても、一度生まれた不信感から本心だと思う可能性は現時点ではほぼないのではない。

 このような状況で、安部政権は、内外に山積する多くの問題や課題を抱えながら、安倍総理の悲願であり執念ともいえる憲法改正を実現できるのだろうか。筆者は、かなり厳しいと考える。

 そこで、筆者には、安倍総理が、その状況を打破し、憲法改正を実現していける一つの秘策がある。

 それは、小池小百合現都知事との共闘だ。先日TVの番組に登場し、小池都知事は、「希望の塾を再開し、国政への進出も考えていきたい」と発言していた。つまり、国民ファースト党が遠からずできるということだ。

 筆者の考える秘策とは、そのような状況を受けて、安部総理が、自民党と国民ファースト党が連立を組み(注3)、自分は総理を降りて、小池さんを総理として、憲法改正を推進していくことだ。

 この案には、2つの重要なポイントがある。

まず一つは、安倍さんは既に長らく総理を務め、残された野望は、「憲法実現」だけだということ。

2つ目が、現在のように与野党を含めて政治に対する不信感が高まる中で(注4)、憲法改正をするには、かなりの求心力が必要だが、そのような力が現時点であるのは、小池都知事だけだ。連立で小池さんが総理になれば、現時点の小池さんへの人気や支持の高さからも、それに日本で初の女性総理で大きな期待が膨らむ、少なくとも短期的には、政治における求心力が急激に高まることは確実だ。

 それに、最近、安倍総理と小池都知事は、さや当てをしながらも、また自民党と都民ファーストの会はライバルであるが、両人とも協力関係を演出しており(最終的に仲たがいしていないことが政治的には非常に重要だ)、改憲では同じ方向にあり、協力共闘は可能だ。

 

 他方、筆者の知人で安倍総理のキャラクターを知るあるメディア関係者は、「面白いアイデアだが、安倍さんの性格からして、自分が総理で実現したいとしか考えていない」と指摘した。筆者も自民党のシンクタンク設立において、安倍さんと度々接した経験からも、その方の意見もなるほどと思う。

 

だが、安倍総理が、現状のような非常に厳しく、かつ今後の展望が持ちにくい状況の中で、自己の宿願を実現するには、上記の秘策のようなものも飲み込み、活かしていくような発想が必要なのではないだろうか。

(注1)これらの点に関しては、別記事「林新文科大臣 手腕と人物像は」」参照のこと。

(注2)記事「世論調査:改造内閣支持率35% 不支持率は47%」参照のこと。

(注3)なお、本記事掲載後、小池知事の腹心で、都議選で都民ファーストの会を支援し、自民党を離党した若狭勝衆議院議員は、7日国会内で記者会見し、自身を代表とする政治団体「日本ファーストの会」の設立と政治塾の発足を明らかにした。

(注4)記事「「一弱多弱小」の政治状況のなかで、年初に思うこと」も参照のこと。

政策研究アーティスト、PHP総研特任フェロー

東京大学法学部卒。マラヤ大学、米国EWC奨学生として同センター・ハワイ大学大学院等留学。日本財団等を経て東京財団設立参画し同研究事業部長、大阪大学特任教授・阪大FRC副機構長、自民党系「シンクタンク2005・日本」設立参画し同理事・事務局長、米アーバン・インスティテュート兼任研究員、中央大学客員教授、国会事故調情報統括、厚生労働省総合政策参与、城西国際大学大学院研究科長・教授、沖縄科学技術大学院大学(OIST)客員研究員等を経て現職。新医療領域実装研究会理事等兼任。大阪駅北地区国際コンセプトコンペ優秀賞受賞。著書やメディア出演多数。最新著は『沖縄科学技術大学院大学は東大を超えたのか』

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