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サンウルブズの国内試合支えたボランティアスタッフ。三者三様の想い。

多羅正崇スポーツジャーナリスト
日本チーム・サンウルブズは2018年の国内最終戦で待望の今季初勝利を挙げた(写真:アフロ)

 南半球最高峰リーグ「スーパーラグビー」参戦3年目のサンウルブズ(日本)が、開幕7連敗を喫した4月14日のブルーズ戦(NZ)でのことだった。

 10-24での敗戦後、東京・秩父宮ラグビー場のメインスタンド脇では、帰路につく観客をスタッフがホーム恒例の花道で迎えていた。

「またよろしくお願いします!」

 開幕7連敗を目にした観客へそう声を掛けていたのは、サンウルブズのボランティアスタッフ。チーム関係者に代わり、熱心に再来場を呼びかけていた。

 はたしてラグビー愛、サンウルブズ愛に溢れた彼らの素顔とは――。3人のボランティアスタッフにお話を伺った。

今季初勝利を挙げた5月12日のレッズ戦(豪州)(筆者撮影)
今季初勝利を挙げた5月12日のレッズ戦(豪州)(筆者撮影)

 観客に明るく声をかけて座席へ案内する。立ち見席下の「キッズパス&ハイタッチエリア」では、笑顔で子どもたちの相手をする。

 今季6試合あったホームゲームでバックスタンド周辺を見回った限り、サンウルブズのボランティアスタッフ(以下スタッフ)は明るく積極的だった。

 スタンド下の日陰で休んでいる女性がいれば、大丈夫ですかと体調を気遣う。バックスタンドの親子連れに声を掛け、子どもと優しくパス交換をする姿も目にした。善意の力が明るい雰囲気を生み出していた。

 サンウルブズは5月12日、今季国内最終戦となったレッズ戦(豪州)に63-28で大勝。日本ラグビーの聖地・秩父宮は今季初勝利に沸いた。

 この日も約200人のスタッフは、受付業務や場内清掃など多岐にわたる活動で運営を支えた。

■「最初から勝つ気がしていた」

 スタッフの一人、大手企業に勤める武藤さんはこの日の勝利を予感していたという。

「最初から勝つ気がしていたので、やっぱり勝ったかと」(武藤さん)

 今季のボランティア参加はこの日が初めて。昨季の参加は、サンウルブズが通算3勝目を挙げた最終節ブルーズ戦で、武藤さんは「僕は意外と勝率が高いんですよ」と笑顔だった。

 年齢は「『スクール☆ウォーズ』世代よりちょっと上」。ラグビーは新入社員時代に会社の同好会で経験したが、それ以前からラグビーは大好きだった。

 武藤さんは7月18日まで募集するラグビーW杯日本大会のボランティア「TEAM NO-SIDE」にすでに申し込んでいる。

 

■目標はW杯でボランティアをすること。子ども3人もラグビーに夢中。

 同じく「TEAM NO-SIDE」に申込済みなのが、3人の子ども(男子高校生、女子中学生、女子小学生)がラグビーをしているという寺山さんだ。

「子ども3人がラグビーをしているので、『お母さんも頑張ってるよ』とか、ワールドカップにつながれば、と思ってボランティアをやっています」(寺山さん)

 サンウルブズのボランティアは団体申込のみを受け付けている。寺山さんは埼玉県ラグビー協会が立ち上げたボランティア団体『BAND』からの参加だった。

 サンウルブズの今季初勝利に「最高です!」と興奮ぎみの寺山さんは、ラグビーの魅力を親目線で語ってくれた。

「ウチの子たちは小さい頃からラグビーやっていますけど、友達を思いやるとか、規律を守る、自分のことは自分でやる――あとは長期目標を立てて、こうするためにはこれが必要だ、ということが出来るようになりました」

 娘が所属ラグビーチームで「10年計画の目標」を立てたことを期に、自分も「ワールドカップでボランティアをする」という目標を立てている。

 日本代表の候補選手と同じく、2019年W杯が寺山さんのゴールのひとつだ。

■ワールドカップに関わるために今夏NZへ留学。

 佐野花奈さんは看護師で、おっとりとした笑顔が印象的な女性だ。

 しかしこれから始めようとしている挑戦は、勇敢で冒険的だ。

「今年の夏に看護師を辞めて、ニュージーランドに語学留学をします。ワールドカップでお仕事をするためには、英語も必要かなと思うので」(佐野さん)

 2019年W杯日本大会に仕事で関わりたい。英語のスキルがあれば可能性が広がると思い、今夏に退職し、NZへ行く。

 約500日後にどうなっているか分からないけれど、行動を起こせば道が拓けるかもしれない。

「できれば(W杯に)看護師として関われたら良いなと。なかなかそれも難しいとは思うので、ボランティアも考えてはいますが・・・。(W杯ボランティアには)まだ登録はしていないんです」

 佐野さんは高校、大学、社会人で、ラグビー部のマネージャーを8年間経験した。

 マネージャーとして部員たちの努力を見ていると、試合に引き込まれて手に汗握る。「あとはノーサイドのあと、相手のチームと仲良く終わるところもいいなと思います」。

 そんなラグビーが大好きだ。

「やっぱり怪我とかが怖いです。あとは、大変だと思うんですけど、ファンサービスは続けてほしいなと思います」

 サンウルブズ選手へのメッセージもマネージャー目線の佐野さん。これから2019年W杯へ向けて、まずはNZへ旅立つ。 〈了〉

◆「ラグビーワールドカップ2019日本大会ボランティア」(ラグビーワールドカップ2019公式HP)

https://www.rugbyworldcup.com/volunteers?lang=ja

スポーツジャーナリスト

スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める

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