オールトの雲からの使者「2014 UN271」が彗星として正式命名、コマも確認
2021年6月19日新たに報告された太陽系外縁天体「2014 UN271」は、発見者である米ペンシルベニア大学のペドロ・バーナーディネッリ博士とゲイリー・バーンスティーン博士の名をとって「C/2014 UN271 Bernardinelli-Bernstein(バーナーディネッリ-バーンスティーン)彗星」と命名された。彗星を観測したセロ・トロロ天文台を運用するNSF国立光赤外線天文学研究所(NOIRLab) が発表した。
彗星は全天の14%を観測する「ダークエネルギー・サーベイ(DES)」観測計画によってチリのセロ・トロロ汎米天文台のビクター M. ブランコ4m 望遠鏡の2014~2018年の観測データから見つかった。彗星核の直径100~200キロメートルあると見られ、多くの彗星の核の約10倍、比較的大きく直径50キロメートル程度のヘール・ボップ彗星も上回る。
バーナーディネッリ-バーンスティーン彗星は、観測から判明したその軌道によって、太陽系の広大な外縁部「オールトの雲」から来たことがわかっている。これまでに観測されたオールトの雲由来の天体の中でも最大級で、海王星を越えて太陽系の内側に向かってくることが確認された初の天体となる。NASAの「JPL・スモールボディ・データベース」に記載された情報では、新たな観測結果から遠日点距離が61956.03768718801 AU(天文単位)に更新された。NOIRLabの発表によると、現在のように太陽系に接近するコースは4万 AU(約6兆キロメートル)の距離から始まったといい、2031年1月23日に土星の軌道のやや外側、10.95 AUの近日点に到達する。
発見後に観測された新たな画像から、バーナーディネッリ-バーンスティーン彗星は太陽に近づいて活動が始まり、周囲を取り巻いて明るく広がる彗星の特徴「コマ」を持つことが確認された。
オールトの雲の天体は、太陽系初期に木星、土星、天王星、海王星といった大型の惑星の活動によって太陽系の外縁部にはじき出されたと考えられている。約300万年ぶりに土星の軌道近くまで接近してくる彗星を観測することで、太陽系の歴史の解明への期待がある。
バーナーディネッリ-バーンスティーン彗星は近日点でどこまで明るくなるのかはまだわかっていない。NOIRLabは、チリで建設中のヴェラ・ルービン天文台で彗星の継続的な観測を行うことを計画している。