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プロゴルファー8名の実験結果からわかる、ヘッドスピードが最大になる体重移動の仕方

野洲明ゴルフ活動家

ヘッドスピードを最大加速させるには、腕や手(グリップ)を速く振ること以上に、グリップスピードの加速と減速のメリハリがポイントになる。ダウンスイングで一気に加速して、タイミングよく減速することで、シャフトの性能やヘッドの重みなど、ゴルフクラブの特性が生かされ、ヘッドが走る。

グリップスピードの加速と減速に影響を与えるものとして、ダウンスイング時の体重移動が挙げられる。ただ、この体重移動の扱い方には注意が必要。

ダウンスイングでは左足への荷重が大きくなっていくが、その時の力は、クラブを振る方向とは反対の‟方向”に働かせる必要がある。

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左足への荷重

トップの位置では右足に多めに体重が乗り、ダウンスイング以降は左足に多めに体重が乗る。

以下の図は、男女計8名のトーナメントプロを被験者とした論文「地面反力から見たゴルフスイングの特徴(野澤むつこ・吉田康行・丸山剛生)」から引用したもの。アドレスからインパクトまでの各局面の左足と右足の地面反力を表したものだ。

ADはアドレス、TDは(右打ちの場合)腰が右回転から左回転に切り替わる変化点だが、トップの位置付近という解釈で問題ない。Impはインパクトだ。

引用:地面反力から見たゴルフスイングの特徴(野澤むつこ・吉田康行・丸山剛生)
引用:地面反力から見たゴルフスイングの特徴(野澤むつこ・吉田康行・丸山剛生)

各局面の真ん中の棒が左足の地面反力の大きさ、右の棒が右足の地面反力の大きさだ。この地面反力は、一般的に言われている‟体重が乗る度合い”と似ている部分があるので‟体重が乗る度合い”と置き換えても問題ないだろう。

アドレス時の左足と右足に体重が乗る度合いは、ほぼ同じだが、トップに向けて左足が小さく右足が大きくなっていく。そして、トップを過ぎると、体重が乗る度合いは左足が大きくなり、右足が小さくなっていく。

トップの位置での左足と右足の体重配分は個人差はあって良いが、ダウンスイングでは左足への体重移動は行われるべきである、といえるだろう。

左足の力の方向

ダウンスイングでは左足に荷重していくわけだが、ただ単に体重を左足に‟乗せこむ”ことは避けたい。体重移動という言葉の‟移動”の扱いには注意が必要だ。

移動というと、右へ、そして左へと、左右のみの力の方向のイメージなる。だが、体重が絡んだ力がはたらく方向のイメージは、左右だけでなく、上下と前後も合わせて持ちたい。

以下も論文「地面反力から見たゴルフスイングの特徴(野澤むつこ・吉田康行・丸山剛生)」から引用したもの。アドレスからインパクトまでの地面反力ベクトルの傾向を表したものだ。

引用:地面反力から見たゴルフスイングの特徴(野澤むつこ・吉田康行・丸山剛生)
引用:地面反力から見たゴルフスイングの特徴(野澤むつこ・吉田康行・丸山剛生)

注目したいのがダウンスイング以降の各局面での、左足の力ベクトルの傾向だ。

以下の図は上の図のダウンスイングの部分を赤の四角で囲ったもの。そして、それから分かる働いている左足の力ベクトルの方向だ。

上側が前額面(身体を正面から見た状態)で、下側が矢状面(身体を側面から見た状態)の図となっている。

地面反力から見たゴルフスイングの特徴(野澤むつこ・吉田康行・丸山剛生)を筆者が加工
地面反力から見たゴルフスイングの特徴(野澤むつこ・吉田康行・丸山剛生)を筆者が加工

前額面での左足の力ベクトルの方向は、ダウンスイング直後約60度だったものが、約80度になり、インパクトでは約100度になっている。

これは、クラブを振る方向(目標と反対方向)と反対の方向に力が働いているということだ。

矢状面での左足の力ベクトルの方向は、ダウンスイング直後80度だったものが、その後からインパクトまで約100度になっている。

これも、クラブを振る方向と反対の方向に力が働いているということになる。

地面反力から見たゴルフスイングの特徴(野澤むつこ・吉田康行・丸山剛生)を筆者が加工
地面反力から見たゴルフスイングの特徴(野澤むつこ・吉田康行・丸山剛生)を筆者が加工

不足しがちな、左足の右後方への力

多くのゴルファーはプロゴルファーに比べて、いろいろな力をクラブを振る方向へ働かせすぎる傾向にある。

そのようなゴルファーは、ダウンスイングではクラブを振る方向と反対方向、つまり、前額面と矢状面を合わせると、(右打ちの場合)右後方に左足の力をより大きく働かせたい。

そうすることでクラブの求心力が大きくなる。そしてそれは、遠心力が大きくなり、効率よいクラブヘッドの加速につながる。

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ゴルフ活動家

スポーツメディアに寄稿、ゴルフ情報サイトも運営する。多くのゴルファーを見てきた経験や科学的根拠をもとに、論理的なハウツー系記事などを中心に執筆。ゴルフリテラシーを高める情報を発信している。ラジオドラマ脚本執筆歴もあり。

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