6回降雨コールド、そのあと小豆畑選手が盛り上げました。《阪神ファーム》
8年ぶりに優勝した阪神ファームは10月6日に、イースタン・リーグを制した巨人とファーム日本一を賭けて戦います。他の4チームより先に全日程を終えたため、その『ファーム日本選手権』へ向けて、鳴尾浜では社会人や独立リーグと練習試合がいくつか組まれており、きのう26日は社会人の日本生命と対戦しました。
どんよりした曇り空で、いつ雨が落ちてきてもおかしくない状況だったものの、夕方までは大丈夫だろう、降っても大した雨量ではないだろうという勝手な思い込みで傘も持たずに行って…猛省です。スタンドで傘が差せないとあって、お客様はしっかりカッパをお持ちでしたね。さすがです。
3回までは問題なく進んだのですが、4回途中からポツポツと来て、雨粒がまた大きい!やがてポツポツからボタボタへ変わり、5回には傘が必要なくらい。6回が始まっても弱まるどころか本降りになり、6回裏が終わったところで審判から中断の合図。ほとんど時間を経ずに中止となりました。
《プロアマ交流試合》
阪神-日本生命 (鳴尾浜)
日生 301 000 = 4
阪神 000 000 = 0
(6回裏終了、降雨コールドゲーム)
◆バッテリー
【阪神】福永-島本-モレノ-飯田 / 坂本
【日生】草場(4回)-山根(1回)-清水(1回) / 古川
◆本塁打 日:上西3ラン、皆川ソロ(福永)
◆打撃 (打-安-点/振-球/盗塁/失策)
1]右:江越 (3-0-0 / 2-0 / 0 / 0)
2]一:荒木 (2-2-0 / 0-1 / 0 / 0)
3]左:高山 (2-0-0 / 1-1 / 0 / 0)
4]指:ロサリ (1-0-0 / 0-1 / 0 / 0)
〃指:藤谷 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0)
5]二:板山 (2-1-0 / 0-0 / 0 / 0)
6]中:緒方 (2-1-0 / 0-0 / 0 / 0)
7]三:西田 (2-0-0 / 0-0 / 0 / 0)
8]捕:坂本 (2-2-0 / 0-0 / 0 / 0)
9]遊:熊谷 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 1)
※ロサリ=ロサリオ
◆投手(打-振-球/失点-自責) 最速キロ
福永 3回 52球 (3-3-2 / 4-4) 144
島本 1回 12球 (0-1-1 / 0-0) 145
モレノ 1回 12球 (0-2-0 / 0-0) 152
飯田 1回 24球 (2-3-0 / 0-0) 148
<試合経過>※敬称略
先発の福永は1回、内野安打と四球などで2死一、三塁として、5番の上西に3ランを浴びました。さらに味方エラーで走者を出しますが、ここは空振り三振でチェンジ。2回は先頭に四球を与えただけで後続を断って無失点です。しかし3回に1死から4番・皆川のソロホームラン。そのあとは連続三振を奪って、3回3安打ながら4失点でした。
4回は島本。先頭に死球を与え、犠打で二塁へ進めますが遊ゴロと三振で無失点。5回のモレノは2奪三振の三者凡退です。本降りの雨の中、6回に登板した飯田はまず連続三振で2死、そこから連打されるも最後はまた三振で0点に抑えています。
一方の打線は、毎回走者を出しながらなかなか得点できません。1回は1死から荒木が中前打、しかし盗塁失敗もあり3人で攻撃終了。2回も1死から今度は板山と緒方の連打でチャンスを作ったのですが、西田は遊ゴロ併殺打。3回は先頭の坂本が右前打するも、熊谷の遊ゴロ併殺打などで、3人で片づけられました。
4回は先頭の荒木が右前打して二盗失敗、そのあと高山とロサリオが連続四球を選び、続く板山がライナー性のいい当たりを放ったもののレフト・福富が横っ飛びで好捕。緒方も一直でやはり無得点です。5回は坂本の左前打のみ。そして6回は荒木が四球を選んで三度盗塁を試み、これは行った!というタイミングでしたが惜しくもアウト。高山は三振、途中出場の藤谷は三ゴロ。
ここで審判が選手を引き揚げさせて中断。約2分後の14時21分、6回裏終了をもって降雨コールドゲームとなっています。
相手チームとファンへ、感謝の滑り込み
審判が中止を宣告しに出てくる前、おそらく両チームは先に知らされたのでしょう。阪神ベンチから「あずはた!あずはた!」というコールが沸き起こり、おもむろにバットを持って出てきた小豆畑選手。阪神園芸さんがシートをかけようとするバッターボックスに向かい(仕事の邪魔をしちゃだめですよ)、さらに三塁側の日本生命ベンチをも巻き込んでパフォーマンスが始まりました。
ピッチャーもボールも“エア”ですが、とにかく打ってバットをポーンと投げ捨て猛然と走り出します。一塁を回って二塁へ到達し、そこで外野手が逸らした(もちろんエア)のを見て再スタート。そのままホームに滑り込む…段取りだけど敷いたばかりのシート上にまだ水は溜まっていません。
そこで明らかに減速しながら、まるで寝るように滑り込んだ小豆畑選手。でも日生の皆さんは大笑いで拍手喝采でした。もうコールドゲームは宣告されているのに誰も席を立たず、全員で見守ってくださったのです。小豆畑選手も一塁側にしっかりお辞儀をしていました。ありがとうございます!
なおスタンドのお客様は、さすがに本降りの雨で肌寒くなっていたこともあり、残っておられた方は少なかったとはいえ、カッパを着て最後まで拍手と声援を送ってくださって、本当に感謝ですね。私も傘がないままカメラを構えたのですが、あまりきれいに撮れていなくて残念。最後のいい笑顔でご容赦ください。
「うまくなりたいという気持ちがあるから」
では試合後の矢野監督の話をご紹介しましょう。6回で終了したのは「このまま同じ感じでずっと降るって聞いたし、ケガもあるからなあ。無理せん方がいいかと相談して」の結論だったようです。
福永投手について「状態が落ちてからなかなか上がってきていないし、本人もいいきっかけをつかみたいだろうと。結果的に防御率と勝率(のタイトル)を獲れたりとか」と矢野監督。実は防御率がまだわからないと告げたら「まあでもいいんじゃない?どっちでも。獲れた方がいいけど、ある意味もっともっと高いところを目指してやってほしいから。防御率も3点台後半でしょ?1軍で投げようと思ったら、2軍で最低2点台前半とかじゃないとね」
そうですね。福永投手本人も数字的に満足はしていないとのことでした。「毎回言うけど、“気持ち”はあるから。うまくなりたいという。ただ最近はなかなかよくないのが長くて、あいつもモヤモヤしていると思うけど。いろいろ取り組める時期に入ってきたので、また挑戦していけばいいんじゃないかな」
状態が落ちてきたのは技術的な問題?「技術やろね、やっぱり。体は大丈夫そうやから。そんなに空振りをいっぱい取れるピッチャーじゃないし。スピードガンとバッターの対応の仕方を見ていると、押し込んでいるって感じはないもんね。きょうでも。結局、真っすぐを待たれて真っすぐだったら社会人のバッター、右バッターやったけど、ああいうふうにとらえられる。春先にずっと言うてたのは、真っすぐを待っていても真っすぐを押し込んでファウル取れるとか、それぐらいのレベルになってこないと1軍で投げるところまでいかない。一番はそこかな」
ここまで話が進んだところで、ウエートルームへ向かうため中から出てきた小豆畑選手が横を通過すると、恰好の獲物を見つけたように目が輝く矢野監督。すかさず声をかけます。「アズ、試合やるぞ!」。驚いて足を止めた小豆畑選手は「はい?…試合ですか?」と返事。矢野「着替えたんか、お前」、小「あ、すみません」、矢「前のグラウンドが空いたらしいから。もう一発」、小「はい!」。記者陣大爆笑のやり取りでした。
金本監督へ優勝報告、日本一へ
矢野監督の話に戻りましょう。荒木選手が3度、盗塁に失敗した点は「3つ目なんか、すごくいいスタートやったと思う。左ピッチャーでね。まあ今までやってきたことやし、3つアウトになったという結果を見ればダメだと言う人がいるかもしれないけど、俺はそうは思わない。ああいう姿勢でいいと思う。2つアウトになって3つ目っていきにくいねん。逆に、いったことがすごい。あのタイミングとボールでいけたってことがね」と評価しています。
ついで、6回1イニングを投げ最速148キロを出した飯田投手について。「真っすぐが走っているからか、真っすぐで抑えにいこうという姿勢、気迫がね。状態が上がってきているから。ソフトバンクの時に俺らがちょっと見ていた感じに。こっちへ来てから、ちょっと大人しくなっていたというか、あいつの状態にすると球が走っていなかったので。この前も由宇で1点取られたけど、悪かったとか思っていない。上がってきている」と矢野監督は言います。
最後に、この日の午前中に金本監督と会談を持ったそうで、その内容を聞かれると「報告ね。優勝しました!おめでとう!ありがとう!ってね。終わり」と笑います。ファーム日本選手権に向けての激励も?「それは言われたよ。日本一になるよう頑張ってと。まあ優勝しているからもちろん褒めてくれるというか、社長からも監督からも『よくやってくれたね』ってことやけど。1軍もまだまだ続くしね。俺自身もこれで終わりじゃないから。まあゆっくり話はした」
来年、1軍で投げ抜くために
選手のコメントは、すみません。福永投手のみです。振り返って「甘く入ったのがホームランになったのは反省ですけど、インコースに間違えることなく投げられたのはよかったと思います。インコースを狙っても、間違えて中へ入ることもなかったので」とのこと。
また「クイックと間合いも考えながら、ストライクも取れたのでよかったんじゃないですかね」と言っていました。真っすぐが144キロ止まりだった点も「そんなに力んで投げていないので。制球はかなり戻ってきたので、もうじきですね」と、いつも通り前向きです。
15日に行われた大阪ガスとの交流試合で先発した福永投手は、4イニングを投げて11安打5失点と打ち込まれました。それから1週間後、由宇へ出発する前に話を聞いたら「もう大丈夫だと思います」と解決した様子。どこに問題があって、どう修正した?「トップの位置が遅れていたので、それをちゃんと良好な状態の時に戻すことです。着地と同時に腕が上がってきていなかったので、ヒジが下がっているし、横振りになっていたんだと思います」
その原因については、マウンドの傾斜があまりないところで投げて、そこでずれたのかもしれないという話をしていましたが「言い訳にはしたくないので」とのこと。課題を見つけて、潰して、という毎日を繰り返すことで前進してきた福永投手です。これからも自身を“客観視”しながら成長してくれるでしょう。
なおウエスタン・リーグの防御率争いですが、26日の中日戦が5回表で終わりノーゲームとなったオリックス。つまり総試合数が1つ減るので、最終規定投球回数も2/3回少なくなりました。よってK-鈴木投手は、きょう27日も含めた残り2試合で3回2/3を投げれば規定をクリアして、トップに登場します。24日に8イニングを投げたので、登板するとしても最終の28日ですかね。
これについて福永投手は「仕方ないです。もう大丈夫ですよ!」と割り切っていました。それでも勝率第1位は確定なので『NPB AWARDS 2018』での表彰を楽しみにします。
<掲載写真は筆者撮影>