咀嚼力がない子は保育園の給食をどう食べている?「パンは指の先くらいにちぎる・スープに浸す」
現役の保育士です。
前回の記事では、「市立保育所で当時3歳の男の子がホットドッグを喉に詰まらせた事故における控訴審判決で、市に計約1億800万円の支払いを命じたという報道」について解説しました。
この事故では、この男の子には知的障害があり、食べ物をよく噛まないで飲み込もうとすることがあったとの報道でした。
今回は、噛む力が弱い子に対し、保育園の先生たちはどのように食事介助しているのか紹介します。
噛む力が弱いなら離乳食を提供?
月齢に対し噛む力が弱いのであれば、ずっと柔らかい離乳食を続ければ良いと考える人もいるかもしれませんが、保育園ではそうはしません。
離乳食は個別調理となるため、給食室の調理員からしてみれば、離乳食は少なければ少ないほど楽になります。
本来幼児食に移行することが望ましい月齢にも関わらず離乳食を提供することで負担が増え、給食やおやつの配膳時間を守ることが難しくなります。
逆に、咀嚼が上手だからといって、まだ離乳食が適当な年齢の子に幼児食を提供するようなこともしません。
咀嚼と同時に、年齢や食べられる量、スピード、家庭での食事などを総合的に見て離乳食のステップアップや幼児食への移行をします。
パンはちぎりあんかけをご飯に乗せる
離乳食の提供は1歳半までで、それ以降は全員幼児食に移行するという方針の保育園もあるでしょう。
この場合、1歳半になっても咀嚼力がついていない園児に対して、食事介助する保育士は決められたメニューの中でなんとか安全に食べてもらおうと奮闘するしかありません。
- パンやクラッカーなどは小さく手でちぎる
- 白飯におかずの餡掛けを少しかけてとろみを足す
- パンをスープにつけて柔らかくする
- 「もぐもぐ、かみかみ」と声をかけ続ける
- 口に入っているのに詰め込もうとする子なら、一口ごとに皿を手が届かないところに移動させる
保育園の給食とベビーフードは大違い
なお、良く食べる割に噛む力が弱い子の場合、家庭での食事を聞くとベビーフードであることが多いです。
1歳を過ぎても毎食ベビーフードだけで過ごせるくらい種類が豊富ですよね。
一方、ベビーフードは食べやすくまた子どもがたくさんの量を食べるように過剰にとろみが付いている点が保育園の離乳食とは大きく異なります。
このため、家庭でベビーフードばかり食べている子は、家でベビーフードの肉料理はものすごい勢いで食べ終えるが、保育園の肉料理は噛めずにいつまでも口に残っているという状況になります。
離乳食時期に保育園に入園する場合は、お家でベビーフードではない離乳食に慣れて、とろみに頼らなくても自分の力でつぶせるように練習しておくことをおすすめしますよ。
まとめ
噛む力が弱い子に対し、保育園の先生たちはどのように食事介助しているのか紹介してきました。
子供の食事において、量やバランスには注意が向きますが、咀嚼力を鍛えるという点は意外とおろそかになりがちなのではないでしょうか。
噛む力は生きる力にも直結すると、今回の報道を見て改めて思いました。