Yahoo!ニュース

任天堂が『パルワールド』を特許権侵害で提訴した背景にはハイテク大手の動きあり #専門家のまとめ

多根清史アニメライター/ゲームライター
Image:Pocketpair

任天堂と株式会社ポケモンが、ポケットペアが開発・運営する「パルワールド」が東京地裁に提訴しました。不思議な生物「パル」のデザインがポケモンを彷彿させることから何らかの行動を起こすとは予想されていたものの、著作権ではなく「複数の特許権」を侵害しているとの訴えです。

ここに至るまでに『パルワールド』はいかなる道をたどったのか、任天堂が訴訟に踏み切った背景には何があったのか。ハイテク大手も巻き込む一大旋風となっていたことを、時系列に沿って振り返ってみます。

ココがポイント

Xbox Game Pass版のプレイヤーは累計700万人を超え、1日最大300万人近いプレイヤーが遊んでいるという
出典:ITmedia NEWS 2024/2/2(金)

テンセント・ホールディングス傘下にある2つのスタジオが(中略)『パルワールド』風のモバイルゲームを開発中
出典:Gadget Gate 2024/3/27(水)

SME及びアニプレックスを起点として、ソニーグループとの連携も図り、「パルワールド」の新たな展開を推し進めていきます
出典:アニプレックス 2024/7/10(水)

世界中からIP(知的財産)ビジネスの問い合わせなどが殺到して、数カ月間は通常の業務が回らない状態でした
出典:Forbes 2024/9/16(月)

エキスパートの補足・見解

『パルワールド』のキャラクターはポケモンを強く連想させるものの、著作権侵害には「依拠性」(元の著作物に基づいて作ったこと)と「類似性」(どれだけ似ているかという度合い)が必要となります。

このうち類似性=「本質的な特徴」を真似てると証明するのは難しいのでは?との議論が早くからありました。その意味で、任天堂が特許権侵害で訴えたことは別に意外ではありません。

根拠となる「特許」は、おそらく最近出願された7493117号ほか複数の特許だと推測されています。ザックリ言えば、「ボールをモンスターに投げて捕獲判定をする」というもの。要はポケモンぽいゲームであれば、あらかた抵触しそうです。

そんな数あるポケモンぽいゲームのなかで、なぜ任天堂は『パルワールド』だけに行動を起こしたのか。それはマイクロソフトも強力にバックアップ、中国大手のテンセントも後に続こうとした上に、ソニーグループも「IP」事業に発展させようとした。ここでブレーキを掛けようとするのは、むしろ当然のことと言えるでしょう。

アニメライター/ゲームライター

京都大学法学部大学院修士課程卒。著書に『宇宙政治の政治経済学』(宝島社)、『ガンダムと日本人』(文春新書)、『教養としてのゲーム史』(ちくま新書)、『PS3はなぜ失敗したのか』(晋遊舎)、共著に『超クソゲー2』『超アーケード』『超ファミコン』『PCエンジン大全』(以上、太田出版)、『ゲーム制作 現場の新戦略 企画と運営のノウハウ』(MdN)など。現在はGadget GateやGet Navi Web、TechnoEdgeで記事を執筆中。

多根清史の最近の記事