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首里城再建に熊本から沖縄へエール 被災男性が“シーサー募金箱”を制作

田中森士ライター・元新聞記者
首里城再建に役立ててもらおうとシーサーの募金箱を制作した石井光廣さん(筆者撮影)

正殿などが火災で焼失した首里城の再建を応援しようと、熊本地震で被災した男性が“シーサー募金箱”を制作し、募金を呼び掛けている。首里城再建に関心を寄せてもらおうと、募金箱とともに特技のペーパークラフトで首里城も制作。男性は、「熊本地震では日本全国から支援してもらった。少しでも恩返しができれば」と話している。

ペーパークラフトが立ち直るきっかけに

募金活動に取り組んでいるのは、熊本地震で被災し、昨年5月まで熊本市東区のみなし仮設に入居していた石井光廣さん(60)。

石井さんは2016年4月、益城町で被災した。避難所で過ごした後、同市東区のみなし仮設に入居。アパートの前を通るトラックの音に毎回体が反応するなど精神的に不安定な状態が続き、また、孤独感などからアルコールの量が増えていった。

(関連記事)【ルポ熊本地震】突然破壊された日常 孤独感、喪失感から「酒に手が」

ペーパークラフト教室の参加者にアドバイスを送る石井さん(左)(筆者撮影)
ペーパークラフト教室の参加者にアドバイスを送る石井さん(左)(筆者撮影)

そんな石井さんをサポートしたのが、地震後から益城町内でみなし仮設への訪問活動を続けている支援団体「よか隊ネット熊本」(現・一般社団法人「minori」)の相談員・高木総史さん(52)だった。高木さんは石井さん宅を頻繁に訪ね、「見守り」を続けた。「やりがい」を見つけてもらおうと、石井さんが趣味で続けていたペーパークラフトの教室を企画。石井さんが講師を務め、みなし仮設に住む人など向けに幾度も開催した。

熱心にペーパークラフト制作に取り組む教室の参加者(筆者撮影)
熱心にペーパークラフト制作に取り組む教室の参加者(筆者撮影)

石井さんは高木さんに紹介してもらった医師の指導を受け、現在ではアルコールの量をある程度コントロールできるようになった。かつては昼間からウイスキーに手を伸ばしていた石井さんだが、今では明るいうちから飲むことはなくなった。ペーパークラフト教室は定期的に開催しており、石井さんは「大きなやりがいを感じている。酒のことを考える時間も大幅に減った」と笑顔を見せる。

ペーパークラフト教室で生徒らが制作した作品の数々(筆者撮影)
ペーパークラフト教室で生徒らが制作した作品の数々(筆者撮影)

「次は自分が立ち上がる番だ」

昨年10月に首里城の火災のニュースを見た石井さんは、すぐに「何か力になりたい」と思い立ったという。首里城の管理や運営を行っている沖縄美ら島財団は以前、熊本城再建を支援するための募金活動を行っていた。「次は自分が立ち上がる番だ」と感じた石井さんは、募金活動を行うことを決意。段ボールでシーサーの募金箱を自作し、自身のペーパークラフト作品を展示する際などに、募金活動を展開した。

石井さんが制作した“シーサー募金箱”とペーパークラフトの首里城(筆者撮影)
石井さんが制作した“シーサー募金箱”とペーパークラフトの首里城(筆者撮影)

“シーサー募金箱”の脇にはいつも石井さんが作ったペーパークラフトの首里城が置かれている。石井さんは「多くの方の支援によって自分が立ち直ることができた恩返しをしたい。行動することで首里城再建への関心を高めていければ」と決意をにじませている。

募金の窓口は高木さんの所属する「minori」で、2020年3月31日まで受け付けている。その後寄付先を選定し、首里城再建のため寄付する。問い合わせは「minori」(電話:096-273-8833)。

ライター・元新聞記者

株式会社クマベイス代表取締役CEO/ライター。熊本市出身、熊本市在住。熊本県立水俣高校で常勤講師として勤務した後、産経新聞社に入社。神戸総局、松山支局、大阪本社社会部を経て退職し、コンテンツマーケティングの会社「クマベイス」を創業した。熊本地震発生後は、執筆やイベント出演などを通し、被災地の課題を県内外に発信する。本業のマーケティング分野でもForbes JAPAN Web版、日経クロストレンドで執筆するなど積極的に情報発信しており、単著に『カルトブランディング 顧客を熱狂させる技法』(祥伝社新書)、共著に『マーケティングZEN』(日本経済新聞出版)がある。

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