長年のミステリーが解明!ムンクの『叫び』についているシミは、鳥のフン?
ノルウェーを代表する画家エドヴァルド・ムンクの代表作『叫び』。ムンク美術館や国立美術館にある複数の『叫び』を鑑賞するために、世界中からの観光客が首都オスロを訪れる。
この作品には、さまざまなエピソードがあり、アート好きの間では雑学として親しまれている。例えば、絵画の中央にいる人物は、自身が叫んでいるようにみえるが、実は、「自然をつらぬくような叫び」におののいて、耳をふさいでいる。
ここ数年、専門家の間で話題となっていた大きなミステリーが、国立美術館で展示されている1893年の油彩『叫び』には、「鳥のフンがついているのか?」ということだった。
人物の左肩の付近に、白いシミのようなものがある。
「これは鳥のフンか?なんだ?」
「鳥のフンだとしたら、放置し続けた場合、作品が痛むのではないか?」
「ろうそくに使われるステアリンか?ろうそくの火を消す時に、飛んだのか?」
「絵の具が飛んだのではないか?」
「世界的に有名なこの作品に、なぜ鳥のフンがつく可能性が?」と思うかもしれない。実は、ムンクは、アトリエでは作品を雨風にさらすような状態で保存していたため、雨で汚れていたり、鳥のフンが付いていたとしても、不思議ではないのである。
うつ病に苦しんた『叫び』の天才画家ムンクはまさに今の現代人?余生を過ごしたアトリエを訪ねて
その謎を解明するために、特殊な機械を使用し、60時間スキャンすることで、鳥のフンかを確かめるということが、ノルウェー国内で報道されたのは今年の5月だった。機械のデモンストレーションに、ベルギーのアントワープ大学から専門家も訪れ、国立美術館とオスロ大学が共同で解明作業にあたった。8月29日、ノルウェー国営放送局がその結果を伝えた。
鳥のフンではなく、ステアリン(ろうそくの汚れ)だった。
ステアリンは作品を傷めないため、今後もそのシミは放置されることとなった。
国営放送局によると、国立美術館とオスロ大学は、今後もムンクや他の画家の作品のスキャンを続け、データを解析することを希望。知られることのなかった画家たちのテクニックなどがわかるのではと、期待している。
こうして、ムンクにおける雑学は、またひとつ増えた。いつか、国立美術館でムンクの『叫び』を見ることがあれば、話のネタにしてみてみると、面白いかもしれない。
Text: Asaki Abumi