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【札幌市中央区】二条市場で感じるインバウンドゲストの空気感に、観光被害解消のヒントがあるかも!

ゆべーる地域クリエイター(札幌市)

全国通訳案内士(英語ガイド)として、いつも頭を悩ませるのが、最近では観光被害のこと。それは単に観光客が多いという数の問題よりも、生活の考え方が特殊(あえていうなら日本の社会ルールが異常発達している)ことにあると感じています。実は日本は世界でも圧倒的に社会生活の中でルールやマナーが多い国です。例えば、電車やバスの中で携帯で話すことができない、コンビニの中で買った食べ物を食べられない、レストランやカフェで全員オーダーする必要があるし、外から持ち込んだものは食べられない...などは日本人では当たり前でも、ほとんどの国の人には説明が難しいルールがあったりします。

ですから、一定数以上のインバウンドがそのエリアにいると、残念ながらそこを避けてしまう日本人が多いのも事実です。そして、あるエリアがインバウンド受け入れに熱心だと(例えば浅草)、そこから日本人がいなくなることもあります。

ここだけ違う?

そんな中、先日、二条市場エリア(創成イーストの一部ですね)に行くと、あれ?ここだけ空気感が違う?と思ったので書いてみます。しょっちゅう行っているのですが、今回それを強く感じたので、さささっとあちこち回ってみました。

日本人(観光客だけではなくローカルも多い)とアジア系の観光客に加えて欧米豪の観光客がかなりいたからです。また少人数で動く人の割合も多い。

二条市場や創成イーストの中に、もしかしたら観光被害を乗り切れる方法があるのではいか、ローカル(地元民)と観光客がそれなりに共存する方法があるのではないか?そんな気がしたのです。

以下、感じたことを書きます。

一見、無愛想なこと。

実は昔から言われていますが、二条市場のお店の多くのスタッフさんは、そんなに愛想がよくないと言われています笑 それは実際そうなのですが、別に人間嫌いなのではなく、営業スマイルを使わないのだと感じています。あまり売らんかな、という姿勢ではないかな?

例えば顧客は神様、的に扱ってくれる雰囲気とは違いますので、結局何も買わないで帰る人もかなりいます。

最近は、札幌に関してもすでに多くの観光客があちこちのサイトで情報共有をしていて、その情報が積み上がってきています。

もちろん、二条市場の空気感に不満を待つ人もいるでしょうし、国によっては(特に顧客が優位にいるという考えが浸透している国では)徐々に二条市場に来ない傾向になって来ているのではないか?と考えています。

一方、それをローカルらしくて良いと、営業スマイルは嫌いな傾向の文化を持った国や地域もありますので、そういう人たちのリピートが増えている気が、なんとなくするのです。

実は最近、客引きがあまりいないこと。

それに関連して、二条市場であまり大々的な客引きをやってる方はいないですねえ。各店舗の前の歩道がそれぞれの店舗スペースのようになっているので、その店舗の前を通過する時のみ、そのお店の方が横の店舗の邪魔にならないようにボソボソと喋るようなパターンが多いでしょうか。

この「店舗の前の歩道が、実質店舗になっている」という文化が、私は実はかなり大きい二条市場の特徴なのではないかと感じています。それは築地場外や函館の朝市ではない文化ですね。

車道と歩道をきっちり分けて、歩道と店が一緒になった文化を醸し出していること、そして二条市場を歩くときは車道は歩けないので、この歩道を歩くしかないこと、それが長年積み重なって車道(公道)エリアで堂々で客引きをするような店がないのではないかと思います。まあそれは歩道を歩くことが、店の敷居を跨いでいる感じになるので、それを嫌う人もいるでしょうが。それもまた選択を生み出しているのかも知れません。(比較的近いのが歩道しか存在しない小樽の三角市場かも知れません。)

おしゃれではないこと。

こう書くとひどいと言う人もいるでしょうが笑、二条市場は明治時代にできた魚町をベースにしていて、20世紀の初頭にはほぼ現在の形ができていました。そのため、市場の中にはレトロ、あるいはレトロを通り越して古い、そんな場所がたくさんあります。遠くから見ると2階エリアが摩訶不思議で全然1階の商店と違う店名の痕跡が見えたり、そもそも建物が複雑そう。

向かいのMsのあたりもそうなのですが、地下に防空壕があったり、リノベーションのため壁材を剥がすと、いつの時代がわからない札幌軟石やレンガの古い壁が出てきたりなど、楽しいことが満載です。

お世辞にも所々にある公設トイレも綺麗とはいえないかも知れないし、ここが建物の中の通路だと思っていたら、どうやら元々別の建物の上に屋根を被せてのではないかとか、時には「うーんこれはきっと特例なんだろうなあ」と思うところがあります(かなりぼかして書いています笑)。

つまり、現在の日本、ルールの多い日本では決してもう作ることができない、味わいのある空間があるのです!

日本情緒?を感じながら、現在の日本では再現できない歴史の重みや歪みや味わいが、二条市場と言う空間には漂っています。

したがって、もし海鮮丼や寿司だけを食べに来るのであれば、他の場所の選択肢があるかも知れません。インスタ映えを狙うのであれば、違う市場もあると思います。

しかし、日本や北海道、札幌の古い歴史を知るのであれば、そしてそうしたレトロさや歴史を「美しい」と感じる人であれば、ローカルであれトラベラーであれ、二条市場は楽しめるのではないかと思います。

私には、一見おしゃれではないここが、とてもおしゃれに見えます。

バスPがないこと。

そしてこれが大きいのですが、二条市場周辺には観光バス(バスP)駐車場と、公設の大きな駐車場がありません。つまり基本的に歩いて来るしかないのです。

例えば、先日ガイドしたアメリカ、カナダ、フランスの10名ほどのグループは、そもそもかなりハイレベルのスキーを楽しみに北海道に来ている体力と知的好奇心に溢れた人たちなので、札幌駅>ラーメン横丁>二条市場>千歳鶴>ビール園、トータル15kmを難なく歩き切る方々でした。こうした方々には、日本情緒を感じ、美味しい海鮮を試食できる二条市場はとても良い場所です。

しかし特に南の国の方々は500m以上歩かせるな、と言う文化の方々もいます。下手をすると地下鉄大通駅から歩くのも難しい人もいます。こうなると二条市場は「近くて遠い場所」になるかも知れません。

そもそも二条市場は大箱の店はほとんどないので、これからも徒歩限定で行ける場所であって欲しいなと思っています。

そこから見えてくるものとは?

以上、ざっと感じたことを書きました。品質が良く日本の歴史の一端を感じることができながら、現在の日本に多くの人が期待する(営業)スマイル、圧倒的清潔感、圧倒的アクセスの良さががあるわけではない、と言うところが、そろそろ顧客側で選ぶ人選ばない人が別れてきているのではないかと思います。そういう点で、二条市場は人を選ぶ場所でしょうし、気に入った人が紹介をしてファン層ができつつあるのかもしれません。

日本に来る観光客で、観光被害と取られかねない人には、一つの特徴があると思います。それはつまり大家族、あるいはとても家族想いの人の場合ではないか、とガイドとして考えています。もちろん全てではありませんが、かなり当てはまるかなと思います。つまり徹底的に家族サービスで北海道に来ているので、周りを慮ろうとしたり、ローカル文化を尊重することはあまりない。むしろ自分達はゲストであり大金を落としているので、周りがフォローされて然るべき、と考えている人や文化圏の場合、そうした心配りのないエリアは避けられる可能性があります。

その辺りが、最近二条市場が個の文化が強い、特にマニアックな欧米豪の支持が増え、逆にアジア系の富裕層、特にインドネシアやマレーシア、フィリピンなどの大家族からは少し以前より距離を置かれている場合が多いかな?と思っています。

やはり家族サービスで来ている方々は、日本の整った清潔な環境、綺麗なトイレ、笑顔、などが大好きです。それが時には日本人のたゆまぬ努力と気にしすぎるくらいの気配りからくるものとも知らずに。

その辺り、全くの個人的な興味で来てくれて、他にないこの地域の文化を味わってくれる方であれば問題ないし、そういう人を今後も惹きつけていくのかなと思っています。

個人的には、いくつかのお店のクオリティは大変素晴らしいと思っています。ローカル(地元民)の方も、たまに都心の梁山泊を巡るような気持ちで、訪れてみても面白いと思います。

★二条市場★

場所:札幌市中央区南3東1,2丁目

公式サイトは、こちら

地域クリエイター(札幌市)

通訳案内士(全国&札幌)、そしてライターや日本遺産炭鉄港、日本遺産候補小樽、サッポロコンシェルジュのガイドとして、いつも札幌市内の出来事やおすすめ情報を探しに歩いてます。最近、少し鉄気味。交通ネタや都市インフラに興味が行きつつあります。サイダー(シードル)大好き。ホルン(フランス式ピストン)とテナーホーン吹き。

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