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地元に愛される路地裏の激シブ店。素朴な焼鳥と塩レモンサワー【二代目 鳥七 /東京】

今回冒険するのは、東京・荻窪の「二代目 鳥七」。荻窪駅南口からほど近く。仲通り商店街を通り、裏路地に入ると見えてくる「鳥七」の看板。そこはかとなく漂う昭和の匂い。縄のれんをくぐれば、7席ほどの小さなL字カウンター。薄暗い店内は、懐かしさと渋さが同居していた。

好きなネタを気ままに頼むだけ

16時をまわった頃。先客は常連とおぼしき人生の先輩が二人。店主から小声で「どうぞ……」と奥の席に通された。セットもコースもなく、アラカルトのみ。とりあえずのビールで喉を鳴らし、串をあれこれと選ぶ瞬間が楽しい。

とはいえ一度に何本も頼むとどうも忙しないので、まずはささみとせせりで様子見といく。

店主が路地に面した焼き台に向かい、黙々と焼き始める。職人の背中を眺める焼鳥、なんだか新鮮。ちょっとした手の角度だとか、普段は見えない部分にグッとくる。

ささみ
ささみ

せせり
せせり

1本目のささみは、レア焼きとは無縁の火入れ。それでいてパサつくことなく、ふっくらと優しい口当たり。これが意外と難しい塩梅だと思う。

一方、せせりはやや強めに塩を当て、エッジを効かせた味わいだ。若鶏の焼鳥ではプリッと弾けるせせりは外せない。むしろ主役を張るネタと言っても過言じゃないはず。んん。これは、いい出だし。

レバー
レバー

ハツ
ハツ

さぁさぁ、レバーとハツも追加だ。ささみの火入れ具合で直感したように、レバーもしっとり、じっくり焼き上げている。とはいえパサつくことなく、ほどよくトロリとして食べやすい。やっぱり、焼鳥屋ならレバーがうまくないと。

あっという間に手元のグラスも空になった。ビールの次は、レモンサワーにしようか。

焼鳥を引き立てる脇役も忘れない

「二代目 鳥七」には、焼きおにぎりもそぼろ丼も、親子丼もない。潔く「焼鳥と肴」だけ。その肴もたぬき奴や蒸しなすの冷やし鉢など、いい意味で飾り気がない。

選んだのはおつまみにピッタリの味玉うずら。この6個で250円。そうそう、焼鳥屋はあくまでも焼鳥が主役。合間の肴はこういう素朴なもので充分なんだ。

おつまみ味玉うずら
おつまみ味玉うずら

お供には、定番のレモンサワー。グラスの縁にほんのりと塩が当てられているのがニクい。

酒は日本酒もしっかり取り揃えているようだけれど、この1杯が爽やかでうまいものだから、もう、お代わりが確定。今日はレモンサワー選手の続投で決まりだ。

レモンサワー
レモンサワー

でっぷりと大ぶりなももは必食

さっぱりしたささみから、脂ののったせせり。レバー、ハツの内臓ネタで緩急を付けたら、メインディッシュのももだ! 皮を挟んで、〆につくね。

んん。いい流れ。自分で流れを組み立てる楽しみは、町焼鳥の醍醐味。町鮨だって、そう。

もも
もも

うまみを補うように大ぶりにカットされた肉はでっぷり、もっちりと。ぐるりと巻き付けた皮目はパリッと。

この存在感、いいじゃないか。「焼鳥の主役はもも」だということを改めて感じさせる一本だ。

皮

つくね
つくね

つくねも、大衆店にありがちな「ボイルつくね」じゃない。焼く前に握る「生つくね」。

いい曲線美。タレをからめてはあるものの、重くない。ふわっとしながら、じんわりとうまみが感じられるような優しい味わい。つくねを〆に選んで、大正解。

1本1本ていねいに出される焼鳥屋でありながら、3000円もあれば充分楽しめる。もちろん、それは銘柄鶏や地鶏ではなく、若鶏を使っていることもあるけれど、ふらっと来て飲むなら、これぐらいの店はちょうどいいんだ。

しかし、焼き場が路地に面しているものだから、店主とは会話らしい会話も生まれず、飲んでいる間もほとんど目が合わなかった。かといって常連客の会話にもそう深入りはしないよう。

お世辞にも愛想がいいとは言えないけれど、それは不誠実ということじゃない。焼き台に向かう背中を見ていれば、どこか穏やかな空気をまとっていることに気付く。

いい店なのは間違いない。一人、物思いにふけりたいときにもぴったりだ。

店舗情報
【店名】二代目 鳥七
【最寄り駅】荻窪駅
【住所】東京都杉並区荻窪5-29-6
【予約】050-5896-7999
【定休日】日曜、祝日の月曜
【串のアラカルト】あり

毎週、焼鳥三昧! 焼鳥を斜めに逆さ撮りする〝ヤキトリスト撮り〟は元祖にして名刺代わり! 「焼鳥は串柄、人柄」をテーマに、大衆的で気兼ねない町焼鳥から、鶏にこだわり1本1本に心血を注ぐ専門店まで焼鳥まみれの日々を送っています。焼鳥好きの方、フォローよろしくお願いします!

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