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Google オランダ”黒い顔のズワルトピート”広告禁止・YouTube収入も無し:人種的偏見を懸念

佐藤仁学術研究員・著述家
顔が黒いことから「ブラックピート」とも呼ばれているズワルトピート(写真:ロイター/アフロ)

 オランダには「シンタクラース」という"オランダ版サンタクロース"のような風習がある。毎年12月5日にシンタクラースを祝ってプレゼントを贈る風習がある。シンタクラースは白髪で白のあごひげで赤と白の伝統的な祭服を着ている。そしてシンタクラースには「ズワルトピート」という顔を黒くした侍従がいる。シンタクラースとズワルトピートに仮装した大人たちが子供たちにお菓子を配るのでオランダの子供たちにも大人気。また悪い子は叩くということで白樺の棒と煙突ブラシを持っている。

 オランダではズワルトピートはスペインから来たムーア人(北西アフリカに住んでいるムスリムのベルベル人)だから顔が黒いという伝承や、煙突をくぐってきたから煤(すす)が付いているので黒いと伝えられている。毎年、大人たちが顔を黒くしてズワルトピートの仮装をして祭りを楽しんでいる。ズワルトピートは顔が黒いことから「ブラックピート」とも呼ばれている。

 そしてオランダではクリスマスのサンタクロース以上にシンタクラースとズワルトピートが人気の伝統的な行事であり、地元企業の広告や宣伝にもシンタクラースやズワルトピートの絵が使われている。だが、このズワルトピートの顔が黒いというのが人種差別であると主張する人たちもいて、毎年議論になっている。ズワルトピートが人種差別を引き起こしたり、特定の民族や黒人奴隷を揶揄していると思っているオランダ人はほとんどいないが、移民が増加しているオランダでは多民族が共存しており、センシティブな問題になっている。

Google「人種的なステレオタイプを想起させるため」

 そのような背景があり、Googleオランダでは黒い顔をしたズワルトピートを広告として掲載することを禁止したと地元メディアが報じていた。企業が黒い顔をしたズワルトピートの絵や写真などをGoogleに広告で掲載することができなくなる。また黒い顔をしたズワルトピートが映っている動画をYouTubeにアップしても広告収入を得ることができなくなるそうだ。シンタクラースの時期には多くの小売店がシンタクラースとズワルトピートの絵や写真を使って宣伝を行っている。また多くのオランダ人がシンタクラースやズワルトピートに仮装してお菓子を配ったり、貰ったりしている様子を撮影した動画をYouTubeにアップして楽しんでいる。今回、GoogleはYouTubeに黒い顔をしたズワルトピートの動画をアップすることは禁止してはいない。その動画の再生回数に応じた広告収入が得られない。

 Googleは地元メディアに対して「Googleは平等と多様性を重視しています。我々としては黒い顔をしたズワルトピートは今でも人種的なステレオタイプを想起させると考えています」とコメントを寄せていた。黒い顔をしたズワルトピートから人種的な偏見や先入観、固定観念による差別を助長させないようにしようとしている。オランダ人にとっては大昔から馴染みのある伝統的な風習で、黒い顔をしたズワルトピートは子供からも愛されるキャラだが、近い将来、"黒い顔をしたズワルトピート"は消えてしまうかもしれない。

▼黒い顔をしたズワルトピートに反対する人々を報じる英国のニュース

▼ズワルトピートは人種差別か?という問題を伝えるオランダのニュース

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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