海外の大型フェスで圧倒的な人気を誇るBAND-MAIDの魅力とは?
3月27日、BAND-MAID(バンドメイド)がBlu-ray&DVD『10TH ANNIVERSARY TOUR FINAL in YOKOHAMA ARENA(Nov.26,2023)』をリリースする。昨年11月26日に横浜アリーナで開催されたBAND-MAIDの結成10周年記念ツアーのファイナル公演を収めた映像作品だ。
■メイド風の衣装を身に纏った激しい“お給仕”パフォーマンス
2013年に小鳩ミク(ギター/ボーカル)が中心となって結成されたBAND-MAIDは2014年にメジャーデビュー。小鳩、SAIKI(ボーカル)、KANAMI(ギター)、AKANE(ドラム)、MISA(ベース)という5人のメンバーから成るガールズ・ロック・バンドである。
メイド風の衣装を身に纏ったBAND-MAIDの武器は、高度な演奏テクニックで奏でられる重厚なハードロック/ヘヴィメタルアレンジが施されたメロディアスな楽曲と激しい“お給仕”(=ライブ)のパフォーマンスだ。日本国内での単独公演やフェス出演を経て、2016年以降はワールドツアーを(※新型コロナの感染拡大期間を除き)ほぼ毎年実施。現在までにアメリカ、イギリス、ヨーロッパを周り、各公演のチケットを続々とソールドアウトさせてきた。今や海外でライブ活動を行う日本人アーティストのなかでも“猛者”と呼べるクラスの存在感だ。
(「NO GOD」Official Live Video)
2019年には世界最大級のイベンターであるLive Nationとのツアーパートナーシップを発表し、同年リリースしたアルバム『CONQUEROR』では、デヴィッド・ボウイとのコラボレーションで知られる名匠トニー・ヴィスコンティが一部楽曲をプロデュース。ロックリスナーの間で話題となった。
(トニー・ヴィスコンティのプロデュース楽曲「The Dragon Cries」Official Music Video)
続く2020年にはハリウッド4大エージェンシーのひとつであるUnited Talent Agencyと全米展開のパートナー・アライアンスを発表し、アルバム『Unseen World』をリリース。2021年にはNetflix映画『Kate』でハリウッドデビュー。2022年には北米の人気音楽フェス「AFTERSHOCK」に出演。さらに動員数2万人超えの全米ツアーも全会場をソールドアウトさせてきた。
(『Unseen World』収録「Warning!」Official Music Video)
■昨年には大型海外フェスを次々と制覇
そして結成10周年を迎えた昨年は10周年ツアー「BAND-MAID 10TH ANNIVERSARY TOUR」で世界各地を回った。
なかでも大きなトピックは5月から8月にかけて「Welcome to Rockville」、「Sonic Temple」、「Pointfest Radio Show」、世界最大級のフェス「Lollapalooza」と4つの大型海外フェスへの出演を一気に果たしたことだ。
特に「Lollapalooza」への日本人バンドの出演はX JAPAN以来13年ぶりの快挙となった。結果、同ツアーは3月から11月にかけて北米19公演、国内23公演を実施し、約4万5000人を動員。うち、フェス出演と同時期に回った全米ツアーの総動員数は約2万5000人(※前述の4フェス出演分は含まず)。フェスといい、単独公演といい、海外における集客力はもはや日本人アーティストのなかでも飛び抜けた存在と言っていいだろう。
■高度な演奏テクニックとキャラクターの魅力
筆者は前述の映像作品『10TH ANNIVERSARY TOUR FINAL in YOKOHAMA ARENA(Nov.26,2023)』の公演の際、彼女たちのお給仕を初めて現地で鑑賞したのだが、SAIKIの確かな歌唱力といい、何なら笑顔さえ見せながらとんでもないBPMのリズムや難易度の高いフレーズをこなす各パートといい、そのずば抜けた演奏力の高さに驚かされた。それでいて小鳩のトークは「ご主人様、お嬢様(=ファンの呼称)なら気付いたはず! ニューメイド服ですっぽ!」と、語尾に必ず“ぽ”が付く脱力MCがお約束というギャップもまた楽しい。
小鳩とSAIKIの明け透けなやりとり、KANAMI、AKANEの朗らかなトーク、あえて無口キャラを貫こうとするMISAと、演奏とのギャップも激しい5人のキャラクターも明快かつ豊かで、筆者のような一見(いちげん)にも親しみ易い。
お給仕中、最もメイドらしいメイド姿の小鳩がトレードマークのゼマイティス製ギターをかき鳴らす姿が何ともアイコニックで息を呑んだ。小鳩はこのバンドが始動してから本格的にギターを始めたということだが、そうとは思えないぐらい堂に入った“ロックなかっこよさ”を醸していた。
SAIKIとKANAMIの2人による歌とアコースティックギターのみという編成でのセットや、SAIKIによる初のグランドピアノを使った弾き語りといったチャレンジも観客の関心をしっかりと掴んでいたようだった。
本編の途中では小鳩が内緒で用意していたというメンバー、スタッフへの感謝を綴った手紙を朗読。かと思えば、その小鳩に対してサプライズで用意されていた活動初期の頃のお給仕映像が流され、小鳩が恥ずかしさのあまり絶叫するという微笑ましいひと幕もあった。
こうした一連のくだりから、おそらく今日の彼女たちの演奏力とパフォーマンスが決して最初から備わっていたものではなく、様々な試行錯誤や紆余曲折を経て構築されたチームワークと、全員の並々ならぬ努力から掴み取ったものなのだろうということが伝わってきた。そして、あくまで私感だが、この場に詰めかけた8000人の観客の多くからは、BAND-MAIDを共に支え、育て、見守り、その上で大いに楽しんでいるようなムードが感じられたのも印象的だった。
およそ3時間40分にわたって全33曲を披露したお給仕の最後には、2024年の“新章開幕”を宣言。2024年のお給仕スケジュールとともに「夏の新作フルアルバムリリース」や「海外アーティストとのコラボレーションが続々決定中」といった告知が打たれ、この日の公演は幕を閉じた。
■TVアニメ『グレンダイザーU』エンディングテーマを担当
昨年末には、彼女たちの新曲「Protect You」(※リリース日未定)が今年放送スタート予定のTVアニメ『グレンダイザーU』のエンディングテーマに決定したことも発表されている。
マンガ家・永井豪原作の『グレンダイザーU』は1970年代に人気を博したロボット・アニメ『UFOロボ グレンダイザー』のリブート版である。解禁された情報によると、今作のストーリーは『UFOロボ グレンダイザー』の続編ではなく新たなストーリーとのことだが、主人公のデューク・フリードと主役級のロボットであるグレンダイザーはもちろん、同じく永井原作の『マジンガーZ』からマジンガーZや兜甲児、弓さやかなど、旧作のファンにもお馴染みのキャラクターやメカも登場するらしい。
(TVアニメ「グレンダイザーU」第1弾PV)
『UFOロボ グレンダイザー』は、フランスにて『Goldorak(ゴルドラック)』のタイトルで1970年代に放送され、国民的な支持を獲得した。さらにイラク諸国、アラブ、イタリアでも1970年代から80年代にかけて放送され、絶大な人気を博した。日本発の国際的なアニメコンテンツの先駆け的な作品のリブートという観点からも楽しみな一作である。
所属レーベルのポニーキャニオンよると、彼女たちが昨年8月に配信リリースしたNetflix『アニメ『ケンガンアシュラ』Season 2』エンディング主題歌「Shambles」は、音楽ストリーミングサービスにおける海外再生数で100万再生を突破しているそうだ。
(「Shambles」Official Music Video)
圧倒的な海外公演動員数や楽曲再生回数を誇る彼女たちだが、正直、国内での知名度は海外に比べるとまだそれほど高くない。つまり、日本のファン層はまだ開拓の余地が大いに残されているはず、と筆者は感じている。2024年、国内外において更なる飛躍の年となるか? BAND-MAIDの新章に期待したい。
BAND-MAID『10TH ANNIVERSARY TOUR FINAL in YOKOHAMA ARENA(Nov.26,2023)』
リリース日:3月27日
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