ウクライナ軍、ドイツ政府提供の対空戦車「ゲパルト」でロシア軍のイラン製神風ドローンを破壊
2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。
ロシア軍は以前はロシア製の攻撃ドローン「KUB-BLA」で攻撃を行っていたが、2022年10月に入ってからロシア軍はミサイルとイラン政府が提供した標的に向かって突っ込んでいき爆発する、いわゆる神風ドローンの「シャハド136(Shahed136)」、「シャハド131(Shahed131)」で首都キーウを攻撃していた。国際人道法(武力紛争法)の軍事目標主義(軍事目標のみを軍事行動の対象としなければならない)を無視して文民たる住民、軍事施設ではない民間の建物に対して攻撃を行っていた。ウクライナの一般市民の犠牲者も出ていた。年末年始もイラン製軍事ドローンで攻撃を繰り返し、2月に入ってからもイラン製軍事ドローンでの攻撃は続いている。
ウクライナ軍ではウクライナ兵や警察官が機関銃やライフル銃などでイラン製軍事ドローンを迎撃したり、地対空ミサイルや重機関銃を搭載したバンやトラックなどで攻撃ドローンが飛来しているところまで走っていき迎撃している。またウクライナ軍はドイツ政府が提供した対空戦車「ゲパルト」でもイラン製軍事ドローンを迎撃している。「ゲパルト」は対空戦車なので攻撃ドローンだけでなくミサイルも迎撃している。
ドイツ国防省は2022年4月にウクライナ軍にドイツのクラウス・マッファイ・ヴェクマン社が製造している対空戦車「ゲパルト」50台を提供することを発表した。国防大臣のクリスティーネ・ランブレヒト氏は「今、まさにウクライナ軍が上空からの防衛に必要としている兵器です」とコメントしていた。ドイツ政府が発表した6月の武器供与リストにもゲパルトが含まれていた。そして2022年7月にドイツから対空戦車「ゲパルト」3台が到着すると、ウクライナのオレクシー・レズニコウ国防大臣もSNSで「ウクライナの上空の防衛が強化されます」とドイツに感謝を伝えていた。ドイツのショルツ首相は2022年11月にウクライナに防空システムを引き続き提供して支援していくことを明らかにしていた。
ドイツ政府が提供した対空戦車「ゲパルト」でイラン製軍事ドローンを迎撃している様子を米国のメディアUS Militaryが報じていた。
▼ドイツ政府が提供した対空戦車「ゲパルト」でロシア軍のイラン製神風ドローンを迎撃(US Military)
「ゲパルト」の数に限りがあるので多くのイラン製軍事ドローンはウクライナ兵が機関銃などで迎撃
上空からの攻撃に対する防衛は非常に重要であり、ミサイルだけでなく攻撃ドローンへの対策も安全保障の観点からも急務である。上空のドローンを機能停止したり、上空で爆破するためのシステムや兵器ももウクライナ軍には提供されている。上空のドローンを迎撃するのは、電波を妨害(ジャミング)してドローンの機能を停止させるいわゆる"ソフトキル(soft kill)"と、対空機関砲のように軍人が持って上空のドローンを爆発させる、いわゆる"ハードキル(hard kill)"がある。対空戦車「ゲパルト」は明らかにハードキルである。
民生品の監視・偵察ドローンは攻撃してこないので、電磁波などのソフトキルや軍人が対空機関砲などで撃墜することも容易だ。だが、大量のドローンがかなりのスピードで突っ込んできて爆発するような攻撃ドローンは人間の軍人が迎撃するのは非常に危険であるので、対空戦車の方が適している。
一方で、ロシア軍のイラン製軍事ドローンは大量に毎日ウクライナのあらゆる場所に攻撃をしかけてくるが、対空戦車ゲパルトの数は限られている。全てのイラン製軍事ドローンの迎撃には対応できない。そのため、危険ではあるが日々の大量のイラン製軍事ドローンの攻撃に対しては、ウクライナ兵がドローンが飛来しているところまで車で走っていったり、ビルの屋上などで構えて機関銃や地対空ミサイルで迎撃してウクライナ国土を防衛している。攻撃ドローンは大量に無人でいっきに攻撃でき破壊力も強いため攻撃側が圧倒的に優位である。
また地対空ミサイルシステムや防空ミサイルだけでなく対空戦車のような大型システムで監視ドローンを攻撃して爆発させるのはコストもかかるし、大げさかと思うかもしれない。しかし監視ドローンこそ検知したらすぐに破壊しておく必要がある。監視ドローンで敵を検知したらすぐに敵陣をめがけてミサイルを大量に撃ち込んでくる。監視ドローンとミサイルはセットで、上空の監視ドローンは敵からの襲撃の兆候である。また部品を回収されて再利用されないためにも徹底的に破壊することができる"ハードキル"の方が効果的である。そして攻撃ドローンだけでなく、安価な監視ドローンも徹底的に破壊しておいた方がトータルでのコストパフォーマンスは高い。
▼ウクライナ軍が自ら開発した重機関銃をバンの後方に搭載した車でイラン製軍事ドローンを迎撃するウクライナ軍を紹介する地元メディア
ほとんどのイラン製軍事ドローンはこのような機関銃や地対空ミサイルで迎撃している。