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武豊参戦!! フランス・ディアヌ賞速報。残念会でナンバー1ジョッキーが言った言葉とは……

平松さとしライター、フォトグラファー、リポーター、解説者
フランス・ディアヌ賞に挑戦したアマレナと武豊騎手

凱旋門賞以上の人気を誇るディアヌ賞に日本のナンバー1ジョッキーが参戦

 現地時間16日、フランス・シャンティイ競馬場でディアヌ賞(G1、3歳牝馬、芝2100メートル)が行われた。

 ディアヌ賞は現地の3歳牝馬クラシックレースの第2弾。1779年にイギリスで始まったオークスを模して1841年に第1回が行われたフランス版オークスだ。

 フランスのレースというと日本では凱旋門賞が知られているが、現地では凱旋門賞以上の人気を誇るのがこのディアヌ賞だ。フランス出身のC・ルメールに言わせると「もちろん凱旋門賞は勝ちたいです。でも、僕はディアヌ賞を3回、勝たせてもらいました。それはとても嬉しい事です」となる。

 実際、今年のディアヌ賞は好天に恵まれた事もあり、沢山の着飾ったファンで競馬場は埋め尽くされた。

ディアヌ賞当日、1レースまでまだ2時間ある時点でこのようなお洒落に着飾ったファンが続々競馬場を陣取る
ディアヌ賞当日、1レースまでまだ2時間ある時点でこのようなお洒落に着飾ったファンが続々競馬場を陣取る

 レース5日前に早々に現地入りし、翌朝の追い切りに騎乗したのが日本のエース武豊。跨ったのはディアヌ賞に挑戦するアマレナ(牝3歳)だった。キャリアは僅か2戦だが、いずれも1着。フランスで開業する日本人調教師の小林智の下に、ドイツから移籍してきた。調教について、武豊は言った。

 「なにぶん、アマレナを見るのも初めてだったので見当がつかなかったけど、乗り易くて、それでいて走らせるとしっかり走って良い馬でした」

 5頭で馬場入りしての追い切りは、最も楽な手応えで間を割って最先着。数々の名馬の背中を知る天才騎手をして、そんなコメントが出るのも頷ける動きを披露した。

街中のカフェにもディアヌ賞のポスターが。凱旋門賞をしのぐ人気というのもよく分かる
街中のカフェにもディアヌ賞のポスターが。凱旋門賞をしのぐ人気というのもよく分かる

結果は残念も、天才騎手の言葉に一同は奮起

 シャンティイのラモーレという地区にある小林厩舎から決戦の地となるシャンティイ競馬場までは、道が空いていれば車で10分ほどの距離。馬運車の上、混雑の見込まれるレース当日、発走時刻の約4時間近く前となる12時15分に馬は厩舎を出発した。

 競馬場に着いたアマレナは落ち着いたモノ。武豊を背にパドックを一周すると、馬場入り。スタンド前のパレードも難無くこなして返し馬からゲートイン。そして、16頭立ての15番枠からスタートを決めた。

本馬場入場時のアマレナ。落ち着いていたが……
本馬場入場時のアマレナ。落ち着いていたが……

 「だいたい思い描いていた通りの競馬は出来ました」

 好位4~5番手で進めたレースぶりをナンバー1ジョッキーはそう振り返った。馬群が密集するのがフランスの競馬。外枠で終始、内へ入れたくても入れられる場面がなかったが、かといって無駄なコース取りはせず、馬場の良いところを走った。3~4コーナーの手応えも悪くないまま徐々に先団に進出。直線入口では先頭に並ぼうか?!というシーンを作ってみせた。しかし……。

 「最後にペースが上がったところでついていけなくなってしまいました」

 直線は馬群に飲み込まれた。結果は15着。最後は無理をしなかったため、この着順自体は能力の差ではないが、残念ながら勝ち負けに加わる事が出来なかったのは事実だった。

直線失速し、最後は無理をしなかったため15着に終わったアマレナと武豊
直線失速し、最後は無理をしなかったため15着に終わったアマレナと武豊

 「キャリアの浅い馬ですからね。仕方ありません。馬場ももう少し渋った方が良かったのかもしれません」

 そう言った武豊は、更に「でも」と言い、続けた。

 「でも、たまにはこういった挑戦があっても良いかと思います」

 有力馬に外国人ジョッキーが名を連ねる昨今の日本の傾向に対し、外国のG1レースにチームジャパンで挑む。確かにこのような挑戦は、我々日本人にとっては嬉しい限りである。

 ディアヌ賞の行われた日の夜、シャンティイのレストランでオーナーや調教師と残念会が開かれた。乾杯の音頭をとった武豊は言った。

 「いつか目標達成出来るように、また頑張りましょう!!」

 その言葉に頷きながら、皆はグラスを高々と掲げた。

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(文中敬称略、写真撮影=平松さとし)

ライター、フォトグラファー、リポーター、解説者

競馬専門紙を経て現在はフリー。国内の競馬場やトレセンは勿論、海外の取材も精力的に行ない、98年に日本馬として初めて海外GⅠを制したシーキングザパールを始め、ほとんどの日本馬の海外GⅠ勝利に立ち会う。 武豊、C・ルメール、藤沢和雄ら多くの関係者とも懇意にしており、テレビでのリポートや解説の他、雑誌や新聞はNumber、共同通信、日本経済新聞、月刊優駿、スポーツニッポン、東京スポーツ、週刊競馬ブック等多くに寄稿。 テレビは「平松さとしの海外挑戦こぼれ話」他、著書も「栄光のジョッキー列伝」「凱旋門賞に挑んだ日本の名馬たち」「世界を制した日本の名馬たち」他多数。

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